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流れ時…2タイム・サン・ガールズ13

 朝になりサキは叩き起こされた。ちなみにこちらのサキは高校生のサキである。

 「うーっさいなあ……。まだ寝る―。」

 「これがあたしとは……。だるいのは共感できるけど起きた方がいいよ。」


 起こしているのは外見小学生のサキ。

 高校生側のサキは文句を言いながらもなんとか起き上った。サキが起きてからすぐ目元の見えない女が部屋に入ってきた。


 「ごはんできてるわ。食べたら太陽へ行くわよ。」

 小学生サキはうなずいたが高校生のサキの顔はぽかんとしていた。


 「へ?なに太陽?寝ぼけてんの?あれ?ってか、昨日の事は夢じゃないの?あんたがいるって事は……ええええ!あたしが寝ぼけてんの?!」


 高校生サキは小学生サキを真っ青な顔で見た後、発狂した。当然だ。こちらのサキは何が起きているのかもまるでわからずに大口を開けてずっといままで寝ていたのだ。


 小学生のサキは考えていた。


 ……昨日、お母さんから連れて来いと命令され高校生のサキをそこはかとなく、テクニックを用いて家へ招いたけどなんの理解もしてないまま太陽なんかに連れて行っていいのかな。


 この大きいサキは時間の感覚に縛られる事はないし、世界から彼女はもともといるって事になっていないからあたしが呼んだらこのサキは簡単にこちらの世界に来た。


 だけどこのサキは何にも知らない。

 あたしがなんで二人いるのかって事もたぶん理解してない。

 あたしが太陽神だという事もあたしが一度太陽神の神権を放棄しているって事も知らない。むしろ、神がいる事もまだ十分にわかっていないのだろうな。


 「とりあえずお腹空いたからご飯食べてから考えよー……。」

 サキはもう朝ご飯に頭が向いている高校生のサキ、自分を残念そうに見つめていた。



 アヤ達は長い間、太陽神達と睨みあっていた。

 もちろん、今も睨みあっている。

 睨みあっているというよりはこちらが一方的に睨んでいるといった方が正しい。


 太陽神達は戸惑ったままこちらを見ているだけだ。

その目はどれも「誰か動いてくれ」と言っている。


 「太陽神様方にこんな酷い命令を出しているのはどちら様でござるか?」


 サルが誘導尋問にかかろうと考えていた時、太陽神達の雰囲気ががらりと変わった。その原因はすぐにわかった。


 「私だけど生意気な下僕ね。」


 サルの頬に汗が伝った。凄い力を感じる。

 太陽神達が次々と道を譲っているのが見えた。


 その後すぐに太陽神達は一斉に膝をついた。アヤ達の目の前に立っていたのは女だった。長い銀髪をひとまとめにしている。顔は微笑んでいるが不気味な事に目だけ黒ずんでいてわからない。


