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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
二部「かわたれ時…」太陽神と厄神の話
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かわたれ時…最終話時間と太陽の少女〜タイム・サン・ガールズ2

 次の日、サキは高天原西の剣王の城で行われる会議に出席した。


剣王の城は立派な天守閣で城門から何から質素だったが品があり、なかなか重みのある雰囲気だった。


古い木の階段を登っていき、会議が行われる最上階の部屋へサキは向かった。サキは緊張した面持ちで最上階まで行き、墨で鳥の絵が描かれている大きな襖をゆっくりと開ける。


輝照姫こうしょうき遅いYO……。」


最初に話しかけてきたのはワイズだった。ワイズは東の権力者であり、かなり奇抜な格好をしている。カラフルな帽子にサングラス、下は紅い着物だ。見た目は少女だがかなりの年月を生きている神である。


「輝照姫、私のとなりが空いている。座るとよい。」


次に声をかけてきたのは今やテーマパークとなっている竜宮のオーナー、天津彦根神だ。


緑の美しい長髪と切れ長のオレンジ色の瞳をしており、整った凛々しい顔立ちをしている。頭には龍のツノが生えており、紫色の袖なしの着物を纏っていた。


オーナー天津は高級感あふれる長机にワイズと向かい合う形で座っている。サキは天津の横の開いている場所に座り込んだ。


敷いてある座布団の座り心地がよい。部屋はかなり広く、下に敷かれている畳も新品のようにきれいだった。


「やっと来たわね。ずいぶんと遅いじゃない!サキ!」


天津の隣に座っていた少女、月照明神姉妹の妹月子が偉そうに胸を張る。月子は幼い少女のような風貌でかなりきつめのメイクをしていた。


ピンク色の髪をツインテールで結び、カラフルなリボンをつけている。気の強そうな女である。ちなみに見た所、姉の方はいないようだ。


天津は月子をため息交じりに見つめると黙り込んだ。


「これで全員そろったねぇ。」


ワイズの隣に座っていた男、剣王が呑気に声を上げた。剣王は邪馬台国から出て来たような格好をしており、鋭い目をしているが普段は真剣な顔をする事は少ない。風貌からするとこの面々の中では一番歳上に見える。


「おい、冷林しっかりしろYO!」


ワイズが隣でぐったりしている青い人型クッキーのような生き物をつつく。見た目、ぬいぐるみのようだが顔と思われる部分は渦巻きがペイントされており、目鼻はない。


性別もわからないこのぬいぐるみは北の権力者、縁の神、冷林である。冷林はぐったりとしており、あまり動かない。


「冷林は秋頃にあった事件の処理でいまだに動けていないのか。君にあの厄の処理はかなり重荷だっただろうにねぇ……。」


剣王が冷林をため息交じりに見つめた。冷林は反応を示さなかった。


「今回の件はあたしの事だろう?剣王。」


サキは力なくつぶやいた。ついこの間、剣王が処刑するはずだった罪神をサキが救ってしまった。その罪神は剣王の部下だったため、勝手に罪神を助けたサキを剣王はよく思っていなかった。


その件でサキはこの会議にかけられたと思い、そう発言したのだ。


「いや、違うよ。はやとちりはよくないねぇ……。」

しかし、剣王は笑みを浮かべたまま、サキの言葉を否定した。


「輝照姫、何か剣王ともめたのか?」


天津は何も知らないのか不思議そうな顔をサキに向けた。サキは咄嗟に剣王を仰ぐ。


剣王はサキに鋭い視線を飛ばし、『話すな』と訴えていた。今のサキは剣王に頭が上がらない状況だ。しかたなくサキは天津に言葉を返した。


「何でもないよ。」

「……。」

天津は訝しげにサキを見ていたがそれ以上何も聞いてこなかった。


「今日集まってもらったのは輝照姫がため込んでいる厄の事だ。彼女の中になぜかある厄の根本をそれがしは解明しようと思ってねぇ。君達もそれに気がついて何か活動してないかと思ってねぇ。」


