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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
四部「明かし時…」隠された神の歴史
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明かし時…3ジャパニーズ・ゴッド・ウォー2

 あれからしばらく経った。この二カ月間くらいの間、奇跡なのかなんなのかわからないがナオ達は居場所を特定されなかった。


 ナオの体力も元に戻り、今は歴史の確認として巻物を読んでいる。栄次とムスビにも特に変わりはなく、部屋にいた。


 「……私達の所属、西の剣王、タケミカヅチ神にもおそらくなんらかの歴史が隠されていると思われます。イドさんの前にタケミカヅチ神のが接触しやすいのでそちらから……。」


 「ダメだよ!何馬鹿な事言ってんの!」

 ナオの提案を興奮気味にバッサリ切ったのは青い短い髪の男、ムスビだった。


 「ムスビ……ですが……。」

 「ですがもヘチマもないよ!今、どういう状態かわかってんのかよ!」

 ムスビはナオに対し声を荒げた。


 ナオはビクッと肩を震わせて縮こまった。


 「あ……ご、ごめん。でもさ、そりゃあ無茶だってば。」

 ナオの反応を見てムスビは慌てて声音を優しくした。


 「……無茶であることは重々承知です。剣王はよく考えれば謎が多いのです。そしてワイズも……。この二方とはいずれ出会って歴史の確認をしなければなりません。ならば、先に済ませて高天原南に身を隠すのが良い策なのではと思いました。」


 ナオの言葉にムスビは盛大にため息をついた。


 「……はあ……。策って言っているけどさー……全然策になってねぇから……。剣王から逃げ切る自信なんて正直ないよ……俺。」


 「同感だ。」

ムスビの声と被るように店先から声が聞こえた。声が聞こえたと思ったら障子戸から男がひょっこり顔を出した。


 「ああ、栄次。……あんたがそう思うんじゃあ俺なんて絶対無理だよ。」

 ムスビは総髪の男、栄次にため息交じりに答えた。栄次は着物を揺らしながら部屋に入って来、ムスビの横に座った。


 「ですが何とかして彼らの歴史を覗かなければなりません……。太陽ですらあれだけの歴史を隠し持っていたのですから、長くこの世界に居座っている彼らはもっと隠し事をしているはずです。」

 ナオは巻物に目を落としながら小さくつぶやいた。


 「ワイズと剣王の元の歴史はどんな感じなの?巻物で見れるんでしょ。」

 ムスビがそこらに散らばっている巻物を振りながらナオに尋ねた。


 「思兼神、ワイズとタケミカヅチ神、剣王の歴史は表だと特に不思議はありませんでした。」

 ナオは唸りながら読んでいた巻物を元の場所に戻した。


 「今、読んでいたのは……誰のを読んでいたの?」


 「……イドさんの歴史です。彼にも謎が含まれていました。しかし、この巻物には書かれておりません。少し前にイドさんに接触した時に見えたスサノオ尊についての記述を探したのですが抹消されているのかありませんでした。」


