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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
四部「明かし時…」アマテラス大神の歴史
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明かし時…2ヒストリー・サン・ガールズ11

太陽と現世に行くための霊的空間は元こばるとによって遮断された。後は灯篭が浮かんでいるこの空間の階段を降りて現世に降り立つだけだ。


ムスビはナオを抱えながら栄次と共に階段を下り始めた。


「う、うまくいった……。」

「……お前は交渉などが上手そうだな。」


ムスビと栄次は軽く言葉を交わし、元こばるとの背中に目を向けた。


元こばるとは視線に気が付き、階段を下りながら振り向いた。


「何?」

「あ、いや、なんでもない。」


「あ、そうだ。僕さ、もうすぐ夕暮れだから壱の世界に行かなきゃならないんだよ。あのアヤって子にすぐに会えるかな?」

元こばるとは思い出したようにムスビと栄次に聞いてきた。


「……んん……。まあ、俺達はあの子の家を知っているから、あの狐耳の所にいなくても会えると思うよ。」


「そうなんだ。じゃあ案内してもらおっと。」

「あんたさ、本当にあの女の子の事、覚えてないの?」


元こばるとの外見や話し方が全く変わっていないのでムスビは期待を少しだけ込めて尋ねてみた。


しかし、現実は残酷だった。


「うーん……それがさ、全然記憶がないんだよ。僕は昨日この世界に出現したばかりだしね。誰かと勘違いしてないの?」


「……本当に何にも知らないんだな。」

元こばるとが不思議そうな顔でムスビを見つめるのでムスビもそれ以上聞いても無駄だと判断した。


しばらく階段を降りていると再び鳥居が見えた。


「はい。現世に着いたよ。」

元こばるとはほほ笑みながら鳥居の先を指差した。


「お、もう着いたの?」

ムスビと栄次はさりげなくさっさと鳥居を潜った。それを見届けてから元こばるとも鳥居を潜り、霊的空間を閉じた。


「よっしゃあ!戻って来れたあ……。」


ムスビは辺りを見回して心底安心した表情を浮かべた。空に浮かぶ太陽は相変わらず眩しく輝いている。まだ太陽は沈んではいないが後、二時間もすれば山々の影に隠れ始めるかもしれない。


おそらく時刻は二時過ぎだ。降り立った場所は先程の神社だった。あの実りの神、ミノさんがいた神社だ。


「あ!」

ムスビが喜んでいる横で元こばるとは神社の賽銭箱付近に目を向けていた。


「ん?あ!」

ムスビも賽銭箱付近に目をやると賽銭箱に腰かけているアヤとミノさんを見つけた。


ミノさんは困惑した顔でアヤに寄り添っていた。アヤはぼうっとしながらミノさんに寄りかかり空を眺めていた。


「おいおい、あんた、大丈夫か?」

ムスビが戸惑っているミノさんに声をかけた。


「ん?あ、ああ……おたくらか……。あれから一応、連れ戻したんだが……なんかこの子がぼーっとしたまま動かなくてよ。んで、俺も暇だからこうやって一緒にぼーっと……。って、おたくの彼女の方はどうしたんだ?寝てんのか?」


ミノさんがナオに目を向け首を傾げた。


「ま、まあ……ナオさんは疲れて寝ちゃったんだよ。それから……。」

ムスビが元こばるとの事を言おうとした刹那、元こばるとがアヤに話しかけていた。


「ね、ねえ……。き、君……えっとアヤだっけ?なんだか色々とごめんね。僕、本当に何も知らなくて……。」


元こばるとが恐る恐るアヤに話しかけた。

アヤの目がゆっくりと元こばるとの方へ向いた。


「いいの。わざわざ来てくれてありがとう。あなたは何も悪くないから。でもまた友達になってくれたら嬉しいわ。」


「え……?」

「ダメかしら?」


アヤが不安げな瞳で元こばるとを見上げた。こばるとはアヤを見据えるとふんわりとした笑みを浮かべ、大きく頷いた。


「ダメなんかじゃないよ!いいよ。あー、良かった。僕がなんかやっちゃったのかと思ったよ!友達になりたかったんだね!じゃあ、僕と君はこれから友達だ!」


「うん。」

元こばるとの笑顔にアヤは弱々しくほほ笑んだ。


「じゃあ、僕はこれからいちに渡らないといけないからまたね!また来るからね!」


元こばるとは元気よく手を振ると門を開き、太陽へと帰って行った。

太陽への門が閉まった後、ムスビはアヤに複雑な表情を向けた。


「ね、ねえ……。あれでよかったのかい?」


「……いいの。もう終わった事だから。たぶん、もう私の事を思い出してはくれないと思うし……。私はこれからミノとこの世界の神々を色々と調査しようと思っているの。」


アヤの発言に隣に座っていたミノさんは驚いて賽銭箱から滑り落ちた。


「ああ?俺となんだって?」


「……高天原について調べて神々の仕組みを完璧に理解してみせるわ。」


「お、おーい!俺は手伝わねーぜ!なんだか危ねー予感がするかんな!」

騒ぐミノさんの横でアヤは賽銭箱からゆっくり体を離すとまっすぐムスビを見つめた。


「私はやるわ。」


「……そうかい。何を言っても無駄そうだね。ナオさんに似てる。まあ、俺は止めないけどさ、気を付けた方がいいよ。


 高天原の奴らは何か隠していても絶対に言わない。まず、あの四大勢力にすら会えないと思うけどね。とにかく危険な事はしないでね。まずはミノさんの他に仲間を集めた方がいいね。高天原に入れるような神格の仲間をね。じゃ、俺は行くよ。」


ムスビはアヤにほほ笑みかけるとナオを抱きなおして神社の外へと向かった。栄次もアヤ達を一瞥するとムスビを追って歩き出した。


ムスビと栄次の背をじっと見つめながらアヤがミノさんの服を引っ張った。


「……ねえ……一緒に動いてくれる?私を一人にしないで……なんだか今、すごく寂しいの。」


アヤが切なげな表情で去っていくムスビ達を見ているのでミノさんはなんだか放っておけなくなった。


「……んん……んあ……、わ、わかった。しばらく一緒に動いてやるよ。それでいいんだろ?」


「ありがとう……ミノ。」

アヤは沈みつつある太陽を浴びながらミノさんにほほ笑みかけた。


「あ、ああ……仕方ねぇな。ったく。」

ミノさんはアヤの頭を軽く撫でると夕日で赤くなっている空をなんとなく仰いだ。


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