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流れ時…1ロスト・クロッカー16

※※

ジジ……ジジ……

再びノイズが入る……。

「反対の世界」の映像がぼんやりと赤髪の少女の目に映る……。

これは……アヤさんの部屋ですね……。


「あれは流史記姫神(りゅうしきひめのかみ)だ……。さっきの野次馬の中にいたあの子達だ……。僕を追って来たんだ!」


 「え……?神?……神って……どっかで……。」

 「アヤ、君を巻き込んじゃう形になるけどここから逃げよう!」

 こばるとはアヤの手を引くと立ち上がった。


 「え?ちょっと!なんだかわからないわ!に、逃げようって……どこへ?私、関係ないわよね?」


 アヤは怯えた表情でこばるとを見つめていた。玄関先のチャイムがもう一度鳴った。


 「……よし。この時計でいいや。」

 こばるとは一番新しそうな時計を掴むと大きく頷いた。

 「ちょっと何するのよ!その時計は昨日買った新品なのよ!」

 「僕達はこれからこの時計を使って昨日へ行く。」

 こばるとの発言にアヤは半笑いで首を傾げた。

 「あなた……頭……大丈夫?何?昨日へ行くって……。」

 「僕はいたって正常だよ。……僕は時神なんだ。時を渡れるんだよ……。そして君も時を渡れる。」


 こばるとは軽くほほ笑むとアヤの手を強く握り、新品の時計にもう片方の手をかざした。時計は突然輝きだしアヤとこばるとを光で包んだ。


……なるほど……。

こちらはこう来ますか……。

赤髪の少女はそっと目を閉じ「反対の世界」の「歴史」を閉じた。


※※


プラズマと栄次は提灯片手に女と現代神を追って暗い夜道を走っていた。


「いない!どこへ行った?」

「栄次、本当にあの女危ないのか?」

焦りながら二人は現代神の気配を探る。


「現代神、あいつはなぜだが知らんがおこうを殺す気だ。お前も数々の修羅場をくぐってきたはずだが殺気を読み取れないのか?」

「さあ?俺には全然わからなかったが。」

「そうか。うらやましいかぎりだな。」


そんな会話をしていると目の前で何か動く気配がした。


「おい、路地裏に入って行ったぞ。」

影は旅籠と旅籠の間の路地に入って行った。

二人も影を追った。


「おとなしくしなよ。」


「あなた……私に何をするおつもりですか?」

「残念だったね。僕は君が求めている男じゃない。僕は君を探していたんだ。」


「あなた何なのですか?」

「僕は時の神。君は僕よりも力を持っている時の神。でも君はまだ覚醒していない。君が覚醒してしまうと僕が消えてしまうんだ。だから……。」

現代神はおこうを後ろから抱きしめると匕首あいくちを取り出し、おこうの白い首にあてる。


「……!」

おこうの顔が恐怖でゆがんだ。

「現代神は僕だけでいいんだ……。」


まずい……!


