明かし時…1ロスト・クロッカー12
「手を出すも出さないもこれは仕方のない事なんですよ。あなたはこれから時神になるお方のようですね。」
銀髪の男、イドさんが必死のアヤを軽くあしらう。
「私にはまったく話が呑み込めないけど、こばると君には手を出させないわ。」
「ずいぶんと彼に移入しているようですが彼は歴史を動かした大罪神ですよ。あなたも殺されかけたんじゃないですか?」
イドさんは困った顔をアヤに向けた。
「……っ。」
アヤは言い返そうとしたが何も思いつかなかった。アヤがナオ達を睨みつけていると後ろにいた栄次が静かに前に出てきた。
「……俺は早く現代神をこの世界に出さないといけないのだが……こばるととやら、このままではアヤが時神として覚醒できない。言っている意味はわかるか?」
栄次はこばるとを鋭く見つめ、静かに言い放った。
「……早く消えろって事かな……?……やだね。僕はまだまだ時と共にいたいんだよ!」
こばるとは栄次に敵対の目を向けた。
「はあ……では仕方あるまいな。……斬るしかない。」
栄次はため息一つつくと刀の柄に手を置いた。
「ダメっ!」
アヤはこばるとを庇うように前に出た。
「どけ。小娘。」
「どかない!」
「アヤ……やっぱり僕が何とかするしかないようだよ。大丈夫。そこで待ってて。」
「こ、こばると君……。」
こばるとはアヤの行為が単純に嬉しかった。だが、このままだとアヤを傷つけてしまうかもしれない。こばるとはアヤをそっと横にどけるとナイフを取り出し、構えた。
「……僕はまだ時と共にいたい。だから……君に負けるわけにはいかないんだよ。」
「お前は馬鹿か……。お前の役目はもう終わったのだ。自分の寿命もわからないか?新しい現代神が出たことでお前はこの世界から役目の終わりを告げられたのだ。」
「まだ終わってない!世界から拒絶されたって僕は存在し続けてやる!」
こばるとはナイフを握り直し、栄次へと攻撃を仕掛けた。
しかし、ナイフの先は栄次に当たる事はなかった。こばるとは諦めずに何度も栄次に攻撃をしかけた。
「……そんなものでは俺を傷つける事すらできんぞ。」
栄次はこばるとの攻撃を何事もなかったかのように避けていた。
円を描いては消えていくナイフの動きに栄次の後ろにいたナオとムスビは怯えていた。
「あ、危ないですよ!こばるとさん!」
「そうだぞ!そんなもの振り回すなよ!」
ナオとムスビはヒメを庇うように立ちながら栄次の影に隠れている。ナイフが光るたびに小さく悲鳴を上げていた。
「……大丈夫じゃ……もうすぐ彼の寿命は終わるからの……。」
ふと、ヒメが悲しげにつぶやいた。
「え?」
ナオとムスビが驚いた表情でヒメを見たがヒメはそこから先何も言わなかった。そしてそのまま人差し指をこばるとに向けた。
ナオ達は恐る恐るこばるとの方に目を向けた。




