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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
二部「かわたれ時…」人形に宿った武神の話
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かわたれ時…4人形と異形の剣16

 「そうかあ。ん?お前達は祭りを楽しみに来たのはわかるが神力の提示をしたらどうだ?」


 男、剣王は不気味に笑いながらサキ達の前に現れた。サキとみー君は何とかならないかとあたりを見回す。あたりは行燈が沢山置いてあり、窓がない。


 ……窓がねぇ……。この階は行燈の明かりで明るくしているのか……。

 ……しかたねぇ!……やるぜ。


 「逃げるぞ。」

 みー君がサキに向かいそっとつぶやいた。刹那、風があたりを覆い、すべての行燈を薙ぎ倒した。灯りはすべて消え、あたりは真っ暗になった。


 フロアにいた神々は混乱の声を上げ、ガヤガヤとやかましく騒ぎ出した。


 みー君は高速で逃げるべく、手を広げ、自身の着物に戻った。そのままサキを抱え、覚えている道順で外を目指した。


 「ふぅん……。今の一瞬の神力、天御柱か?まあ、とりあえず曲者だねぇ。全員抜刀!」


 剣王の掛け声でまわりにいた武神達が一斉に武器を構えた。武神達は真っ暗で目が見えないはずだがまるでみー君達が見えているかのように襲ってきた。


 ……っち、なんで俺達が見えてやがるんだ?


 みー君は出口にたどり着くことができず、どこからともなく襲ってくる武神達の攻撃をかわす事で精一杯だった。


みー君自身、着物に戻ったのでわずかに神力を漂わせているだけに留めているがこれ以上、派手な事をすると完璧に気がつかれる可能性がある。


 むしろ、先程の、風を起こす能力と着物に戻った時に出るわずかな神力でもう剣王には気がつかれているはずだ。


 ……こいつらは気力とわずかにする神力をかぎわけて目に頼らずに俺達を見つけ出しているのか。


 サキは神力を消したまま、みー君に抱えられている。ここでサキまで力を漂わせてしまったら後で追及された時、言い逃れができなくなるからだ。


 ……おそらくタケミカヅチはここで武器を抜かない。あいつが軽く武器を動かしたら、この城が吹き飛ぶからな。だから奴は弐の世界で罪神を処罰するんだ。弐の世界だとぶっ壊しても元に戻せるからな……。


 「……っ!」

 みー君が風の音だけで武器を避けているとひときわ大きな風の音が聞こえた。みー君は咄嗟に避けたが腕を何かがかすめて行ったようだ。痛みと生温かいものが着物を濡らす。


 ……なんだかよくわからねぇが斬られた?


 真っ暗なのでよくわからない。


 「……みー君、大丈夫かい?今、斬られただろう?」

 サキが声を小さくしてみー君に言葉を投げかけた。


 「……大丈夫だが……出口がわからなくなった……。」


 みー君も声を落として話しかける。今、このフロアにどれだけの武神がいるのかよくわからなかった。皆、感情の高ぶりもなく、静かだ。気も感じない。まるでそこに誰もいないかのようだ。


 「武神は気のコントロールと神力のコントロールが完璧にできているんだねぇ……。気配を感じない……。」

 「サキ、出口はどちらかわかるか?」

 みー君は風の音だけで襲ってくる武神達をかわしながらつぶやく。


 「わかる。右に行ってまっすぐ。そうしたら階段だよ。さっきから道順をしっかり見ていたんだ。」


 「そうか。助かるぜ。」

 みー君はサキの誘導通り駆け抜けた。みー君は風なのでかなり速いはずなのだがそれをさらに凌駕した武神達が高速でみー君を襲う。


 「くそっ!またあれだ!」

 先程と同様、またも強い風がみー君の横をすり抜けた。今度はみー君の肩から血が飛び散る。


 ……なんなんだよ……。これを放っている奴は!他の武神よりも遥かに強い。


 「みー君、右!」

 「おう。」


 サキの誘導通りみー君は右に曲がる。サキは暗闇で目が見えているかのように正確に距離を掴んでいた。太陽神は暗闇の中から一縷の光りを見つけ出すのが得意だ。サキは無意識のうちにこの能力を使っていた。


