かわたれ時…最終話時間と太陽の少女〜タイム・サン・ガールズ19
アヤ達はエスカレーターを上がり、サキの母を探す。アヤの感覚ではサキの母は上の階にいるようだった。気持ちが焦り、三人はエスカレーターを走り抜ける。
「待ちなよ。」
しかし、アヤ達の歩みはこの一言で止まった。
「サキ!」
エスカレーターを登った先に少女のサキが立っていた。少女サキはただならぬ気配を出している。
「ごめん。こっから先は行かせらんないんだ。」
無表情のサキをアヤはまっすぐ見つめた。
「あなた、邪魔をするの?どうして?あの時助けてくれたじゃない。お母さんを止めるんでしょ?」
「止めたいよ。だけどね、殺させはしない。たとえお母さんがあたしに振り向かなくてもあたしはお母さんの娘でいたいんだ。」
※※
「大丈夫かの?」
ヒメはサルを治療していた。と言ってもサルの歴史を戻す作業だ。
「うう……痛いでござるなあ……。」
「もう元気じゃろうが。」
サルはもうぴんぴんしている。怪我もさっぱりなくなった。まわりの太陽神達は戸惑いと後悔で皆沈んでいた。
「あれでござる……。Repentance comes too lateでござる。リペンタンス カムズ トウ レイト、後悔先に立たず。」
サルはヒメに目を向ける。
「まだ後悔するのは早いのじゃ!ワシが来た事によっておぬしらは間違いを犯さず済んだ。これからは後悔を引きずるのではなく時神に何かないように全力で守るのじゃ!つまり予防策を考えろということじゃよ。」
ヒメはサルだけでなくすべての太陽神、猿を見回した。
「……そうでござる。まだ終わってはいない!小生は時神を助けにいくのでござる!
Prevention is better than cureでござるな!プリベンション ベター ザン キュアー!転ばぬ先の杖!」
「なんかちょっと違う気もするのじゃが……。そしていちいちうるさいのじゃ。わかったから早く行くがよいぞ。」
ヒメの言葉で急に元気を取り戻したサルは慌ててバタバタと太陽神達を押しのけて走り去って行った。実に単純な男だ。
「おぬしらもあのサルを見習ってなんか行動を起こしてみたらどうじゃ?のう?」
ヒメは太陽神達に笑顔を向けた。太陽神達の顔に光が戻った。
「その通りだ!まだ終わっていない!全力で時神をサポートするぞ!」
太陽神は急に気合の入った顔で立ち上がると猿達に指示を始めた。
「うむ!神助けじゃ!良い事をしたぞい!ワシは良い事をしたのじゃ!」
ヒメは叫ぶと神力をまき散らし、サキとみー君に居場所を伝えた。
ヒメは太陽神と時神に事態を説明すると言った。つまりサキとみー君はこの部屋付近を通ってサキの母を追うのではなく、まったく別の方向から母を追わなければならないという事だ。
サキとみー君が参の世界の太陽神に会うのはまずいからだ。
「お、おい!もしかしてお前は剣王の……。」
「ん?なんじゃ?」
「い、いや、なんでもない。」
太陽神は何か言いかけたが口をつぐむと作業にとりかかった。太陽神達はうすうすヒメが剣王の側近だという事に気がついたらしい。
……サキ達にうまく伝わればいいのじゃが。
ヒメは太陽神達を一カ所に集めるべく色々と奮闘した。




