明かし時…1ロスト・クロッカー16
「それで……どうするのだ……?」
栄次が神社の階段上を眺めながら問いかけた。
「そ、そうですね……とりあえずここの実りの神に太陽へ行くアポイントを取りましょうか?」
「そうだね。ここまで来たし。」
ムスビはナオとアヤを交互に見つめながら頷いた。
「そもそも太陽神は現在壱に行っているのではないのか?」
栄次が心配そうにナオに目を向けた。
「ここの神は元々、穀物神のようですから太陽にはおらず、ここにいらっしゃるようですよ。」
ナオは栄次にそう答えると鳥居を潜り階段を登り始めた。
アヤも栄次もムスビもなんとなくナオに従って階段を登り始めた。神社に街灯はなく、真っ暗で人っ子一人いない。
階段を登り切ると再び鳥居があり、その鳥居の奥にそこそこの社が建っていた。
「く、暗闇の神社ってやっぱり不気味よね……。」
アヤはナオの肩に手を置きながらブルッと体を震わせた。
「……ですがここにいらっしゃる神はどうやら能天気なようです。」
ナオは怯えているアヤの手をそっと撫でると社の賽銭箱の方を見るよう促した。
「……あれがここにいる神なの……?」
賽銭箱の上でだらしなく男の神が眠っていた。黄色の短い髪に狐の耳が生えており、赤いちゃんちゃんこにとび職のような裾がすぼまっている白いズボンを着ている。
仮想パーティから出てきたような格好だ。
「ふう……ちゃんと社内で寝ろよ……。風邪ひくぞ……。」
ムスビは呆れた顔をしながら気持ちよさそうに眠っている男を見つめた。
「……んあ?」
ムスビの視線に気が付いたのかよくわからないが眠っていた男が目を覚ました。
「あ、起きたわ。」
アヤがナオに目線を送る。ナオも頷き、男に近づいていった。
「ん?おたくら……誰だよ?神か?んあ~……良く寝た。」
男は大きくあくびをすると寝ぼけ眼でナオ達を見据えた。
「良く寝た……?あなた、いままで寝ていたのですか?」
ナオは目を見開いて驚いた。今は午後八時に近いと思われる。
「ん~……まあ、いつもこんなもんだぜ。」
「夜行性ですか?」
「ん?いや。夜もしっかり寝るぜ。」
男の返答にナオは頭を抱えた。
「もう封印に近いじゃないか……それ。」
ムスビも大きなため息をついた。
「で?おたくらは誰だ?俺は日穀信智神。実りの神で周りからはミノさんって呼ばれているぞ。」
男はよく見ると澄んだ青い瞳をしていた。宝石のようでとても美しい。顔つきから温厚そうなものを感じる。
「では私もミノさんと呼ばせていただきます。」
「ん?お、おう。いいぜ。……で、な、なに用なんだ?」
金髪の男、ミノさんは真面目そうな外見のナオに何か言われるのを恐れたのか少し怯えた返事をした。




