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明かし時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー6

 ナオと栄次とムスビは観光道をひたすら走り、森を抜けて竜宮のビーチにたどり着いた。竜宮はこの海の中にある。禍々しい力が海から流れ出ており、現在立ち入り禁止の看板が砂浜に刺さっていた。観光客は誰もいない。


 静かすぎるビーチがなんだか不気味に思えた。


 「なんだか成り行きで天津彦根神を助ける事になっちゃったけど……。」

 ムスビは不気味なビーチを眺めながらつぶやいた。


 「……それは仕方ありません……竜宮は歴史を排出している建物です。私達ならばすぐに歴史が見えます。そ、それから……ここはすぐに離れたくなるようなビーチですね……。波は立っていませんが怖いです。」

 ナオは顔をしかめながらコバルトブルーの海を見つめた。


 「それで、どうやって入るのだ?竜宮は海の底なのだろう?息が続かんぞ。」

 栄次の言葉にナオは大きく頷いた。


 「ええ。竜宮とこの海に来客拒否の非常に強い結界が張られているようです。私ではこの結界のプログラムを解くことはできませんが竜宮の歴史を開いて中に入る事はできそうです。」

 ナオは自信なさそうに答えた。


 「どうやるんだよ?俺は知らないぜ。」

 ムスビは腕を組み、首を傾げた。


 「単純な事ですが……竜宮は過去を排出している建物です。つまり、竜宮の過去の姿という実態が今の竜宮と重なるようにあります。過去神である栄次と歴史を結ぶムスビと歴史を開く私がいれば過去である(さん)の世界を開くことができるでしょう。参の世界(過去)から竜宮に侵入しても竜宮自体は過去も現代も同じですから現代の竜宮に入り込んだことになります。天津(オーナー)がいない今、強い力がないので入る事ができるはずです。」


 「危険はないのか?」

 ナオの説明を聞きつつ栄次は不安げな顔を向けた。


 「過去と歴史でできている建物ですので多少いじっても問題はないと思われます。」

 「そうか。」

 栄次は一言言うとそこから先は何も質問してこなかった。


 「俺はどうしたらいいわけ?」

 今度はムスビが尋ねてきた。


 「ムスビはそのまま立っているだけで構いません。後は私がやりますから。」

 「ナオさん、一つ前々から気になっていたんだけど……どうしてやり方とかすぐに思いつくの?というか、なんでそんなにいろんなことを知っているんだ?」

 ナオが術式に入ろうとした時、ムスビがもう一つ尋ねてきた。


 「……わかりません。どうしてここまで色々な事を瞬時に思いつくのか……よくわかりませんが昔から知っている気がするのです。私自身も私がよくわかっていません。歴史の改ざんを見つけてから自分がどんどんわからなくなっていきます。それもこのままでいいような……いけないようなそんなモヤモヤがあるのですよ。まあ、今は竜宮の事に集中しましょう。」


 ナオはこちらを不思議そうに見つめるムスビに笑いかけると術に取り掛かった。

 最初にナオは竜宮の歴史の検索を始めた。竜宮の歴史が書かれている巻物を手から出現させるとその巻物から飛び出してきた電子数字を読み上げた。


 ……510510010551005……3214545321。


 ナオが読んだ数字はまるで生き物のように動き出し、ムスビと栄次のまわりを回り始めた。


 「う、うわあ!電子数字に囲まれた!」

 「そのまま何もしゃべらずにいてください。」

 咄嗟に叫んだムスビをナオがたしなめた。


 ムスビは慌てて口をつぐんだ。

 電子数字はムスビを回ると栄次に吸い込まれていった。


 やがて栄次から白い光が漏れ、その白い光は栄次から飛び出てアンドロイド画面に変わった。


 「……ふう……成功です。やはり天津がいないようなので管理体制がだいぶんゆるいです。後はここに天津が設定しているパスワードを入れればいけます!」

 「今の数字は竜宮に張り巡らされた結界を解いたの?」

 ムスビが喜んでいるナオに恐る恐る尋ねた。


 「違います。神も神力宿る建物も高天原もすべて電子数字でできています。私は竜宮本来の電子数字を外へ出し、内部から竜宮を開きました。結界を解いたわけではありません。この海の結界、竜宮の門の結界を無視して私達は次のパスワードで直接竜宮内へワープします。」


 「へ、へえ……かなり強引に入り込むって事だね?そのパスワードはわかるの?」

 ムスビがアンドロイド画面を見ながらナオに尋ねた。


 「……ええ。天津の歴史と竜宮の歴史の重なりでパスワードを読み取りました。」

 難しい顔をしている栄次とムスビにナオは表情を明るくして答え、アンドロイド画面にパスワードを入れ始めた。


 最初の四つは数字だった。ナオは慎重に長い数字をアンドロイド画面に入れる。この数字を失敗するとおそらくもう一度検索をし直さないとパスワードにはたどり着けないだろう。ものすごい量のパターンでパスワードが毎回変わるらしい。


 ナオはなんとか四つ目のパスワードを入れた。


 「ふう……かなり神経の使う作業ですね……。後一つはかな文字ですね……。えーと……。」


 ―このたびは……幣もとりあへず手向山……紅葉の錦……神のまにまに。―


 ナオは素早く百人一首の内の一つを打ち込んだ。


 「なんで最後だけ百人一首なんだよ……。」

 ムスビが静かに突っ込みを入れた刹那、アンドロイド画面が光り始めた。


 画面に『パスワードが入力されました』と書いてあった。アンドロイド画面の光が強くなりナオ達は電子数字として画面に引きずり込まれた。

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