栄次、プラズマが状況を素早く理解しおこうを助けようと飛び出した時、おこうが悲鳴をあげた。

しんとした夜に女の叫びはよく通る。

現代神は驚いてたじろいだ。


すると近くを探索のためかたまたま歩いていた岡っ引きと思われる男性が叫び声に気づき、路地裏へやってきた。


「っ!」

現代神は苦しそうな顔をするとおこうを突き飛ばして夜の闇へ消えて行った。


「大丈夫か?もう心配ねぇ。女がこんな時間に外をうろつくからこんな事になるんでぇ。で?お兄さん達もさっきのやつと関係があんのかい?」


泣き出したおこうを見ながら岡っ引きは栄次、プラズマに対して探索モードに入っている。


「……いや。叫びが聞こえたから来たまでだ。」

栄次はそっけなく言い放った。


「お兄さん、あんたお武家さんかい?」

「ああ、まあな。おい、行くぞ。」

「え?ああ……。」


栄次が旅籠へ戻り始めてしまったのでプラズマは慌てて追いかけた。

岡っ引きと女は呆然と歩き去る二人を見つめていた。


「アヤはなかなか覚醒しなかったから転生を繰り返していたって事か。つまり彼女はタイムクロッカーだったわけだ。」

プラズマがぼそりとつぶやく。


「あの時代にアヤが生きているって事はおこうもその他転生した人間も皆逃げ切ったって事か。まさか現代神が劣化異種だったなんてな。」

「現代神がロストクロッカーだとすると、今……アヤが危険なんじゃないか?ロストクロッカーは精神上不安定だ。何するかわからない。」

「!」

プラズマの発言で栄次の顔が青くなった。


「まずい!アヤが危ない!」


栄次は旅籠への道を歩いていたが踵を返した。


「おい?どこ行くんだ?」

「この時代の現代神を見つけ、アヤが帰った時間軸へ飛ばしてもらう。」

「それ、成功すると思うか?」

「あいつをだませばなんとかなるかもしれん。」


「……だます……か。……越後屋、おぬしも悪よのぉ。」

プラズマがおどけるように言った言葉に栄次は眉をよせた。

「なんだそれは?」

「ああ……これだから時代の離れたやつと話すの嫌なんだよ。」

プラズマはため息をつくと栄次の肩をポンとたたき、歩き出した。


「……変な男だな。」

栄次は眉をさらに寄せてプラズマの後を追った。



先程の路地に戻ってきた。

なんだか楽しそうに話をしているおこうと岡っ引きが目に入った。

どうやらおこうを口説いていたようだ。


あんな状態だったのに軽いやつらだと栄次、プラズマはあきれた顔を向けた。

おこうと岡っ引きは話を中断し驚いた顔でこちらを振り向いた。


「あれ?さっきかっこよく帰って行ったじゃねぇか。」

「まあ、そうなんだが少し聞いてもよいか?」

「なんでぇ?」

岡っ引きはおこうとの話をさえぎられ少々むっとしていたが顔をもとに戻して聞いた。


「さっきのやつは俺達が泊まった旅籠に客として来ていたんだ。……それで……」

「なんだって?じゃあ、さっそく旅籠を調べるぞ!」


栄次の言葉をさえぎり旅籠へ走り去ろうとした岡っ引きをプラズマが止め、口を開く。


「最後まで栄次の話を聞けよ。こんな状況になった以上、やつがのこのこあの旅籠に戻るか?」

「戻らねぇな。兄ちゃん。」


プラズマに首根っこをつかまれていた岡っ引きは顎に手をあてて考え始めた。


「いいか?俺が聞きたいのは逃げる場所に最適な所だ。この辺で、あまり人の目につかず、一夜を過ごせる場所はどこだ?」


「……なるほどねぇ、兄ちゃん達、頭いいじゃねぇか。そしたらちょっと先にある廃寺が怪しいぜ?俺が案内してやらぁ。なんだかしらねぇが兄ちゃん達は色々関係がありそうだかんな。おい、おこう、旅籠に戻ってゆっくり寝てろ。」


「はいはい。じゃあね、卯之助!」


先程の会話でどこまで親密になったか知らないがおこうは少し走り、振り向いて岡っ引きに向かい大きく手を振った。

そんなおこうを見ながら岡っ引きは照れながらつぶやいた。


「あいつ、俺の女になってくれるってよ。でへへ……。」

おこうに騙されているんじゃないかと思ったが二人は何も言わず岡っ引きを急かして廃寺へと足を進めた。


提灯の明かりを頼りに静かになった内藤新宿を歩く。

しばらく歩くと荒れた草地が現れ、その奥に半倒壊している寺があった。


「ここだぜ。兄ちゃん。」

「かたじけない。すまんが俺達が先に入らせてもらうぞ。お前はここで待っていてくれ。やつと話したい事があるのでな。」

「悪いな。」

二人はそう言うと急に怪しむような顔つきになった岡っ引きを置いて廃寺に足を進めた。


中に入る。

床は所々木が腐っており抜けていてそこから雑草が元気よく伸びている。

天井は雨露を防げるような所はほとんどなく骨組みのみが残っている。

壁はかろうじてあるがもうほとんど建物とは呼べなかった。


火事だな……

二人はそう思った。


「君たち、僕を追ってきたの?」

寺を眺めていると奥の方から急に声が飛んできた。

二人は提灯をかかげた。


「現代神。やはりここにいたのか。」

「……そうだよ……。」


明かりに照らされたのは先ほどと変わらぬ姿で胡坐をかいている現代神だった。


「頼みがある。俺達を二千十年に連れて行ってくれないか?」

現代神は警戒の色を見せている。


「それよりも君たちはなんでこの時代にいるんだい?この時代にもとからいる君たちとは違うだろ?」


「未来のお前に連れて来てもらった。三人で異種を殺そうという事になっていたのだが未来のお前を追ってきた異種が二千十年にお前を飛ばしてしまった。お前ひとりでは時を止められて殺されてしまうかもしれん。だから、未来のお前を救う為に時を渡りたいんだ。と、言っても異種ではないお前のが力が強い事はわかっているがな。まあ、念のためだ。」


栄次が嘘を言い、それに被せるようにプラズマも声を上げた。

「そうだね。あんた、最近時神になったばかりのタイム・クロッカーなんだろ?」

プラズマも栄次に乗り、信じ込ませるための嘘をついた。


「……。」

現代神は少し考えているようだった。


二人は信用できないが劣化している自分がやられるのはまずい。

もし、三人であいつにかかろうという事になっていたら自分は一生助かるかもしれない。

しばらく沈黙があった後、現代神はぼそりとつぶやいた。


「……いいよ。未来の僕をよろしくね。」

現代神は彼らが仲間である可能性の方にかけた。

二人はだました事に心が痛んだが深くうなずいた。


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