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明かし時…1ロスト・クロッカー10

 ナオ達は再びアヤの部屋に入り込み、たくさんある時計を一つ一つ調べていた。


 「栄次、時神の神力、わかりますか?残念ながら何もわからないのですが……。」

 ナオは首を傾げながら時計を撫でていた。


 「うむ……。はっきりとはわからないのだが……この時計だけ不思議な感じがするな……。」


 栄次は眉をひそめながら新品そうな時計を持ち上げた。横にいたムスビは栄次が持っている時計をまじまじと見つめていたが何もわかっていなさそうだった。とりあえず栄次はムスビに時計を渡した。


 「……これ、新しそうだな。やっぱ俺にはわからないなあ。」

 ムスビは一通り眺めると今度はナオの手に時計を置いた。


 「そうですね……。私もよくわかりませんがまだ買ったばかりのような気もします。」


 「ちょっと貸してくれるかの?」

 「はい。ヒメさん、どうぞ。」

 ムスビからナオに渡った時計はナオの隣にいたヒメに渡った。


 「歴史の分析をした所、職人さん手作りの目覚まし時計のようじゃ。昨日完成し、この家に届いたようじゃな。値段は一万円超じゃ……。アヤは前々からこの時計を狙ってお金を貯めていたようじゃな。」


 ヒメの分析にムスビは驚いた。


 「そんなこともわかるのかい?」


 「……わかるというか……この時計に携わった人々の歴史を見ただけじゃ。時計の事はわからぬがそれに関わった人の歴史ならば見れるからの。ワシは人の歴史を管理しておる故。」


 「な、なるほど……ヒメちゃんってすごいんだね。」

 ムスビは時計とヒメを交互に見つめながらつぶやいた。


 「で?栄次殿、これが時渡りした時計なのかの?」

 ヒメは時計から目を離し、栄次に目を向けた。


 「それはわからんのだがこの時計だけ神力が宿っているように思えるのだ。」

 栄次はなんとも言えない顔で首を傾げた。自信はなさそうだった。


 「まあ、今の段階では少しでも可能性がある方へかけたいな。栄次の思った通りに動いてみるしかねぇだろ。な?ナオさん。」

 ムスビはナオに目を向けた。


 「そうですね。今はそれしか手がありませんので……。ここは栄次の時神の勘を信じましょう。」

 ナオは大きく息を吐きだすと気合を入れた。


 「では……この時計が示す時間に行ってみるかの?昨日の昼過ぎくらいの時間帯だと思われるのじゃ。」


 「よし、じゃあそれで行こう。俺はよくわかんないからさ。」

 ヒメの言葉にムスビが元気よく答えた。


 「お、おい。正しくないかもしれんぞ……。」

 勝手に話が進み、栄次は困惑した顔でナオ達を見ると焦った声を上げた。


 「大丈夫です。間違えたら急いで戻りましょう。なにせ手がかりがないのですから片っ端からやらないといけないと思います。」


 「そうか。」

 ナオの発言に栄次は一言短く言うと口を閉ざした。


 「では行きましょう。ヒメさん、お願いします。」

 「う、うむ。いいのじゃな?それではさっそく転送するのじゃ。」


 ヒメはナオの合図でナオ達を過去の世界、(さん)に飛ばした。


 ほぼ一瞬で何も考える余地はなく、ナオ達は白い光に包まれていた。気が付くと少しだけ違うアヤの部屋にナオ達はいた。昨日の日付の特売のチラシが床に散らばっており、先程触っていた時計は箱の中に入ったままだった。


 「……昨日に来た……ようだな。」

 栄次が小さくつぶやき、ナオとムスビはハッと我に返った。


 「あ、あれ……?ヒメちゃんは……?」


 頭が働きかけてきた頃、ムスビはヒメがこちらに来ていない事に気が付いた。


 「もしかするとヒメさんは送る事はできますが自分が過去に来る事はできないのではないでしょうか?」


 「じゃ、じゃあどうやって元の世界に……。」

 ナオとムスビは顔色を悪くした。


 「ん?ワシがどうしたのじゃ?」

 ふと隣からヒメの声がした。ヒメは廊下の方でこちらを窺うように立っていた。


 「良かったです。ヒメさんも過去に渡れたのですね。」

 ナオから安堵の吐息が漏れる。ヒメは少し複雑な表情で首を振った。


 「あ……えっといや……そなたらの世界で言うと……ワシは過去……えーと、参の世界のヒメじゃ。今は明日の自分とリンクしておるので一応、話はわかっているぞい。」


 「え……?よ、よくわかりませんがあなたは昨日のヒメさんという事ですか?」

 「うむ。そなたらからするとそうじゃな。しかし、中身は明日の自分じゃ。」

 戸惑うナオにヒメは落ち着いて答えた。


 「中身が明日の自分って……。」


 「じゃから、記憶を明日の自分とリンクさせておるだけじゃ。」


 「じゃ、じゃあ、別にさっきまで一緒にいたヒメちゃんと変わらないわけだよね?」

 「そうじゃ。」

 ムスビの動揺している声にもヒメは落ち着いて答えた。


 「ま、まあ話が通じるのならばそれでいいです。では、行きましょうか。」

 ナオはまだ戸惑っていたが徐々に落ち着きを取り戻した。


 「あ、ちょっとナオさん、行きましょうってどこへ?」

 ムスビがナオに手を広げて「わかりません」のポーズをとる。


 「……そ、それは栄次の時神を探知する能力で……なんとか……。」

 「俺か?何度も言うが……俺には自信がないぞ。」

 もじもじとしているナオに栄次は呆れたようにため息をついた。


 「やっぱり勢いで来たのかよ。」

 ムスビは頬を赤くしているナオを楽しそうに見つめた。


 「ム、ムスビ!楽しそうに笑っている場合ではございません!早くしないとアヤさんがっ……。」


 「あーあー、わかったよ。少し落ち着いて。ナオさん。とりあえず、栄次に任せよう。」

 「お前も結局は俺なのか……。」

 ナオをなだめるムスビを横目で見た栄次は再びため息をついた。

 


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