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流れ時…3ジャパニーズ・ゴッド・ウォー2

翌日、まだ日が昇りきっていないというのに時神のアヤと歴史神が現れた。


「起きるのじゃ!行くぞよー!」

「む……?」


歴史神は神社の前でだらしなく眠っているミノさんを叩き起こした。


「品のない寝方をしているのね。ジャンプ失敗してつぶれた蛙みたいよ。」

「……どんなたとえだよそれ……。うるせぇな。」


アヤがやれやれと頭を抱えるがミノさんはごろんと寝返りをうっただけだった。


「ミノさん、ミノさん、起きた方がいいですよ……。寝耳にミミズですよー。」

ミノさんよりも早く叩き起こされたらしいイドさんが歴史神の横にひょっこり現れ、耳打ちをする。


「ああ?寝耳にミミズってやだな。それ。おたくもこんな夜明けから起こされたのかよ。別にじいさんに会いに行くなら昼でもいいじゃねぇか。めんどくせーな。」

ミノさんは一瞬睨んだが身体を起こし立ち上がった。


「よし。それでは向かうぞよ!」

歴史神は朝からテンションが高く、ニコニコ顔で走り去って行ってしまった。


「ヒメさんは朝から元気いいですね~。僕は低血圧ですよ~。」

「なんだよ。そのヒメさんつーのは。」


「歴史神のあだ名ですよ~。お姫様みたいでしょ?」

「ふーん。俺、朝飯食ってねーんだけど。」


「あきらめた方がいいですよ。ちなみに僕も食べてませんし。」

苦笑いを浮かべたイドさんにミノさんは「はああ……」と大きなため息をついた。


「あ、言い忘れていたわ。おじいさんは神社じゃなくてお墓にいらっしゃるから。」

「墓?……ああ、もう、わかった。わかった。どこへでも行く。」


ミノさんはアヤに連れられてゆっくりと神社から階段へと向かった。


「そのおじいさんってこの辺にあるお墓にいるんですか?」


階段を降りながらイドさんは歴史神のヒメさん、アヤどちらにしぼることなく疑問をぶつける。


「すぐそこよ。」

「街を抜けて少し山を登るがの。」


二人は迷いなく足を動かす。階段を降りて大きなスーパーがある道を歩き、マンションを抜け、山へと続く坂道を登っていく。


「で、俺らはじーさんに会ってどうすればいいんだよ。」

「守るのじゃ。」

「守る?」


「……つまり、人から生まれた神様を守るって事か?

八百万もいらねぇって言っている神から守るだかなんだか……。


だがよ、俺達、地球ができた理由的なものをお持ちになっている神に勝てる気がしねぇんだが。」


「まあ、そこはなんとかしようぞ。ワシも何か考える故……。」

ヒメさんは山を登りながら気難しい顔でうんうんと頷いた。


「おいおい。ノープランなのかよ。」

ミノさんが頭に手を置いて嘆いている時、アヤが声を上げた。


「ついたわ。ここの墓地にいるわよ。」


もうそろそろ秋の色が出てきているのかお墓は彼岸花や紅葉などで赤くなりはじめている。

お墓は山の中腹にあり、木で囲まれた静かな場所に沢山建てられていた。


「墓地なんて自分、はじめてです。」

「俺もはじめてだ。」


イドさん、ミノさんはものめずらしそうにお墓を眺める。


「ほら、あそこじゃ。」


ヒメさんがはじっこにあるお墓を指差す。

紅葉の木が邪魔してお墓自体よく見えないが何か白いものを見たような気がする。


「なんかいるな。」

「行ってみればわかるわ。」


四人は紅葉の木の近くにあるお墓に近づいて行った。

色々な種類のお墓がある中、敷地が広く、ひときわ大きなお墓があった。


「!」

そのお墓に一人のおじいさんが座っていた。


白い着物を身に纏っていて顔かたちはゆでたまごのようにつるりとしている。

目はゴマのように小さい。

口元にたくわえた白いヒゲが年季を感じさせる。


「お?」

おじいさんは喜びの顔で四人をむかえてくれた。


「おはよう。おじいさん。」

「おはー☆鬼ごっこする?」


外見からは想像できないような言葉がおじいさんから出た。


「今度ね。」

アヤはうまくおじいさんと会話している。その横でミノさんは頭を捻った。


……つーか、あかんぼってしゃべれんのか?

なんでこのじじいはしゃべってんだよ……。


今、しゃべってんのはじじいの魂か?

だけどうまれたばかりなんだろ?