剣王は緑茶を飲みながら一同を見回す。


「ここ一年間で多発した厄の事件はすべて『思い通りにならない気持ち』が負の感情となり厄に変わったものだったYO。そしてそれを解決したのは全部、輝照姫。


まあ、それはいいが、私の側近の天御柱が輝照姫にも同じ厄がついていてそれが解決するたびにその分の厄が彼女に取り込まれているって言っているんだYO。」


ワイズはすかさず声を上げた。


「待っておくれよ。あたしは何にも知らないんだよ。」

サキは慌ててワイズに目を向ける。


「待て。私はアマテラスの息子だが太陽神は厄を振りまいたりする事はできん。」

天津は一同を鋭いオレンジ色の瞳で睨む。


「そんな事はわかってるわ。なんだかわかんないけど呪い的なものがサキにかかってんじゃないの?」

月子は面倒くさそうに言葉を発した。


「君だって色々厄を月にため込んでいたのにそんなてきとうに流すのかい?」


剣王がケラケラと笑いながら冷たい瞳で月子を見る。月子は顔をしかめ、そっぽを向いた。頬から汗が伝っている。彼女もこの会議に緊張感を持ち出席しているらしい。


月子は以前、月を傾かせる大きな事件を起こし、剣王とサキに救われた。姉が一緒の時は強気な月子も一人では剣王に頭が上がらない。


「その件なんだけどさ!」

サキが突然、机を叩き、権力者達の視線を集めた。


「なんだYO。輝照姫。」

ワイズがどこか必死なサキを呆れた顔で見つめる。


「あたしは自分の厄の目星がついている。だから協力してほしいんだ。」

サキの言葉に一同は驚きの声を上げた。


「もちろん、タダとは言わない。いままであんた達からもらった援助を全部返すよ。」

サキの言葉に権力者達は黙り込んだ。


「協力とは私達に何をさせるつもりだ。輝照姫。内容によるぞ。」

天津は顔を曇らせながらも話を聞く体勢になった。サキは頷くと緊張した顔で話しはじめた。


「あたしを参の世界に連れて行ってほしい。」

「なんだと!」

天津が柄にもなく声を上げた。ワイズ、剣王は呆れた顔を向け、月子は首を傾げている。


参の世界とは過去の世界の事だ。


この世界は壱から陸まで世界が別れており、現世を壱として弐が霊魂の世界、参が過去の世界、肆が未来の世界、陸は壱と昼夜が逆転しているだけで壱と変わらない世界。伍は解明されていない。


サキは過去である参の世界に行くための協力を頼み込むためにこの会議に出て来た。剣王があの件で自分を咎めるかもしれないとも思ったが特に何も言ってこなかったのでサキは堂々と発言をする事ができた。


「参っていうと過去の世だNE?あー、無理無理。ふつーは時は渡れないYO。」

ワイズはサキを馬鹿にするように笑った。


「なんかそれなりの考えがないとそれがしは動かないよ。無駄足を踏みたくないんでねぇ。」


剣王は頬杖をつきながら乗り気ではなさそうにつぶやいた。


「ワイズはあたしにみー君を貸してほしい。剣王は歴史神のヒメちゃんを貸してほしい。冷林は時神のアヤを貸してほしい。そんで天津は竜宮を使って参を出現させてほしい……。」


サキは頭を下げる勢いのまま、早口でまくしたてた。


「むぅ……。竜宮は確かに参の世界に食い込んでいるとは言われているが、竜宮を使うのは大罪だ。私の事も考えてくれ。この間竜宮を動かした罪で龍神二神を罰したばかりだぞ。」


天津は眉間にしわを寄せながら低く唸った。


「えー、ヒメちゃんを貸してほしいって?ちょっとキツイお願いだなあ。」

剣王は頭をかきながら苦笑を向けた。


「天御柱を貸すのは別にいいがあまり頼りにしないでほしいYO。あれはもともと東の仲間なんだからNE。」

ワイズもあまり乗り気ではないようだ。


「で?私は関係ないわけね?」

月子がため息をつきながらサキに目を向ける。


「うん。月は関係ないからねぇ。」

「あ、そう。」

月子は何か言われるかと構えていたがサキに軽く流されたので不機嫌そうに緑茶を飲みほした。


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