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流れ時…2タイム・サン・ガールズ2

「んー……ふかふかの布団……はあ……お腹すいたなあ……。」

しばらくしてベッドから声が聞こえた。


「やっと起きたのね。何時だと思ってんのよ。七時よ。」

アヤは真っ暗になった外を眺めながら話しかける。


「うーん……ちゃんと起きられたぁ……むぅ。」

サキはごろんと寝返りを打つ。


「起きれてないわ……。」

「それより……ここはどこ?あたし家で寝てたような……ん?なんか忘れているような……まあ、いいか。」

サキは目をつぶったままつぶやいた。


「なんで見ず知らずの所で寝てて驚かないの?」

「うわっ!なんだこの部屋!」

サキは急に驚いて起き上った。


「その反応が遅いわよ……。」

「てか、誰?」

遅い質問にアヤは頭をかかえた。


「私は時神アヤ。人間の時間を守るのが仕事よ。」

「え?今なんつった?ごめんごめん。何言ってんのかわかんなかった。」

サキは再び横になるとアヤを見つめた。


「もういいわ……。名前はアヤ。とにかくあなた、神様になっちゃったみたいなの。なんの神様だかわかる?」


「ああ、思い出した。さっき、謎の電波さんがよくわからんこと言ってたなあ。とりあえずお腹すいたんだけどなんかある?」


「なんかってコンビニいけばおにぎりくらいはあるんじゃない?」

「うん。じゃあ、鮭で。」

また寝に入ろうとしていたサキをアヤはチョップで起こす。


「あんたね、人んちでくつろいでベッドまで占領して私におにぎり買いにいかせるわけ?ずうずうしいわ。」


「うう……。痛いなあ。わかったよ。ごめん。とりあえずよくわからんがごはん食べてからにしよう。ね?そうしよう!」

「呑気だわ……。」


アヤはけだるそうに立つサキを連れコンビニへ向かうべく部屋を出た。

外は寒かった。雪が降っている。


「もうすっかり冬ね。」

「ん?」

アヤの発言にサキは頭を捻った。


「何よ?」

「冬?そんなだっけ?なんか暑かったような……。」

「あんた、そんな格好して寒いでしょ?なんでそんな格好してんのよ。」


サキは上下薄手のジャージだ。確かに寒い。反対にアヤはセーターにマフラーにと防寒対策万端だ。ちなみにまわりを見ると歩いている人は皆、暖かい格好をして歩いている。

挿絵(By みてみん)


「いやあ、だってさっきまで……。ん?コンビニあった。」

「あら?コンビニこんなところにあったかしら?」


今度はアヤが頭を捻った。コンビニはもっと先だったような気がする。

ひょこひょことだるそうにサキが入って行ってしまったのでアヤは後を追った。

アヤがコンビニの中に入るとサキがふくれっ面でアヤを見てきた。


「何よ?」

「別にいいけどさあ、あの店員からいらっしゃいませって言われなかった。」

「そんなんでふくれているわけ?常識のない人もいるわ。さっさとおにぎり買いましょう?」


アヤはおにぎりが売っているコーナーまで歩いて行き、鮭と昆布のおにぎりを手に取った。


「これも食べよう。」

サキはアヤにジャムパンやチョコパンなどを渡す。


「こんなに買うわけ?あなた、お金出してくれないんでしょ?」

「んー……おっ!十円ポッケに入ってた!……はい。」


サキはポケットに入っていた十円を嬉しそうにアヤに渡す。


「十円て……。」


アヤはため息をついたがサキは悪気があってやっているわけではない。本当にそれしか持っていなかった。十円だが全財産と呼べるものを先程会ったばかりのアヤに渡せるとは彼女は無邪気なのかなんなのか。


「十円はあなたが持ってなさいよ。私が払ってあげるわ。」

「おお!ほんと?じゃあ……」

「買えてもおにぎりもう一個だからね。」

「うう……じゃあ、鮭もう一個。」


アヤに釘を刺されサキはしぶしぶ沢山持っていたおにぎりを元の場所に返した。

アヤはおにぎりを持ってレジまで行った。となりにはおいしそうなおでんが煮えている。


「おでんだ。食べたいなあ……。」

「それ言うと思ったわ。でもお金がないからその……すくう器とか戻して。」

「うう……そうかあ。」


サキはもっていたおでん用の発泡スチロールの器を戻した。


「あ、あのぅ……。」

店員さんがひかえめに声を出してきた。


「ああ、会計ね。」

「は、はい。」

店員さんは怯えた目をアヤに向けている。


……何かしら?


アヤはサキを見る。サキは別に変な行動はとっていない。


……ああ、そうか!