 「……っ!」


 サルはあまりの気迫に膝をついた。立っていられなかった。

 よく見るとまわりの太陽神も震えている。

 太陽神がこんな状態ではその配下のサルがかなうはずがない。


太陽神達は怯えているが不思議な事にアヤ達は何も感じなかった。この力は太陽神にしかわからないらしい。


 「何をしているの?さっさと時神を殺しなさい。私の命令が聞けないの?ねぇ?」


 女は跪いているサルの側に寄ると顔をそっと撫でる。

 底冷えするような何かがサルの心をなでる。


 「サル!しっかりしろ。」

 栄次とプラズマがサルに呼び掛けるがサルに反応はない。


 「よくこんな堂々と命令違反をしてくれたわね。どうなるかわかっているのかしら……。」

 微笑んでいた女の顔が怒りへと変わった。


 「……。何故……何故……このような事を……。」


 振り絞るようにサルは女を睨みつける。

 それが女の怒りをさらに増徴させる原因になった。


 「私に質問しようって言うの?なんて生意気。あなたなんてね、すぐに殺せるのよ……。」

 女は手をかざした。サルの身体は途端炎に包まれた。サルの悲鳴が部屋に響く。


 「サル!」


 アヤ達が寄ったところでサルは助けられない。

 熱風にさらされサルに近づくことすらできなかった。

 まわりの太陽神達はその光景を見る事なくただ、下を向いて肩を震わせている。


 「ただ、殺すとコマが一つ減ってしまう。それは困るから半殺し程度で済ませてあげるわ。」


 女はまた冷徹な笑みを浮かべると指を鳴らした。炎は跡形もなく消え、身体中を焼かれたサルが無残に転がる。


 「さ、サル……。」

 アヤはサルに近寄り抱き起した。サルはかろうじて生きている状態だった。

 栄次とプラズマは武器を構え、女を睨みつけていた。


 「こんな小娘が時神?後ろの方達はなんとなくわかるけどねえ。」


 サルを抱きしめてこちらを睨んでいるアヤを女は馬鹿にしたように笑う。


 「そう……わかったわ。太陽は恐怖政治を行っているのね……。そういうの長続きしないわ。」


 こんな無茶苦茶な相手にアヤは自分でも恐ろしいくらい強気だった。

 恐怖よりも怒りの方が勝っていた。


 「何にもできないただの神が偉そうにしゃべるんじゃないわ。」

 女はアヤを蹴り飛ばした。


 「アヤ!」


 その行動に栄次とプラズマの表情が変わった。

 アヤは顔を蹴られていたがそのまま女を睨みつけた。その時サルが言葉を発した。


 「小生……彼女を知らないのでござるが……それは小生があの夜にとらわれていたからでござる。そのわずかな間で……太陽は彼女が仕切るようになった……という事……か。」


 それは独り言のようなものだったがアヤはそれに答えた。


 「力で抑えつければ誰だって王様になれるわ!あなたはそうやって即席で王女様になった。」


 「口の減らない子ね。今、ここで殺してもいいのよ。三人いっぺんに消そうと思っていたけどやめるわ。」


 女はアヤに手をかざした。

 栄次とプラズマが動こうとした刹那、女は手を引っ込めた。そしてゆっくりと後ろを向く。


 「あら?やっと来たの?サキ。」

 「こっちのサキが言う事聞かなかった。」


 小学生のサキが高校生のサキを連れて部屋に入ってきた。障子は開け放たれていて廊下にもあふれるくらいの太陽神がいた。その中を掻き分け、サキが二人現れた。


 「なんだい。これは。あれ?アヤじゃん。一日ぶり。こんなとこで会うなんてねぇ。……あたし、よくわかんないんだけどここに連れて来られて……」


 高校生のサキは呑気に言葉を紡ぐ。アヤ達は言葉がなかった。今ここでサキに会うということは……サキはもうすでに敵の手に渡っているという事だ。


 「もういいわ。一度眠りなさい。サキ。」


 女はサキの頭に手を当てた。サキは気が抜けたようにその場に倒れ込んだ。倒れ込んだサキを小学生サキは無表情で見つめる。


 「あなた……何者なの……?」


 アヤはただ立っているサキを見つめた。

 こちらはあの女よりも遥かに凄い力を持っていた。これはアヤ達時神にも伝わる力だ。


 しかし、なぜだろうか。その濃い力の源がとても弱々しい。


 「あ、アマテラス様?」


 太陽神達、猿達はサキを見てそう口にした。太陽神達にはアマテラスの加護がどういうものかはっきりとわかっている。サキからはアマテラスの強力な力を感じた。


 「……いや、今は太陽神ではなくてただの神……。」

 その先を言おうとしたサキを女が止めた。


 「そろそろ行くわよ。サキ。その寝ているサキも連れて来なさい。」

 「……わかった。」


 女は堂々とアヤ達に背を向けると歩き出した。その後を小学生のサキが高校生のサキを担いで続く。最後に女は一言だけ凄味のある声で言った。


 「何をしているの!さっさと立ち上がって時神を殺しなさい。それとも私に……アマテラスの力に逆らう?それはそれでもいいけどね。」


 それを聞いた太陽神達の肩がまたビクッと動き、一人また一人と立ち上がる。

 手に剣と鏡の盾を持っている。


 「猿よ、我らの命に従ってくれ……。」

 太陽神達はあきらめたようにつぶやき猿達を立たせた。


 「命に従えぬ者はここで処刑だ……。いいな!」

 猿達は震えながら立ち上がった。そして次々に剣を構える。


 「俺達をここで殺すつもりなのか。」

 「まずいな。このままではサキを守れん。」

 栄次とプラズマも武器を構える。


 「私達は太陽神達に勝てないわ。これじゃあ逃げられない。」


 アヤ達はひん死のサルをかばいながら太陽神達と対峙していた。なんとかしなければ時神はここで全員消える事になってしまう。そうなるとこの世界、時間がどうなるかわかったもんじゃない。


 さすがの栄次、プラズマも焦っている。太陽神達は半ば自暴自棄で襲ってきた。栄次が刀をふりかぶり、プラズマが銃を撃った。


 「ちょっと待つのじゃ!」


 これから乱闘が起こる直前、とても聞き覚えのある声が聞こえた。



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