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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
三部「ゆめみ時…」霊界と忍と時神の話
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ゆめみ時…2夜に隠れるもの達4

 鶴はすぐに来た。大きな籠を引き、ライの前までやってくる。

 「よよい!お呼びかよい!」

 五羽いる内の一羽が元気よくライに声をかけた。鶴は神々の使いで呼べばすぐに来る。だいたいの神はこの鶴を移動手段として使っていた。

 「う、うん……。高天原までお願いできるかな?」

 「高天原に続く門の前まででいいかよい?」

 「うん。それで大丈夫よ。」

 ライは駕籠に乗り込みながら鶴に答えた。鶴は「よよい。」と謎の返事をするとライを乗せて大空へと舞い上がって行った。



 蝋燭が沢山置いてある部屋で更夜は鎖で縛られていた。連れ去られた直後に殴られたか何かで気を失っていたようだ。気がついた時はこの薄暗い部屋にいて上半身裸の状態で鎖に繋がれていた。

 ……俺を拷問でもする気か?無意味な事を……。

 更夜はゆっくりとあたりを見回す。しかし、奪われてしまったのか落としたのかわからないが眼鏡をかけていなかったため、あたりはぼやけてよく見えなかった。とりあえず鎖をほどこうと関節をはずしてみたが鎖はほどけなかった。

 ……この鎖の巻きつけ方……やり手だな……俺を連れ去ったのはやはり忍か?

 「やっと起きたか。」

 更夜が色々状態を把握している中、男の声が響いた。

 「……?」

 更夜は目が悪いため、男の顔まではわからなかったが数人の黒ずくめの男達が更夜を取り囲んでいた。

 「なんだ?俺を拷問でもする気か?」

 更夜はため息交じりに声を発した。

 「トケイ……言う事を聞くと約束すれば何もしない。」

 男の一人が更夜の事をトケイと呼んだ。

 ……トケイ?

 更夜は再びため息をついた。

 ……そうか。俺はトケイと間違われて連れて来られたのか。……俺を見てトケイではないと気がつかない所をみると……こいつらはトケイの顔を見た事がないと。トケイのふりをしてしばらく目的を聞き出すとするか。こちらの情報はまったく漏らさんようにしなければ……。

 更夜はトケイをさらおうとした理由を聞き出すため、芝居をする事にした。

 「何の約束かはわからんがモノによる。」

 更夜は男達を見回し、静かに口を開いた。

 「お前は特定した魂の世界へ迷う事なく行く事はできるか?」

 男の一人が更夜に質問を投げてきた。

 「……さあな。それを人間の魂に言う必要はない。」

 「では、特定の神を特定の魂の世界へ送れ。」

 男の一人が今度は要求を話した。

 「それはできない。」

 「つまり、特定した魂の世界には行けないという事か?」

 「あなた達に話す必要はない。」

 「できるのか?」

 「どうだろうな。」

 更夜の態度を崩してやろうと思った男の一人が木刀で更夜の腹を殴りつけた。

 「うっ……。」

 「どちらだと聞いているんだ。魂ではなく現世に存在する神を特定の世界へ送れるかどうか!」

 「話す必要はない。」

 「後悔するぞ。」

 更夜は低く呻きながら男を睨みつけた。それを境に男達は何かに触発されたかのように更夜を痛めつけ始めた。

 更夜は暴行を受けながら冷静に考えを巡らせていた。

 ……なるほどな。目的はトケイを使ってある特定の魂の世界に現世である壱の世界の神を連れて行く事。そしてこいつらは忍だがこいつらの上に主である忍がいる。忍であるのに俺が忍であるという事に気がつかないし、拷問も下手だ。こいつらは上から頼まれただけだ。それと俺が縛られているのはただの鎖、拷問設備がそろっていないという事だ。つまり、上から聞き出せとは言われているが拷問をしろとは言われていないという事だな。ふむ。

 更夜は殺気を込めた目で暴行している男達を睨みつけた。

 「……っ!」

 するととたんに男達の手がピタリと止まった。更夜が放つ殺気に男達が負けたのだ。更夜は縛られて動けないが襲いかかってくるのではないかという恐怖感が男達を渦巻く。

 更夜が男達を操ろうとした時、別の男の声が聞こえた。

 「あァ、こりゃあ……エライのを連れてきちまいましたね。」

 男達の輪を避けながら声の主が更夜の前に現れた。全身黒ずくめではっきりとわかるのは目元くらいだ。鼻の半分まで黒い布で覆われている。諜報に先程まで行っていたというような格好である。

 「……?」

 更夜はその奇妙な格好の男をまっすぐ視界に入れた。男は痛めつけられた更夜をじっくり眺めながら言葉を発した。

 「望月更夜か……おめぇ達、とんでもない忍を捕まえてきちまいましたね。」

 男の発言であたりにいた男達に焦りの表情が浮かんだ。

 「望月更夜だと!トケイではないのか!」

 「まさか甲賀望月を連れて来てしまうとは……。」

 男達はざわざわと騒ぎ始めた。その中、更夜はまっすぐに黒ずくめの男を見据え、言葉を発した。

 「あなたは何代目かわからないが服部半蔵だな……。」

 「ご名答。忍の情報網でそれがしを知っちまいました?」

 服部半蔵と呼ばれた男はいたずらな笑みを更夜に向けた。

 「まあ、そんな所だ。」

 「おめぇさんを拷問したところで何も意味はないでしょう。だがね、おめぇさんを放してやるわけにゃいかんのですよ。これからトケイを捕まえに行こうと思っている時に邪魔される確率が高ぇですからね。」

 半蔵は飄々と更夜に言葉を発する。

 「ああ、間違いなくあなたを邪魔する。」

 更夜は半蔵に向かいニヤリと笑った。

 「だから、こちらとしては万が一逃げ出せたとしても逃げられないようにする方が大事でしてねぇ。」

 「なんだ?俺を半殺しにでもする気か?」

 「ご名答。悪ィけどそれがし達は同業者には本気なんですよ。」

 半蔵は更夜に不気味に笑いかけた。

 「その言葉、何度も聞いたな。悪いが半殺しはごめんだ。」

 「じゃあ、それがしから逃げちまったらどうですか?逃げられるもんならですが。」

 「違いない。」

 半蔵と更夜はそれぞれ顔を引き締め、お互いを睨みつけ合った。


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