そんな疑問をアヤにぶつけようとした時……


「ん?」

なんだが嫌な予感がした。


「どうしたのじゃ?」

「何かやな予感がするのだが……。」


「そういえば……何かに見られているような感じがありますね。」

「ワシにはよくわからぬが……。」


しばらく不吉な予感が二人の胸をうずまいた。

アヤも何かを感じ取ったのかきょろきょろとあたりを見回している。

ヒメさんに関してはきょとんと三人を見ている。


「な、なんか地面が不安定なんですが……」

「不安定?」

イドさんは地面に何か違和感を覚えたようだ。


「やばいわ……。みつかった。青天の霹靂ね。」

アヤはおじいさんを連れてミノさん達の影に隠れた。


「な!俺は無理だって言ってんだろ!」


ミノさんが叫んだ時、土の中から体格のいい男性の影が現れた。


目も鼻も口もなくただ真黒な影である。

足はない。地面にそのまま繋がっているようだ。


「なななな……すごいのに見つかってしまいました……。」


「あれは国之常立神くにのとこたちのかみじゃ!大地をつくったとされる神!宇宙の本源神じゃ!」


「さすが歴史神だな……。で?どうすんだ?なんだか殺気っぽいのを感じるんだが……。」


「……ノープランじゃ!」


ヒメさんはビシッと胸を張った。


「こんな時にいばってんじゃねーよ!」

「とりあえず聞くけど、あなた達は何ができるの?足止めとかなんかできれば……。」

アヤはまずイドさんを見た。


「え?僕ですか……僕は……あ!水を出せます!」

「なんかいい感じね。で?ミノは?」


アヤは、今度ミノさんに目を向ける。


「ミノって……。ああ、俺はうどんを出せるぜ。あ、そばもごはんも。」

「まじめにやりなさい!」


「まじめだっ!ふざけんな!俺はうどんを出す事が一番得意だ!

それが精一杯だ!」


ミノさんはフフン!と鼻をならして胸を張ったがこの状態では何一つ使えない。

とりあえずミノさんは手からきつねうどんを出してみせた。


「ほら、ちゃんとどんぶりにもデザインしたんだぜ。

ダシは昆布と煮干しだ。すげーだろ。これ編み出すのに何年かかったか。」


「もう職人じゃない。それだけ暇だったのね……。」

自慢げに話すミノさんにアヤがふうとため息をついた。


「あ!じゃあ僕は……。」

イドさんは手からコップ一杯の水を出現させるときつねうどんの横に置いた。


「おお!きつねうどん定食のできあがりだな!よし、ご飯もつけよう。」

「何やってんのよ。こんな時に!」


ミノさん、イドさんは国之常立神をよそに色んな定食をつくっている。

「そうじゃ!そんな事をやっとる場合か!」


ビシッと言ったヒメさんにおじいさんはうんうんと頷く。


「……確かにこんな事やってる暇ねぇよな。」

ミノさんは一応つっこむと一歩足をそうっと出した。


「何する気?」

「イドさんの水の力にかける事にしようぜ。俺らは逃げる!」


「何言っているんですか!水の力って言っても僕はコップ一杯のお水しか出せません!」

「……。」


一同は黙り込んだ。

これは本当にピンチだと悟ったらしい。


「え……水でバシャーっと派手にやってくれるんじゃねーのかよ!」

「無理ですよぉ。無茶言わないでください!」


国之常立神は動き出した。

地面自体が大きく動いているような、波打っているような……そんな感覚になった。


まともに立ち向かったら勝ち目はない。


そうこうしている間に今度は地面からにょきにょきと腕のようなものが出てきた。

すべて土でできているがとても固そうだ。


人を守ろうとしているのかお墓には一切手をつけていない。

お墓以外の通路、地面から触手のようなものが伸びている。

ミノさん達は恐怖心からか動く事ができていない。


……どいつもこいつも……私がやるわ……。


アヤは手を前にかざした。

手からは鎖が飛び出し、まっすぐ国之常立神に向かって飛んで行った。


「おたく、何してんだ?」

「逃げるわ。」


国之常立神に鎖が巻きついていく。

だんだんと身動きができなくなっていき、最後には完全に止まった。


「おお。時間停止というやつですね!」

「そう。そこの神様の時間を止めさせてもらったわ。でもすぐきれるからさっさと逃げましょう。」


「やるねぇ。アヤちゃん。」

「調子に乗らないで。」


にやにやとこちらを見ているミノさんをアヤはてきとうにあしらった。


……それにしても変ね。私の術が簡単に効くなんて……あれほどの神が……


「ああ、怖かったのじゃ……もう会いとうないのぉ……。」

一同は止まっている国之常立神から脱兎の如く走り去った。


とりあえず止まっている土の手の間をひたすら駆ける。


おじいさんをミノさんが担ぎ、イドさんは手から出したお水を飲みながらひたすら山を下る。ヒメさんは一杯のうどんを持ちながら走っている。


「そうだ!このまま街の中へ行こうぜ!」

「それいいですね。」

「ウィンドウショッピングできるわね。」

「ワシ、携帯電話とやらを買いたいのじゃが……。」

「鬼ごっこ!」


ミノさんの提案に一同はそれぞれ思い思いの事をつぶやいた。


「おたくら、この状況でよくそんなのんきになっていられるよな!いいか!国之常立神は人には絶対に危害を加えない。と、いう事はだ。人がいっぱいいるところは安全という事だ。故の町の中だ!」


「ああ、そういう事ね。納得。」

「鬼ごっこ……。」


「僕は携帯電話に賛成ですね。はぐれちゃった時便利じゃないですか。」

「鬼ごっこー!」


「じゃろ?皆でおそろいを買うのじゃ!楽しいの。」

「鬼ごっこ!」


「本当に電話できるんですかね?メールも!楽しくなってきました!」

「鬼ごっこ?」


「ああ!うるせぇな!なんでこんな遠足みてぇになってんだよ!じーさんも鬼ごっこ自重しろ!」


こんなのんきな会話をしているがミノさん一同は全速力で山を駆け下りている。

ちなみに歴史神のヒメさんはなぜか空を飛んでいる。



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