ゆめみ時…2夜に隠れるもの達13
「……はっ!」
ライは声を上げた。
「ライ?」
隣でトケイが不思議そうにライを見ていた。
「……え?」
ライはゆっくりあたりを見回す。目の前には困惑した顔のセイが立っており、半蔵と才蔵がセイを気にかけていた。
……戻ってきた……?
ライ以外は先程の記憶を見ていないようだ。時間もまったく進んでいない。トケイ達はライが突然、声を上げたことに驚いていただけだった。
「お姉様とトケイはそのまま監視してください。そして敦盛さんを探してください。」
セイは半蔵と才蔵に言い放つと笛を握りしめたまま歩き出した。
「まあ、情報はないですが探せない事もないでしょう。更夜達を排除してから探しに行きますよ。ここにいる他の忍達にはもう行ってもらいましょう。」
才蔵はセイにそう答え、手をすっと上げた。刹那、ライ達のまわりにいた忍達は全員消えるようにいなくなった。それを確認した才蔵は何事もなかったかのようにセイの後を追って去って行った。
「じゃあ、それがしはここで女神とトケイの監視でもしていましょうかね。他のやつらが攻めてくる可能性もねぇとはかぎらねぇですからね。」
半蔵は不気味に微笑むとライとトケイの前に座り込んだ。
才蔵が出て行ってしまってからトケイはそっとライに耳打ちをした。
「まずこの縄を解いてさ、あいつを倒してから更夜とスズを助けに行かないといけないよね。」
「助けに行きたいけど……この縄をどうやってとるの?」
ライも半蔵に聞こえないように精一杯声を落としてトケイに答える。二人がこそこそと話していると突然半蔵が笑い出した。
「ふふ……。お前さん達ねぇ……全然隠せてねぇですよ。忍、なめてねぇですかい?」
「!」
ライとトケイは驚きの表情で半蔵を見つめた。
「それがしを倒すとか……げぇむ感覚はやめなさいな。それがし達は軽い気持ちでこの仕事やってねぇんですよ。それからなあ、それがしはおめえさんらに傷つけたくねぇ。大人しくしておくのが良いって事です。」
「それは嫌だ。僕はお前の言う通りになんて動かない!」
トケイは意気込みながら半蔵に声を上げた。
「やれやれ。ではそれがしがもっとも得意としている影縫いをかけてあげましょうかね。」
半蔵はため息交じりに針をトケイの影に向けて投げ、人差し指を立てた。
「……っ!」
突然、トケイがその場に倒れた。ライは突然倒れたトケイに困惑しながら叫んだ。
「えっ!トケイさん!トケイさん!どうしたの!」
「忍法影縫いの術ってか?」
困惑しているライに向かい、半蔵がにやりと笑った。
半蔵が指を少し動かした時、トケイが突然、操り人形のように立ち上がった。
「う……動けない……。」
トケイは苦しそうに声を発していた。体がまったく動かないようだ。
「お前さんはもう、それがしの傀儡人形ってわけです。指でこう動かすと……。」
半蔵は人差し指を少しだけ動かした。刹那、トケイは意思に反してライに殴り掛かった。
「と、トケイさん!?」
「や、やめろ!」
怯えるライにトケイは必死で拳を戻そうとするが身体がまったくいう事を聞かない。トケイは焦って半蔵に叫んだ。トケイの拳は何故かライの額すれすれで止まった。
「と、まあ、こういう事だ。この子を傷つけたくはないだろう?だったら大人しくしていなさいな。」
半蔵はケラケラと笑う。反対にトケイは額から粟粒の冷や汗をつたわせ、体を震わせていた。
「……。」
「逃げられると思ったら大間違いだ。それがしら忍は常に本気。じゃねぇと殺されちまいますからねェ。おめえさん達には傷をつけるつもりはねぇですがおちょくっているわけでも手を抜いているわけでもねぇですよ。ただ、傷つけずに動けなくするだけです。だから大人しくしてろ。」
半蔵の威圧にトケイとライは怯えながら黙り込んだ。