神様は通常人間には見えない。時神は特殊で人と共に生活するため人間には見える。

だがサキはなんの神だかわからないが神になってしまったので人間には見えなくなってしまった。店員さんは勝手に消えた器やアヤの行動で顔を青くしてしまったに違いない。神が持ったモノも通常、人には見えなくなる。


アヤは慌ててお金を払うとサキを連れてコンビニを出た。


「なんで焦っているんだい?」

「私は迂闊だったわ。あなた、もう神なのよね。」


「え?何が?」

「あなたは人の話を何も聞いていないの?」


道を歩きながらおにぎりを食べ始めたサキにアヤはため息をついた。


「ごめん。あはは。」

「いい?あなたは神でもう人間には見えないの。店員さんが挨拶してくれなかったのはあなたが見えていなかっただけ。」

「はい?」


サキがあいまいに返答した時、アヤが前方を向いたまま立ち止った。


「ん?どうしたのさ。」

サキもアヤに目線を映す。


アヤ達の前には天狗がいた。天狗といっても天狗の格好をしているだけだ。顔は天狗の面で隠している。体つきからして男だ。


「今日はやたらとあっち系の人に会うなあ……。」

「あなたは猿田彦神さるだひこのかみ?」

アヤが天狗に話しかける。


「……の系列である。導きの神である。君らの道を正しにきたのである。」

挿絵(By みてみん)

「道?」

「そこの黒髪の女、元凶の正体であるな。」

天狗はもっていた棒を構えると突っ込んできた。


「うわああ!何?」

危険な予感がしたアヤはサキの手を引いて走り出した。


「逃げるのよ!」

「な、なんで?」

「わかんないけど!」


アヤ達は走った。どこに向かっているかはわからない。


「しょうがない。ちょっとやるわ。」

アヤは手から鎖を飛ばした。鎖は天狗に巻きつくとすぐ消えた。鎖が消えたとたん、天狗は動かなくなった。


「な、なんだい?あれは。」

「時間停止。長くはもたないわ。」

「ふえー。何この世界。夢?」


二人は再び走り出した。刹那、後ろから突風が吹き、何かがアヤ達の前を塞いだ。


「おっと待つのでござる。」


アヤ達の前に立ちふさがったのは天狗ではなく別の男だ。男は緋色の着物を着ており、茶髪だが髷を結っている。目はやたら横に細く、見えているのか謎だ。


「……?」


「あららら、お嬢さん達、ずいぶん思い切った事したでござるな。太陽を隠すなんてなあ。」

「は……?」

男の言葉に二人はぽかんと口を開けた。


「私達は何にもしてないわ。太陽を隠す?」

「お兄さんは誰?あたし、なんか神になったみたいなんだけどなんでか知ってる?」

二人の反応を見て男は頭を捻った。

挿絵(By みてみん)


「やっぱり、太陽を隠すなんてできっこないでござる。時神となんかの神が。あ、小生はサル。日の神の使いサルでござる。」

「サル……。」

「時神、この雪を見てなんとも思わないのでござるか?」

「雪?冬なんだから雪くらいふるんじゃないかしら?」

アヤの返答にサルは頭を抱えた。


「変だと思わないと……。時神もだますとは……いよいよ時のゆがみが本格的になってきたという事でござるな。」


「時のゆがみ?」


「ま、今は逃げるのが先決でござる。天狗殿は道をまっすぐに戻す作業でとりあえず動いているだけだから気にしなくていいのでござる。」


サルはさっさと歩き出した。アヤ達もなんとなくそれに従う。


……そういえば……たしかにおかしい……コンビニまで十五分以上は歩いたし、それに……

今は初夏だ……そう初夏!


アヤは頭を抑える。


「なんで気がつかなかったの……?」

「時のゆがみがここだけひどいからでござる。感知できないくらいゆがんでおり神も含め、皆これが普通だと思っておるのでござる。」

「まあ、あたしはなんで雪降ってんだよって思ったけど。」


サキの言葉にアヤは驚いた。


「あなたは知っていたの?」

「知ってるも何も変だなあって。」


サキはぽりぽりと頭をかく。


「時のゆがみがひどいせいで天候もめちゃくちゃでござる。そして今は朝の七時半。なのにこの暗闇でござる。」

「え?……夜じゃないの?」

「夜ではござらんよ。本来は。太陽が月のまんまなだけでござる。」


アヤは慌てて空を仰ぐ。雲が多くて月も確認できないがあきらかに太陽はない。


「何よ……これ……。私知らないわよ……。知らない。」

アヤは狼狽していた。まったくと言っていいほど身に覚えがなかった。


「知らないのはわかっておるのでござる。日の神々は混乱状態でござる。時間も止まっておる。」


「サキ、あなた、なんか知っている事ないの?」

「え?何の話してたのか聞いてなかった。ごめん。」

「なんで聞いてないのよ!」

「なんかアニメの話かと思ったからさー。あたし、アニメわかんないし。」

「なんであなたはこの状況を電波だと思えるのよ!」


アヤの睨みが怖かったのかサキはしゅんと肩をすくめる。

「うむ……一人緊張感がないでござるな。」

「……そう?」

サキは眠そうに答えた。


気がつくとアヤが住むマンションの前にいた。



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