表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
415/560

明かし時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー12

 一方ムスビは結界の強化が切れはじめ、焦っていた。


 「やばい……。かっこよく言ったけどほんとは十分ももたない結界なんだよなあ……。」

 橙の龍神は何度も結界に突進してきていた。そのたびに結界のどこかにほころびが生じる。ムスビの疲弊とあいまって結界は橙の龍神がぶつかるたびに弱くなっていた。


 「んん……。」

 その時、横で飛龍が目覚めた。


 「飛龍!あんた大丈夫なのか?ケガしてるからじっとしてなよ……。」

 「ああ、大丈夫だ。ちょっとでかいのを食らっただけだぜ。」

 意識を集中させているムスビに飛龍は座り込んで答えた。


 「それよりさ、お前辛そうだな。その結界。あたしは結界を張るのが苦手だし、やっぱりもう少しあいつを抑えててやるよ!」

 飛龍はケガを負っているが元気よく立ち上がった。


 「ばっ!やめなよ!ケガしてるし相手は男なんだから……。」

 ムスビは手を前にかざしつつ飛龍に叫んだ。


 「ああ、やっぱ神力が高けぇ男の龍神は強い……。だがなあ……あいつから龍雷水天りゅういかずちすいてんの神力を感じた。不思議なんでもう少し関われば何かわかるかもしれねぇ。」

 飛龍は再びぶつかってきた橙の龍神を睨みつけた。


 「龍雷……イドさんか。いままでの歴史を見るとあいつとイドさんは密接らしい。本神は否定しているけど俺達は同一神物だと思っている。」

 ムスビはほころんだ結界部分を修理しながらつぶやいた。


 ムスビの発言を聞き、飛龍は軽く笑った。


 「同一神物……だとしたらあの銀髪龍神の元はものすげぇ神力の龍神って事になる。だから竜宮にはあんなでっけぇ封印があったんだな。なるほど。オーナーはあの封印を隠すために竜宮をテーマパークに変えてカモフラージュしてたのかよ。」

