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流れ時…2タイム・サン・ガールズ4

湯につかったアヤはのんびりと自室に戻った。

自室では男達の声がする。妙に楽しそうだ。


「ちょっとうるさいわ……。何やってんの?って……。」


アヤは目の前の光景に驚いた。

サルを含めた三人の男が机を囲んでトランプをやっていた。

見た所ババ抜きだ。

挿絵(By みてみん)

「お前の心などすぐに読める。」

「うわー……まじかよ。栄次強いな。」


ババはプラズマが持っており栄次にババをひかせようと必死らしい。


「小生はもう上がりでござるよ~。」

サルも楽しそうだ。


「三人でババ抜きなんて何が楽しいのよ……。それより話は済んだわけ?」

アヤは呆れながら三人を見据える。


ちなみにサキはベッドの中で大口を開けて眠っている。

寝相は悪い。


「見える世界と見えぬ世界、陸と壱の世界を説明しており、トランプで裏表の世界を表現しようとしたらババ抜きになってしまったのでござる。お……上がりでござる!」


サルは残っていたエースのペアをバンと机に投げた。


「ババで思い出したけど私、ババが誰かわかったわ。」

「どういう事だ?」

プラズマは最後に残ってしまったババを見つめる。


「人間の歴史を守る神、歴史神。彼女なら時間を動かせるんじゃないかしら?ちょっと前にサキを連れてうちに来たの。」


「サキ殿を連れてきたのは彼女……ふむ。」

「じゃあ、その神を探そう。」

サルと栄次は同時に窓の外に映る月を眺めた。



翌朝……と言っていいのか。

とりあえずアヤはくしゃみで目を覚ました。


アヤは毛布にくるまりサキが寝ているベッドの横で眠ったのだが色々と不満はあった。


まず、目の前で快適そうに寝ているサキを引きずり下ろしたくなった。

というのと、サルは丸まって机の上で眠ったため邪魔にはならなかったが問題は栄次とプラズマが邪魔だったことだ。


彼らは成人男性故、身長は高く場所をとる。

栄次は座って寝てもらったがプラズマは座って寝る事はできないというのでアヤと直角になって寝ている。


つまり、アヤの足先にはプラズマの頭がある。気になって寝返りも打てなかった。

いっそのこと踏んでやろうかと思ったが自分はおしとやかだと思い直しやめた。


「なんで私の家なのにこんなに窮屈なのよ……。」


アヤはぶつぶつ言いながらカーテンを開ける。何時間たったかわからないが外はまだ月が出ている。アヤが動いた気配で過去神、栄次が目を覚ました。


「外は相変わらず夜のままか。太陽と月が動かないかぎり時間は止まったままだな。」


「いいえ。時間は動いているわ。雰囲気が止まっているだけよ。太陽が出ると朝の雰囲気になるでしょ?サラリーマンや学生が慌ただしく走り去る朝の雰囲気……。その雰囲気が夜のままなだけ。」

「そうか。」

「そうよ。」


アヤと栄次の会話でプラズマとサルが起きた。サキはまだ寝ている。


アヤはサキの掛布団を剥いだ。

まだ起きない。

だらしなく寝ている。


それをみて栄次は眉を寄せた。

江戸時代の侍にはこのだらしない女が許せなかったらしい。


立ち上がると刀を抜き、サキの顔のすぐ横を勢いよく刺した。


「ちょっ!私のベッド……。」

「うおわああ!」


アヤとサキが叫ぶのが同時だった。

アヤは刀が突き立ったベッドを蒼白の顔で見つめ、同時にサキもベッドに突き立った刀を驚愕の表情で見つめている。

挿絵(By みてみん)

「なななな……なんつー起こし方すんのさ!あっぶないなあ!」

「だらしない!まったくだらしない!」


栄次はこちらを睨みつけているサキを上から睨みつけた。

刀を引き抜き無言で鞘に納める。


「まあまあ。やわらかい世界になったって事だよ!あの時代よりもね。」

となりでプラズマが栄次を必死で止めていた。


「えーと……ところで外は相変わらずでござるな……。」

サルが話題の転換をしようと外を指差す。


「そうね。外の話はもういいわ。さっさと歴史の神を探しましょう。もううんざり。」

アヤはプンプン怒りながら立ち上がった。



 アヤ達は暗い中、外に出た。

 サルは元のサルになり、太陽神と連絡を取ろうとしているが音信は不通だ。


 「だが……やはりここは違和感でござるな……。」


 アヤ達は昨日来たコンビニの前にいた。

 天狗はもういない。コンビニは昨日と変わらずひっそりとあった。


 「じゃあここから調べていこう。」

プラズマはアヤ達を促し、コンビニに足を踏み入れた。


アヤも中に入る。

明るい店内だが客の姿はない。


よく見ると店員もいない。何もないひっそりとした空間だった。


「昨日までは普通のコンビニだったのにいつから……ここのコンビニはおかしくなっ……。」

アヤがそこまで言いかけた時、店内の空間がぐにゃりと曲がったような気がした。横で栄次が刀の柄に手を当てる音がした。


気のせいではない。

栄次のさらに横でプラズマが固唾を飲む音も聞こえる。


……やばい……


アヤは咄嗟にそう思った。なんだかわからない不安にかられた。サルとサキもおかしいとは感じているが時神達ほどではなさそうだ。


ここに足を踏み入れてしまった事で……時間に関係する何かを大きく崩してしまったような気がする……


「はっ!」

アヤはそこで我に返った。


そ、そうだ!……じ、時間は?時計は?