 「そうなのか……。じゃあ、最初はあの龍神から調べた方がいいんじゃないか?」


 「彼はおそらく東のワイズの元にいらっしゃると思われます。つまり、どちらにしても高天原へ行かなければ何も解決しないのです。」

 ナオは腕を組んで一息ついた。


 ここから一歩も外に出ていないナオはこのままではいけないと思っていた。


 ……行動を起こさないと先に進めません……。


 ナオが高天原へ行く事を再び提案しようとした刹那、栄次が勢いよく立ち上がった。


 「ん?どうした?栄次。」

 ムスビが栄次を不思議そうに見つめた。栄次は刀に手をかけたまま、辺りの様子を窺っている。


 「敵襲ですか……?」

 ナオも不安げな顔で栄次を見上げた。


 「……何かの気配を感じるぞ……。」

 栄次がちいさくつぶやいた。


 「……見つかってしまったのでしょうか……。」

 「……わからない。俺が少し様子を見て来よう。」

 栄次が静かにナオに答えると外の様子を見に部屋を出て行った。


 「お気をつけて……。」

 ナオの言葉に栄次は軽く頷くと足を進めた。小さな窓がついているドアからそっと外の様子を窺う。


 「……!」

 店の目の前の道路を茶髪の少女アヤと狐耳の男、ミノさんが走り抜けた。その後を銀髪の男イドさんと黒髪の幼女ヒメちゃんが通り過ぎて行った。


 「……っ!」

 栄次が驚いているとすぐに男の声が響いた。


 「待つのである!高天原へはいかせぬ!」

 アヤ達を追うように導きの神である天狗が叫びながら駆け抜けた。


 「……天狗……導きの神か。道を正す神があいつらを呼び止めているのならばあいつらは止まるべきだ……。理由はわからないがあいつらは強引に高天原へ入るつもりか……。」

 栄次は一人つぶやくとナオ達がいる部屋へと戻った。


 「で……どうだった?」

 ムスビが困惑した顔で栄次を見つめた。


 「……。理由はわからんが、時神アヤと狐耳と歴史神とイドの龍神が高天原へ行こうとしているようだ。それを天狗が追っていた。」

 栄次の言葉でムスビとナオは驚いた。


 「え……?どうしてアヤさんが……。」


 「知らん。だが、俺達も高天原へ入る機会かもしれぬ。アヤ達はまだ高天原へ入れる神格はない。故に他の神も彼らを追い出そうとするだろう。その混乱に紛れ込めば俺達は大して目立たないはずだ。」


 「そ、そうですね。こういう方法は好きではありませんがアヤさん達を餌にさせていただきましょう。何がしたくて高天原へ入りたいのかわかりませんが……向こうにも向こうの目標があるのでしょう……。」

 栄次にナオは大きく頷いた。


 「ナオさーん……。俺は不安だけどナオさんは一回決めたら突き進んじゃうからなあ。言っても聞かないし。無茶はしないと約束できたらついてってあげるよ。」


 「無茶はしません。」

 ナオはムスビにほぼ即答した。


 「絶対嘘だろ!……まあ、とにかく、突発的に動かないでね。」

 ムスビの言葉にナオは小さく頷いた。


 「……で?どうするのだ?俺達も高天原へ行くのか?」

 「はい。鶴を使って高天原ゲートまで行きましょう。」

 栄次の問いかけにナオははっきりと言い放った。


 「ちょ、ちょっと待って!ナオさん。俺達は西の管轄だから西行きゲートのチケットは持っているけど、ゲートについている身分認証の機械で色々とバレちゃうんじゃないか?」

 ムスビが青い顔でナオを止めたがナオはムスビに自信満々な顔を向けた。


 「問題ありません。私達(神々)の歴史を改ざんして機械を狂わせてしまえばいいのですよ。もちろん、布などで顔を覆って誰だかわからなくして門番を欺くのも大事です。」


 「それけっこうな犯罪だよね……。まず、歴史の改ざんなんてできるの?」

 ムスビの問いかけにナオは険しい顔で小さく頷いた。


 「改ざんというよりも他の神になりきると言った方が正しいでしょう。他の神の歴史をかぶるような雰囲気です。とりあえず、護送用の鶴を呼びますね。」


 「ま、まあ、何か策があるならいいんだけど……。」

 戸惑うムスビをよそにナオは素早く鶴を呼んだ。



 鶴はすぐに来た。人型をとっているツルは白い着物に黒い袴のきれいな顔立ちの男性だった。通常、人型状態の鶴をツルとカタカナで呼び、動物形態の鶴は普通に鶴と呼ぶ。


ツルは堂々とナオ達がいる店に入り込み、平然と声をかけてきた。


 「よよい。何かお呼びかよい!」

 端正な顔立ちに似合わない言葉使いでツルはナオ達を見ていた。鶴は神々の使い、どの神の元へも呼べば来る。しかし、何を考えているかわからないため非常に扱いにくい。


 今回の件でナオ達は追われている身なのだがツルは平然としている。他の神々から隠れて何かしらの命令を受けている可能性もある。


 少し警戒したナオはツルに一言言った。


 「ツル、私達の情報について他の神に漏らさない事、それから私達を高天原へ連れて行ったら私達の事をきれいさっぱり忘れる事。」


 「了解しましたよい!」


 鶴の一言を聞いたナオはほっと胸を撫でおろした。ここでナオ達を連行しようとする命令が先にツルに入っていたらツルは『命令に矛盾が生じている』と言うだろう。そして先に入った命令の方を優先させるはずだ。


 素直に頷いたのならばこのツルには他に命令は入っていないという事だ。


 「では、このまま高天原ゲートまで私達を連れて行ってください。」

 「了解しましたよい!外に駕籠を用意してあるよい!」


 ツルはナオの言葉に笑顔で対応すると外へと出て行った。ナオとムスビと栄次はお互いの顔を見合うと小さく頷いた。

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