 飛龍は深いため息をついた。


 「……だけどさ、スサノオがあの狂気の龍神を倒したらしいんだけど……あの龍神、なんで生きているんだ?殺してはいなかったのかな……。」


 「……ぼさっとすんなよ。結界がほころんでるぜ。」

 ムスビの意識が別の所へ行った刹那、橙の龍神の突撃で結界が音を立てて割れた。


 「や、やべぇ!」

 飛龍の声に慌ててムスビが立て直そうとするが結界は無残にも壊れ、もう修復がきかなかった。


 「仕方ねぇなあ!」

 飛龍はムスビの前に立つと橙の龍神の蹴りをそのまま受けた。


 「飛龍!」

 ムスビが飛龍を助けようと動いたが橙の龍神の重い蹴りの爆風で階段横の壁まで吹っ飛ばされた。ムスビが壁に激突した上から飛龍が覆いかぶさるように飛ばされてきた。


 「うう……痛ってぇ……。がふっ……。」

 飛龍は血を吐いて腹を押さえてうずくまった。


 「お、おい……無茶するなよ!大丈夫か!」

 ムスビはもたれかかる飛龍をそっと抱き、背中を撫でた。


 「……は、はは……。あんたがこれ食らってたら死んでたな。」

 飛龍は顔を歪めながら笑っていた。


 「……死んでいたかもしれないことは認めるけど、あんな無茶は見ていて不快だ!腹は女の急所だろ!あんたはもっと自分を大事にしろよ!」

 ムスビは飛龍を睨みつけながら怒鳴った。


 「そんなくだらねぇ事を言っている場合じゃねぇんだよ。あいつが来るぜ。あんたは避けられるのかよ。」

 飛龍は再び攻撃を仕掛けにきた橙の龍神の重い拳を右手で受け止め、炎を出現させて橙の龍神を遠くへと飛ばした。爆風で床がえぐれていた。


 「……っ。あんたに守られている俺が悔しいよ。それから……あいつは酷い男だ。」

 ムスビが奥歯を噛みしめた時、また橙の龍神が水の槍を片手に風を纏わせて飛んできた。

 飛龍がムスビを守る体勢に入ったがムスビは飛龍を思い切り引っ張った。


 「……っ!?お前!何してっ……。」


 「女の子には優しくしてやれよ!このクソ龍神!」

 ムスビはそう叫んだがムスビ自体、身体能力が高いわけではない。飛龍を庇い目を瞑る事しかできなかった。


 「ぎゃははは!二匹揃って死ね!」

 橙の龍神は狂気的に笑うと水の槍を振りかぶった。


 「貴方が龍水天海神りゅうすいてんうみのかみかな?生まれ変わった貴方から聞いた。」

 ふと落ち着いた男の声が響いた。いつまでたっても攻撃が来なかったのでムスビが恐る恐る目を開けた。目の前には天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を構えた蛭子が厳しい顔つきで立っていた。


 橙の龍神は蛭子の持っている天叢雲剣に怯え、かなり遠くへ飛び距離をつくった。


 「拙者は龍水天海神りゅうすいてんうみのかみだがなぁ、おめぇ……その剣。」


 「ああ、そうか。やはり貴方はこれで斬られたのか。スサノオに。ヤマタノオロチから出てきたこの剣は邪龍にどれほど効くのかな。」


 蛭子は橙の龍神、龍水天海を睨みつけながら軽く挑発した。


 「……。」

 龍水天海は何も言わなかった。


 「蛭子さん、あんたイドさんに勝ったのか……?」

 ムスビの困惑した顔に蛭子は軽くほほ笑んだ。


 「龍雷水天りゅういかづちすいてんは強大な力のほとんどを失った龍神のようだった。倒すのは容易だったが口が堅くてほとんど話さなかった。だが天叢雲剣をあの男にかざした時、怯えたようにすべてを話し始めた。何か死にたくない事情でもあったのかな。」


 蛭子の言葉にムスビは咄嗟にヒメちゃんの事を思い出した。やっと親子を隠さず済むようになったのに守護者の方が死んではヒメちゃんを悲しませると思ったのだろう。


 「そ、それでイドさんは今どこに?」

 「……私を竜宮へ入れてからどこかへ消えた。おそらく竜宮内にいると思われるがまだ見つけていない。」


 「そ、そうか。」

 ムスビは蛭子の持つ天叢雲剣を眺めた。神力の強さは感じるが怯えるほどではなかった。


 「あんた、蛭子神だな?ちょうど良かった。あたしじゃあ、あいつに勝てねぇからさ、あんたとあいつのバトル、見させてよ。」

 飛龍が話に割り込み、蛭子に無邪気な笑みを向けた。


 「どうなるかわからないが私がここで龍水天海を抑えなければならなそうだな……。」

 蛭子は飛龍の傷の具合とムスビの様子を見て深いため息をついた。


 「天叢雲剣ィ?はははは!壊してやる!壊してやる!」

 龍水天海は怯えつつ狂気的に笑うと床のタイルを巻き上げながら蛭子に向かって飛んできた。


 「貴方達はそこにいろ……。動くんじゃないぞ。」

 蛭子は飛龍とムスビに念を押すように言うと天叢雲剣を構え、龍水天海に向かって走り出した。


 きれいな直刃となった剣は眩い光を発し風を纏わせた。蛭子が剣を振るうと龍水天海は避けてかわし決して水の槍で受けようとはしなかった。


 「壊すと言っておいて触れもしないか。それは懸命だ。この剣は落ちた神には辛いものだ。ちなみに龍雷水天は斬る事ができなかった。あの男はまだ落ちていない。だが貴方はどうかな。」

 「っち。」

 蛭子と龍水天海の攻撃の応酬が激しく風やら水やらが床をえぐり、壁を壊し爆風が渦巻く。


 「……すげぇ……。」

 壁にもたれかかるように立っているムスビは二神の戦いに目を見開いた。


 「……すごくもねぇさ。蛭子サン……あの神は元々戦いができる神じゃない。今見た感じだとスピードも力もオレンジ君が上だぜ。何分持つかわからねぇよ。」

 飛龍は腹を手で押さえながら肩で息をしていた。


 「……何分か……そうしたら俺がまた結界を張るよ。後はナオさん達が頼りだ。……飛龍、お腹やっぱ痛いの?座ってなよ。」


 「座ってたらいざという時に反応できねぇだろうが。まあ、しばらくは持つさ。」

 飛龍は心配そうにしているムスビに投げやりに答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