ゆめみ時…4夜は動かぬもの達13
少し前、セイは泣きそうな顔でライを探していた。ライは美術館巡りの最中で夢見神社の近くの美術館にいた。
「お姉様!お姉様!」
セイは美術館のロビーでほっこりとした顔をしているライに必死に叫んだ。
ライは美術館のカタログを眺めていたが突然セイが現れたので驚いていた。
「ええ?セイちゃん?どうしたの?」
「私、人間を二人殺してしまうかもしれません!」
セイの発言にライは事情が呑み込めず首を傾げた。
「いきなりどうしたの?」
ライはふと昨日の夢の事を思い出した。別の世界から来たという自分が一言こう言った。
……セイちゃんを……セイちゃんを守ってあげて!
……私しかセイちゃんを守れないから……。
「……。」
ライは顔を引き締め、セイの話を聞くことにした。
セイの話を一通り聞いたライはセイの肩に手を置いた。
「人と関わっちゃダメ!絶対にダメ。でも気になるから私も手伝うね。その子達が死んじゃうかもしれないんでしょ!これは大変だわ!」
ライはセイを連れて走り出した。
セイとライは息を上げながら二人が待ち合わせとして使っていた公園内に入り込んだ。
「あっ!」
セイが声を上げ、ライはセイがみている方向に目を向けた。セイの目線の先でタカトとショウゴがベンチに座って楽しそうに談笑していた。
「あ……あれ?」
セイとライは慌てて植木近くに隠れると首を傾げた。
「セイちゃん……本当に彼らなの?」
「は、はい……。一体どうしたのでしょうか……。」
セイは不安げにライを見上げる。
「……わからないけど……和解しているみたいだね。」
「……ですが私のせいであの子達を苦しめてしまったようです。何かしなければならないと思います。」
セイが今にも泣きそうな顔をしているのでライはそっとセイを抱きしめた。
「大丈夫。もうあの子達に関わらない方がいいよ。人間は私達が関わらない方が自分達で考えて行動できる。私達が人間を縛っちゃダメ。神はね……人を見守るだけがちょうどいいんだよ。セイちゃん。」
「ですが……。」
セイがまだ何か言おうとした刹那、公園内にノノカが現れた。
ノノカは暗い顔つきでゆっくりと歩いていた。
ノノカはたまたまこの公園を訪れたようだった。
公園内を一通り歩いているとノノカはタカトとショウゴを見つけた。
「タカト!ショウゴ!」
ノノカはどこか必死の表情で談笑している二人の元へと走り出した。
「ん?あれ?ノノカ……。」
ショウゴとタカトはいきなりノノカが現れたので戸惑っていた。
「あのね……昨日、すごい怖い夢を見たの。な、生々しくて気持ち悪かったからあんた達が心配で家まで行ったんだけどいなくて……仕方なしにこの公園に……。」
ノノカはどこかほっとした顔で二人を見据えていた。
「俺達が心配って?俺達になんかあった夢でも見たの?」
タカトが不機嫌な顔でノノカを見上げた。タカトはノノカとケンカをしたばかりで少し気分が悪かった。
「なんかもう一人の私が現れて私、殴られて……そこで変な記憶が流れたの。この先の登山道でタカトをショウゴが突き落として……ショウゴはビルから落ちて……ごめん。こんな変な夢を見たってあんた達に言ったらなんか不吉すぎるよね。」
ノノカはため息をつきながら二人が座っているベンチに腰掛けた。
「その夢……僕も見たよ。」
「俺も見た。」
ショウゴとタカトはほぼ同時に声を上げた。
「え?嘘でしょ……。」
「いや……嘘じゃない。ノノカが私を信じるなって泣きながら言ってた。」
「ああ、それ、俺も見た。」
タカト、ショウゴ、ノノカは自分たちがまったく同じ夢を見ていたことに気が付いた。
「まさか……おんなじ夢を……。」
「不思議な事もあるもんだな。事実さっき、登山道でタカトが崖から落ちそうになってさ……。」
「ああ、俺もあそこで死ぬのが正しいようなそんな気がしてさ。」
ショウゴとタカトはそれぞれ不思議そうに言葉を発した。
「あ、あのさ……。もう一回ちゃんと話したい事があるんだけど。」
ノノカの控えめな発言にタカトとショウゴは同時に「何?」とつぶやいた。
「私が悪いんだけど……もう一度、ちゃんとお互いに整理しよう?」
ノノカの言葉にタカトとショウゴは落ち着きを取り戻し、小さく頷いた。




