明かし時…2ヒストリー・サン・ガールズ最終話
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場所は変わって暁の宮。ナオが出したオオマガツミ神の力は消え失せ、神々達が徐々に元に戻っていた。
「……ふう……なんだったんだい。あの子達は……。」
サキは暁の宮の最上階で疲れ切っていた。
「……サキ様、この件は私だけでは対処できません。陸の世界での六大会議に出てください。これは代理の私ではどうすることもできません。」
照姫が肩で息をしながらサキを見上げた。サキは唸りながら頭を抱えた。
「ああ……もう……今、壱の世界でやっと月姫とのゴタゴタが終わったばかりなのに……。みー君に貰ったゲームもできていないし……。」
「サキ様、何をブツブツおっしゃっているのですか?」
「え?ああ……何でもないよ。壱の世界の話さ。こっちの六大会議にも出るから……安心しておくれ。今日はもうそろそろ壱に行かないとなんないから明日の朝にやるように使いの猿達を各トップに送っておくれ。
あのナオって子は概念化した神々の歴史を見ようとしている。四大勢力はこれを良くは思っていないだろうね。なんで良く思っていないのかはあたしにはわかんないけどさ。一応、報告しておかないと、今後の太陽への援助に影響が出る。照姫、よろしく頼むよ。」
「……かしこまりました!」
「ああ、それから……。」
去っていく照姫をサキが慌てて止めた。
「はい。」
照姫は足を止め、サキを仰いだ。
「陸勤務の太陽神、猿達は壱の世界に入ったら速やかに休むこと、ちゃんとやっておくれよ。」
「はい。伝えておきます。」
サキの気遣いが嬉しかったのか照姫は元気よく返事をすると笑顔で去って行った。
「……困ったねぇ……。この陸の世界で壱の情勢を知っているのはあたし達と月神だけ……壱の世界で陸の情勢を知っているのもあたし達と月神だけ……。二つの世界を股にかけるって大変だ……。」
サキはため息をつくと壱の世界へ行く準備をし始めた。
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ナオは一日眠ったら元に戻った。突然ガバッと布団から起き上がり、辺りを見回した。
「……こ、ここは……私の部屋でしょうか……?」
時計を見ると午後一時を回っていた。
「ああ、ナオさん、やっと目が覚めた?丸一日寝てたね。」
歴史書店で店番をしていたムスビがナオの部屋に顔を出した。
「丸一日……。」
「えーと、記憶はあるよね?一応説明するけど、サキの前でオオマガツミ神の力を使ったナオさんは、あの後、ぶっ倒れてね。俺と栄次が頑張ってナオさんを現世に運んでそこの布団に寝かせたってわけ。ああ、大丈夫。変な事は何もしてないから。」
頭を抱えているナオにムスビは呆れた顔で説明をした。
「そうですか……どうやってここまで来たのかはわかりませんがご迷惑をおかけしました……。それとありがとうございます。」
ナオは丁寧に頭を下げて感謝を述べた。
「え?ああ、それはいいんだけどさ、ナオさん、ちょっと無茶のしすぎだよ。」
「ごめんなさい。」
ナオはうつむいてムスビにあやまった。
「まあ……もう後には退けないからガンガン行くしかないんだけどさ。……太陽を無茶苦茶にした件で四大勢力から狙われているかもしんない。俺ら。
とりあえず、今は栄次が見張りをしてくれてる。俺は結界を張った。だから少しは持つと思う。その間にナオさん、これからどうするのかを決めて。」
「……わかりました。しばらくはここで待機します。私が気を失ってから一日が経っているという事は太陽は壱の世界へ行き、再びこの陸に戻ってきているというわけですね。
……太陽がこの件を六大会議にかけるでしょうからいずれ、私達は罪神として捕まってしまいます。捕まるわけにはいきませんが太陽はおそらく、今朝、四大勢力と月を相手に会議を開いたのでしょう。」
ナオは状況を思い描き予想を立てる。
「ここで待機していたとして……それで……見つかっちゃったらどうする?」
「もし見つかったら、高天原に入り、そこに潜みます。そして高天原東に所属しているイドさんを見つけます。」
「また危険なプランじゃないか!追われているのに自ら高天原に入るなんて……。」
ムスビは青い顔でナオに抗議した。ナオはムスビをちらりと横目で見ると布団に目を落とした。
「……危険ですがどこにいても危険なのです。もう無理はしませんがどこでも危険ならば多少の危険は伴って情報を集める方が良いのではないかと判断しました。」
「……。うーん……で?なんでイドさんを見つけるんだ?」
「彼は……スサノオ尊の記憶を持っております。この間、会った時に見えました。スサノオ尊も概念になった神とされています。」
ナオはムスビをまっすぐ見つめ、はっきりと答えた。
「……そう。じゃあ、ここが見つかったらイドさんを探しに行くか。もう仕方ないからナオさんに従うよ。」
「ありがとうございます。ムスビ。それではしばし、休みましょう。」
ムスビのため息交じりの声にナオは申し訳なく思いつつもどこかホッとしていた。
……四大勢力、それから月……おそらく何かしらの隠れた歴史を持っているはずです。
それを神々の歴史を管理する神として解明しなければなりません……。
ナオは布団をじっと見つめながらこれからの事を考えた。