 みー君はサキの誘導に従い、階段を駆け下り、外に飛び出した。突然、眩しい光が目に入ったがみー君は怯む事なく走る。

外に出てからもみー君は高速で移動する。おそらくこのあたりにいる神にはみー君は映っていない。


……たしかサキが鶴を待機させていた。そこまで戻れば……。


「んおっ!」

みー君が先程通った林を走っている最中、またも強い風がみー君の側を駆け抜けた。


……くそっ!なんなんだ!避けられねぇ。


今度の風はみー君の太ももあたりをかすって行った。


ゴオオッと風が吹いた刹那、みー君の視界に平次郎が映った。平次郎は手に持っていたつまようじを思い切り振りきる。


「まじかよ!」

先程感じた風の感覚がすぐ横でした。みー君は身体を後ろに退き、風をやり過ごした。やり過ごしたと同時にすぐ後ろの木が真二つに斬れて崩れた。


「……!」


……こいつか。こいつがさっきの避けられないカマイタチを……。


……あのちいせぇ身体とあのつまようじでなんでこんな威力が……。


……よく考えたら、足元にいたはずのあいつが跳躍して俺達が座っている長椅子まで飛んできたんだ……。こいつ……身体能力が異常なんだ……。


「くそ!だとしても風であるはずの俺についてこれんのかよ!」

「みー君!そろそろ鶴がいる場所だよ!」

「ああ!」

 みー君は余裕なく言葉を返した。


「あの人形、生け捕りにできるかい?」

「できねぇ!」

視界の端に映る平次郎の行動を読みながらみー君は鶴の元まで走る。正直、避けて走る事しかできなかった。


そのカマイタチは飛ぶ毎にまわりの木々を刻んでいく。

みー君は頭を垂れて待機している鶴に聞こえるように叫んだ。


「今すぐ飛べぇ!」


みー君の言葉に反応した鶴は命令通りすぐに飛び上がった。みー君は平次郎が放つカマイタチを危なげにかわし、飛び上がった鶴のカゴ目がけて高く飛んだ。サキを抱いたまま、駕籠に滑り込むように乗り込んだ。


「全速力で行け!」

「よよい!」


鶴は状況がまったく読めていなかったが呑気に返事をし、高速で動き始めた。頭で考えるよりも先に行動するのは命令を忠実に守る鶴ならではの行動だ。


平次郎は飛び上がる駕籠を見上げてはいたが深追いはしてこなかった。


「あー……死ぬかと思ったぜ……。クソ……あの人形、とたんに俺達を襲ってきやがった。やっぱ契約中は剣王の命に従うんだな。」

みー君が一息ついて頭を抱えた。体中冷や汗まみれだった。


「みー君、ごめんよ。なんだか何にも収穫がなかったねぇ……。けっこう危険だった。みー君がいなかったら危なかった……。でも……みー君はバレちゃったんじゃないかい?」

サキが手を横に広げ霊的着物に戻る。顔はかなり沈んでいた。


 「ま、まあ、俺は何とでもなる。だがお前はならない。お前が最後まで神力を隠し続けてくれたおかげで俺とお前の接点は証明できない。おまけにあの暗闇、俺も神力を最小限に抑えた。


気がつかれていても『あのフロアにいた』という事しか証明できない。つまり、祭りにたまたまいただけだと言えばいい。まあ、後でワイズから何言われるかわかんねぇがとりあえずそれで収まる。」


 みー君はまだ周囲を警戒していた。


 「あそこで剣王が現れた事が誤算だったねぇ……。」

 「ああ。ほんと、接触が一瞬で済んで良かった。」

 サキが何とも言えない顔でみー君を仰ぎ、みー君も深くため息をついた。


 「鶴、念のため、迂回して太陽に戻っておくれ。」

 「よよい!」

 サキの言葉に鶴は元気に返事をすると飛ぶ速さを少し遅くし慎重に進み始めた。


 サキとみー君は危険な橋を渡ってしまった緊張感が抜けておらず、ただ黙り込むしかできなかった。


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