明かし時…3ジャパニーズ・ゴッド・ウォー6
ムスビがぼやいている内に金色の天守閣にナオ達は運ばれていた。天守閣前で自動の道路は途切れ、少し歩くと天守閣内に入れる。
ナオ達は顔を引き締めつつ歩き、真夏の太陽に照らされている金色の天守閣を見上げた。
「近くで見ると威圧が違いますね……。」
「この城に威圧なんてない。それは俺の神力だ。」
ナオが小さくつぶやいた時、風に流れて男の声が聞こえた。
「!」
ナオ達は突然聞こえてきた声にビクっと肩を震わせた。
ナオ達が構えていると辺り一面に風が舞い、目の前に男の神が現れた。顔は鬼の面で隠しており、羽織袴の橙の髪の青年だった。
「今は高天原北の冷林の消息不明の件で忙しいんだがお前らの件もかなり重要案件だ。ここでサクッと捕まえさせてもらうぜ。」
青年は低い声で話しながら威圧をかけてきた。栄次が素早く刀を抜き、ナオとムスビの前に立つ。しかし、動くことができない。強力な神力がナオ達を襲う。
「……なんて強い神力……。あ、あなたは……天御柱神ですね?厄災の神であり、イザナミ、イザナギ神の子……。」
「ん?ああ。そうだ。俺は天御柱神。残念ながらお前達はここで捕まえさせてもらうぞ。」
「そうはいきません!」
ナオが天御柱神に言い放った刹那、栄次が天御柱神に斬りかかった。
「無駄だ。」
栄次が凪いだ場所にはもう天御柱神はいなかった。そしてまた、同じ場所に突然現れた。
「……なんだ?斬れん……。」
栄次は刀を構えなおすと戸惑いの色を見せた。
「……俺は魔風だ。つまり風。斬れるわけねぇだろ。」
天御柱神は冷静に低い声で三神に威圧をぶつけ続けていた。天御柱神の表情は鬼のお面でよくわからない。
「ではこれはどうでしょう?」
ナオは手からアマテラス大神の巻物を取り出し、素早く天御柱神に投げつけた。
「……っ!?なんだ!これは!」
巻物は天御柱神にぶつかるとまばゆい光を放ち始めた。するとすぐに天御柱神が苦しみはじめ、頭を抱えてその場にうずくまった。
「アマテラス大神の力はあなたには真逆なはずですから辛いでしょう。先に行かせてもらいます。申し訳ありません。」
「……これは……太陽神のサキとかいう女の力か?ああ……まいったな。俺と……あの女は絶対に相入れない存在だ。壱の世界(反転の世)では知らねぇが……。うぐ……。」
天御柱神が動けない内にナオ達は金色の天守閣内に入り込んだ。
「ま、待てっ……くそ!今、ワイズは……。」
天御柱神は必死で呼び止めていたが、ナオ達はさっさと先へと進んでいった。
中はホテルのロビーのような感じだったが階段を上るにつれて和風の部屋が目立つようになった。こちらは剣王の居城とは違い、廊下を神々が歩いている。しかし、どの神もナオ達に手を出してこなかった。
「……なんだか導かれているみたいだね……。」
ムスビがナオにこそっとささやいた。
「ええ。ワイズはすべてを見透かしているのでしょう。正直あまり良い予感はしません。」
ナオ達は黙々と階段を上る。最上階に来ると部屋は三部屋あった。
一番奥の部屋の障子戸のみ金の装飾がしてある。
「あの一番奥ですね。」
「YO!やっと来たNE。」
ナオ達が奥の部屋へ向かおうとした時、障子戸ががらりと開き、不思議な格好の幼女が現れた。カラフルな帽子をかぶっており、その帽子から赤い髪が触手のように伸びている。
やけに三角形なサングラスに羽織袴だ。奇抜な格好の幼女は不気味に笑いながらナオ達を見ていた。
「……あなたはワイズですね。思兼神……。」
「そうだYO。天御柱はやられちゃったみたいだNE?と、いうことは太陽からアマテラス大神の巻物を盗んだと。……それで?私の記憶も覗きにきたってわけかYO?」
ワイズの質問にナオは大きく頷いた。
「あなたが天御柱神に私達を捕まえるよう指示したのは私の手にアマテラス大神のデータがあるかどうかを調べたかったのでしょう?これはしばらく渡せませんよ。使いますから。」
ワイズはナオの発言で笑い出した。
「まったくほんと、おもしろいYO。」
「何がですか?」
「なんでもないYO。」
ナオがワイズを睨みつけたがワイズはすぐに口を閉ざした。
「あなた、何かを隠していますね?」
「隠してないNE。……あー、お前らの事もどうにかしないとと思っていたけどYO、それよりも繊細で重要な案件があってNE……。」
ワイズはきれいにはぐらかした。
「……重要な案件って龍雷水天神、イドさんの事じゃなくて?」
ムスビがワイズと距離を取りながら尋ねた。
「大当たりだNE。あいつは私の側近だYO。今ちょっと問題を起こしていてNE。困っているんだYO。だから、お前らには大人しくしていてもらおうか……。」
「!」
ワイズが口を閉ざした瞬間にナオ達の体がまったく動かなくなっていた。
「なっ……なんだよ!身体が動かない!」
「うかつでした……。知らぬ間に神力の鎖を巻かれました……。」
ムスビとナオはなんとかして体を動かそうと試みたが体はまったく動かなかった。
「お?栄次だけ免れたかYO。さすが剣術使いだNE。野生の勘で私の神力を見破ったか。」
いつの間にかワイズの後ろには栄次が立っていた。
「ナオ達を解放してもらおうか。」
栄次はワイズに刀を突き付けると低い声で言った。
「はん?お前は私を斬れないだろうがYO。そういうくだらない要求にこたえるつもりはないNE。私は何もできないが私を斬った所でお前達も何もできないYO?」
ワイズがほほ笑んだ刹那、ワイズと栄次の前に天御柱神が現れた。
「先程は手こずったが今回はそうはいかんぞ。」
「風か……厄介だな。」
睨みつける天御柱神に栄次の頬から冷汗が流れた。
「……歴史神達は動けない、栄次は御柱には勝てない……お前らがノコノコ来るという前提で策を練ったが練るまでもなかったようだNE。」
ワイズはもがくナオとムスビを眺めながらクスクスと笑った。




