明かし時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー14
ごうごうと燃えている村を顔を歪め眺めながらスサノオは主犯を探した。
「……あいつか。あの神はもうダメだ。助けらない所まで落ちちまっている。……消すか。」
スサノオは狂気的に笑っている橙の髪の男、龍水天海を見つけ何も言わずに斬りかかった。
「ぎゃはっ……ぎゃは?」
スサノオの鋭い一閃に反応ができなかった龍水天海は袈裟にばっさりと斬られた。
「……?なんだこれ!うっ!ぎゃあああ!」
龍水天海は突然襲い掛かった激痛にうめき声と悲鳴を上げていた。
「……もう救いようがねぇな。この剣は落ちた神を斬るのに適しているんだ。俺が罰を下す。このまま苦しんで消えろ。邪龍に落ち、民達を苦しめ、子を身ごもっている妻をも手にかけるとは……。お前を救ってなんてやれないぜ。もう少し苦しんだらまた斬ってやる。どうせまだまだ死ねないだろ。龍神は神力が高いからな。」
スサノオは薄ら笑いを浮かべ、再び龍水天海を斬った。
龍水天海の絶叫が徐々に小さくなっていく。瞳には光がなくなり、それでも襲ってくる激痛に歯を食いしばっていた。
「さあて。あと一、二回かな。」
「待って……下さい……。」
「!」
スサノオが龍水天海をもう一度斬ろうとした時、龍史白姫がスサノオの前に入ってきた。
「お、おい……お前……ここまで歩いてきたのか?そのケガで……。」
「スサノオ様……夫は……龍水天海はすごく、すごく慈悲深い龍神でございました……。お願いでございます……どうか……助けてください。」
血にまみれた龍史白姫は口から血を吐くとそのまま倒れた。スサノオは地に着く前に龍史白姫を抱いてやった。そしてそのままそっと横に寝かせた。
「どうもこうもできねぇんだよ。もうこいつは落ちちまってるんだからな。」
スサノオはためらいもなく苦しんでいる龍水天海の喉元目がけて剣を構えた。
「お待ちください。」
「今度は何だよ……。」
スサノオの後ろから男の声がした。スサノオはうんざりした顔で後ろを振り返った。
緑のきれいな長髪をなびかせた天津彦根神、現竜宮のオーナーがスサノオの後ろに立っていた。オーナー天津は戸惑った顔をしていた。
「ああ、アマテラスのガキか。龍神はほぼお前の管轄だったはずだ。一体何をしている。」
スサノオは剣をいったん消すと天津に強力な神力をぶつけた。
「……私の不手際で申し訳ございません。この龍神の処罰等、残りの事は私が行います。」
「……わかった。じゃあ、お前に頼むよ。」
スサノオは素直に引き下がった。ゆっくりと天津の方に歩き、天津とすれ違う。すれ違った瞬間にスサノオは冷たい声で天津にささやいた。
「……この辺の信仰は俺がもらう。収集がつかなくなるからな。これから龍神は悪く描かれるだろうよ。残念だ……。とんでもねぇ邪龍を生んじまったな。天津。」
「……。」
去って行くスサノオに天津は深くお辞儀をした。
スサノオが完全に去ってから天津はこと切れてしまった龍史白姫の最後の言葉を思い出していた。
「……助けてください……か。」
天津は光の粒となって消えていく龍史白姫を見つめながら一つの決意をした。
「……私が願いを叶えてあげなければ彼女も救われないだろう……。うまくいくかはわからないが竜宮に龍水天海を封じよう。そうすれば運が良ければ龍水天海の神力が零れ落ちて新しい龍水天海が生まれるだろう……。竜宮は私が管理していけばいい。」
天津は独り言をもらすともがいている龍水天海に手をかざした。
「てっ……てめっ……何するっ……」
龍水天海が呻きながら天津を睨んだが天津は冷酷な顔をしたまま何も言わなかった。
天津は手から結界を出現させて何か言葉を発した。刹那、眩い光が龍水天海を包み、勢いよく海の中へと引きずり込まれていった。
連れ去る途中に一筋の光が地面に零れ落ちた。
その光は徐々に人に似た形に変わり、銀髪の青年を生んだ。銀髪の青年はイドさんにそっくりだった。髪は腰辺りまで伸びていて衣服を身に着けていない状態だった。
「……?」
イドさんだと思われる青年は何が起きたかわからず辺りを見回していた。
「……龍水天神か。……海が消えてしまったようだ。もう海神ではないな。神力は自分で高める事だ。」
天津はその青年を見つめ、確認すると足早に去って行った。
イドさんだと思われる青年はきょとんとした顔をしていた。
「……これが真実ですか……。私達はその配線を見なければ……。」
ナオが慌てているとナオ達のすぐ後ろから声が聞こえた。
ナオと栄次はぎょっとしてすぐに振り返った。
「……っ!」
すぐ近くの森の中で紫色の長髪を持つ水干袴の青年が何かを話していた。
「月読神っ!」
月読も一度歴史で見たことがあったのでナオは顔を知っていた。
月読は小さな光を両手で包み込んでいた。
「……あの女龍神からこぼれたこの光……あの女龍神の子供かな?この光がちゃんと育ってからあの銀髪の龍神に返せばいいか。……それまであの龍神は自分の存在をよく知った方がいい……かも。」
月読は小さな光を大事そうに抱えると涼しげにその場を去って行った。