なぜだか時計を確認しなければ不安で押しつぶされそうだった。


「サル!サキ!誰でもいいから時計を……時間を確認して!」

「……!?わ、わかったでござる!」


サルは慌ててつけていた腕時計を見る。

サルは着物でいままで見えなかったがなかなか高級な時計をしていた。


「何?なんなわけ?あたし眠いんだけど。」

サキはうとうととしている。

アヤはサキをチョップして起こし、サルに時間の確認を急がせる。


「……。時間が……完全に止まっているのでござる……。」

サルは顔を青くした。


「そんな……なんで今更……。」

焦っているアヤの横で栄次が口を開いた。


「……楔だ。楔がはずれたんだ。」

「楔?」


「本来、俺達時神は会ってはいけない。

過去、現代、未来の時間が混ざり合ってしまうからだ。


そしてそれが混ざり合う事で虚無の空間ができる。

過去でも未来でもなく、もちろん今でもないそんな空間ができてしまう。」


「ああ、それはそうだね。確かに本来は会わないもんなあ。で、楔って何?」


プラズマは目を忙しなく動かしながら栄次の言葉の続きを待つ。

彼もかなり動揺している。


「今出ているこの空間は過去でも今でも未来でもない。俺達が会った段階でこの空間が出てもおかしくないのだがなぜ今頃になってこんな事になったのか。」

栄次の言葉にアヤはハッとした。


「……誰かがこのコンビニを楔として作り、この空間が出ないようにしていたって事?」

「じゃないのか?」

挿絵(By みてみん)

「このコンビニに時神三人が入ってしまった事によって楔が壊れちゃったのか。」

プラズマも頭をひねりながら考えている。


「えー……そうなると、夜の空間を作った者とこのコンビニを楔にした者は別者って事でござるな?


夜にした者は時神をこの夜の空間に集めたかった……。

その野望を知っていた者が阻止しようとコンビニを改造した……でござるか?」


サルは眉間にしわを寄せながら唸る。


「いや、俺にはそうは見えないね。夜にしたやつとコンビニを改造したやつ、どっちも同じやつなんじゃないか?」

プラズマの発言でアヤ達はさらに頭を抱えた。


「何のために?時間止めたかったんじゃないの?コンビニ改造したら私達が集まっても時間が止まらないじゃない。」


「なんか夜にしなきゃなんない理由があって、時空のゆがみをいち早く感知するだろう俺達がこの時代に来ることを想定してコンビニを改造した……とか。」


プラズマは未来神であるため、時たまある一つの未来が横切る事があるらしい。

何かを見たのかもしれない発言だった。


「じゃあ、犯人は時神をここに集めたかったわけじゃないのね。夜のままにしておくと時神が来てしまうだろうと判断した。その防御策でこの空間が出ないようにコンビニを……。」

アヤはプラズマを仰いだ。プラズマは頭をかきながら唸っていた。


「なーんか難しい話でよくわかんないけど帰って寝ていいかい?」

サキはのほほんとした顔で焦っているアヤ達を見ている。


「帰るってどこによ……。」


周りは混沌としており、コンビニの面影はなく、ただ真っ暗な空間だけが果てしなく広がっていた。


この空間が過去、現代、未来が入り混じった世界なのだ。

宇宙と似ているかもしれない。


宇宙は過去であり、現在であり、未来である。

宇宙を調べる技術、光や空間の研究が進めば人間だって未来に行けるかもしれない。


そんな希望を抱き、現在の地球から過去の星々を眺める。

可能性を秘めた宇宙……。それに似ているがここは違う。この空間は絶望的だ。希望ではない。


「おい、これからどうするんだ?」

栄次が誰にともなく聞く。皆黙り込んでしまった。


「とりあえずここは三人くらいずつに分かれて出口を探したほうがいいんじゃないか?」

「まあ、ここにいるわけにもいかないしね。」

プラズマとアヤは頭を抱える。


「じゃあ、時神殿はあちらの方を散策してほしいでござる。小生とサキ殿はこっちを……。」

サルははじめに指差した方と真逆を指差した。


「それよりなんで時神三人セットなのよ?」

「この空間が出た以上は時神をばらすのが怖いのでござるよ。時神は本来三人で一人。分けるべきではござらん。」

アヤの言葉にサルは目を細めた。


「まあ、いいわ。とりあえず行きましょう。」

アヤは目で促し、プラズマと栄次は深く頷いた。


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