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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
四部「明かし時…」スサノオ尊の歴史
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明かし時…5プラント・ガーデン・メモリー12

 巻物が花姫にぶつかった刹那、辺りは真っ白に染まった。

 ナオの頭に様々な意味のわからない断片的な記憶が横切る。


 さきほどナオ達が歩いた何かの埋め立て地はきれいな湖だった。湖だった時は村人にも笑顔が溢れていた。その内、この近辺の城主の部下らしき男達が村に入るようになり、湖は埋め立てられた。埋め立てに無理やり参加させられた村人達は涙を流しながら働いていた。この村人達の信仰は花姫だった。湖に神が宿り、その恩恵が村を、森を潤しているという考えだったのだ。


 「……ひどい……。」

 ナオはひとりつぶやいた。村人達に偉そうに指示を出している男達もさらに上の者達に妻子を人質に取られ、泣く泣く村人に埋め立てをやらせていた。


 湖がなくなったせいで村は潤わなくなった。おまけにたまたま重なった日照りで村はますます枯れ、村だけでなく森も枯れた。

 そこまで記憶を見た時、ナオの頭にテレビの砂嵐のようにぼやけている映像が映った。


 「……これは……。」

 ナオは意識を集中し、少しでも砂嵐を取ろうとした。

 しかし、砂嵐はそれ以上は取れず、映像はさらに悪くなる。色がなくなり白黒の映像になった。


 「あやしい……もう少し……見させてください……花姫さん。」

 ナオが誰にともなくつぶやき、映像を見ようと努力する。


 一瞬、天記神が映った。そして花姫も映った。


 「天記神さん……。」

 ……場所は……。

 ぼやけた映像の中で場所のヒントを得ようとナオは目を凝らす。

 まわりには何もない。木々のようなものが遠くに映っているように見えた。


 ……木々が遠くて木だと思われるモノが上にあるように見える……ここは山の麓?

 ……埋め立てられた湖の……真ん中……。

 そこまで確認した時、ふとキツネが映った。キツネは先程のキツネに似ていたがこちらのキツネは年を取っているように見えた。


 ……別のキツネ?

 ナオが考えていると一瞬だけ男の声……天記神の声が聞こえた。


 ―これは禁忌よ。わかっている?―

 ……禁忌……。

 そこでブツンとテレビの電源が落ちるように映像が途切れた。

 ナオは唐突に元の場所に戻された。


 「ナオさん……大丈夫か?」

 ムスビに揺すられてナオはハッと目を覚ました。先程の巻物はムスビのまわりを回り、歴史を結ぶように消えていった。


 「で~?何か見えたのかしら~。」

 「……はい。状態はわかりました。湖は埋め立てられた後の時期です。場所は埋め立て地。元ミノさんではないキツネがおりました。歳をとっているようでした。そして……天記神さんと花姫さんらしき神がおりました。」

 草姫にナオは細かく説明した。


 「天記神か……。先程、僕が問いただした事は嘘ではなさそうだな。だが……確かめなければ。」

 イソタケル神は腕を組んで真面目に頷いた。


 「……俺にも不思議な記憶が見えたぞ。ナオとだいたい同じだが、年老いたキツネに何か術を行っていたのが見えた。」

 栄次が珍しく口を挟んだ。


 「術ですか?」

 「術?さすが過去神だね。ナオさん以上の事が見えたのか。」

 ナオとムスビは興味ありげに栄次に目を向けた。


 「あ……いや、俺が見たのは何か術を行ってたという一部の記憶だけだ。術といってもはっきり見えたわけではない。だから期待するな。」

 栄次は自信なさそうにつぶやいた。


 「では、お兄様、どういたしますか?」

 事の成り行きを黙ってみていたヒエンも口を開き、イソタケル神を仰いだ。


 「うん。とりあえず目星をつけて歴史神達の言う通りについて行き、そして花姫の姉である草姫に歴史に割り込んでもらおうか。頼む。」

 イソタケル神は懇願するようにナオ達に小さく頭を下げた。


 「そんなっ……頭を上げてください!あなたは頭を下げる神ではありません。」

 ナオが慌てて頭を上げるように言った。


 「だが、僕だけでは何もできなかったんだ。君達が頼りだ。もし解決でき、冷林の潔白が証明されたら僕は冷林の封印を解く。そしてお礼に君達の願い事をできる範囲で叶えよう。」

 イソタケル神の言葉にナオはぴくんと眉を動かした。


 「……では、解決できましたら記憶を覗かせてください。スサノオ尊の。」

 ナオはチャンスだと思い、素早く本来の目的を言った。


 「……父上のか?父上はしかし……」

 イソタケル神が何か言おうとしたがナオは手で制した。


 「問題ありません。概念になったのだとしても私もちゃんと証明したいだけですから。」

 ナオの言葉にイソタケル神は不思議そうに首を傾げていた。

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