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流れ時…1ロスト・クロッカー13

「おかしいと思わないか?」


アヤが消えてしまった地面を見つめながらプラズマはうーんと唸った。


「おかしいな。」

栄次もうなずく。


「ずっと不思議に思っていたのだがなんでアヤは現代神と時を渡れた?」

「彼女は異種なんだろ?」


「そうじゃなくてさ、なんで現代神はアヤをつれて時を渡ろうと思ったんだ?異種だってわかっていたらその場で殺そうとするはずだ。異種だと知らなかったのだとしても人は時を渡る事は絶対にできないという事は知っているはずだ。なぜ、アヤを連れて行こうとした?」


「たぶん、現代神はアヤが異種だってわかっていたんだろう。自分では殺せないから俺達に殺させようとしたんじゃないか?」


「と、いう事は俺達が黒フードと接触した事を知っているという事じゃないのか?」


活気だっている客の呼び込みを無視して二人は再び唸った。


「奴は……全部……知っているって事か……。」

「まさか……黒フード……現代神って事はない?現代神の言葉なら……信じないか?」

プラズマは栄次をうかがうように聞いた。


「……それはわからん。アヤから聞いたところによると会った当初、俺は現代神を認識していなかったらしいぞ。」

「ああ、そういえば……俺も……そうだったらしいな。でもそれってフードかぶってて顔が見えなかったからじゃないか?」

「なぜ顔を隠す必要があったんだ?」

「さあ……そこまではわからないけど……。」


「それになぜ先程俺達に怯えたんだ?黒いやつがあいつなら俺達に怯える必要ないじゃないか。」

「それもそうだよな……。じゃあ、違うのかな。」


二人が思考をめぐらせていると栄次が何かに気がついた。


「待て、先程の話とは関係ないがアヤが時神だとしたらこの時間軸にもいるのではないか?」

「そうか。劣化しているって事はいままでの時代を生きてきたって事だ。いるかもしれないな。……アヤが時の神ならばだけどな。」

プラズマは一呼吸おいて再びひかえめに声を出す。


「探してこの時代に彼女がいたら……。」

ため息をついて栄次と目を合わせる。


「彼女が嘘をついているという事だ。」


栄次もプラズマをみてうなずいた。

二人はこの時間軸にいるかもしれないアヤをとりあえず探す事にした。



「黒フードが……あなた?」

薄暗い部屋の中で現代神と距離を保って立っていたアヤは驚いて半歩下がった。


「そうだよ?」

「……。色々やったって言っていたけど……あなた……何したの?」


相も変わらず表情がない現代神に恐る恐る言葉を投げかけてみた。


「ん?まあ、どうせ君、もう消えるんだし……言ってもいいかな。君と会ってからずっと僕は君を殺そうとしていた。いままでずっと計画通りに進んでいたんだ。池に落ちて平安に行っちゃったのは予想外だったけどさ。」


「そんなふうには見えなかったわ。だいたい、あの時はたまたま私が過去に行ってみたいって言っただけなのよ?」


「僕は君の性格を知っていたんだよ。時計の話、時の話をすれば簡単に乗ってくる。案の定、君は乗ってきた。誘導するのは楽だったよ。それに君は数字を書くとき三と二、三の倍数をよく使うんだ。だから何年の未来へ飛ぶのかは大方予想がついた。」

現代神はナイフをアヤの目線まで持って行った。


「あなた、未来神の時も過去神の時もさっきも怯えてばかりだったじゃない。」

「怯える?はは!そう見えていたんなら大成功さ。」

アヤの言葉に現代神は怖いくらい笑っていた。


「何よ……演技だったとでも言うつもりなの?」

「そうさ。だって、狙われているのは君だし、僕が襲われるんじゃないんだから怯えるわけないじゃないか。ただ、突っ立っていただけだとほら……なんか怪しいでしょ?未来神と過去神に悟られるのだけは避けたかったしね……。」


アヤには最後の言葉の意味はわからなかったが、現代神に騙されていた事だけはわかった。


「つまり、あなたは手を汚さずに私を殺そうとしていたのね?……陰湿な男。」

「……僕はね……黒花の道化師って呼ばれていたんだよ?」

「黒花?黒は黒だけど花がわからないわ。あなたに花なんて……」

「僕の名前が立花こばるとって言うんだよ。だからじゃない?……じゃあ、そろそろ……。」


現代神はアヤに向かって歩き出した。


アヤは必死にどう乗り切ろうか考えていた。

その時、またこのあいだのような変な感じがした。

風で揺れていたはずのカーテン、時計の針が次々に止まっていく。


「現代神……あなた、時間を止められるの?」


アヤの言葉に反応もしない現代神の足がどんどん速くなってくる。

周りの物もこちらに近づくにつれてどんどん止まりはじめている。


やばい……

このままじゃ……自分も止まる!


焦っていると目の前がいきなり澄んだような気がした。

「うう!」

唸り声が聞こえ、気がつくと現代神が苦しんでいた。

カーテンは知らない内にさっきとは逆の位置で停止している。


「アヤ……君は強力だよ……。気を抜くと僕が止まりそうだ。」

「何……この感覚……。」

「自覚していなかったのかい?君にも時間を止める力があるんだよ……。」

現代神はアヤが放った強烈なタイムストップに必死に逆らっているように見えた。


「時間を止める?……あなた、ウソつきなの?」

アヤは苦しそうにしている現代神に言葉を投げかけた。


「な、何がだい?」

「時の神は歴史も時間も動かせないらしいじゃない!」


アヤの言葉を聞き、現代神は薄笑いを浮かべた。

カーテンがもとのように風でなびきはじめた。


「歴史動かせるなんて事、言ったっけ?」


「……。」

アヤは現代神を睨みつけた。

しかし、現代神は臆することなく口を開く。


「でもねぇ、時神が動かした歴史はね、時神の管轄になるから時神が好きなように動かせるんだよ?それ、知ってた?」

「そんなわけないじゃない。時神自体、歴史を動かせないわ。」

怒りのこもったアヤの言葉に冷めた目で現代神は答えた。


「何言っているのさ?異種だったら歴史動かせるじゃない。」

「……!でも、私は異種じゃないわ!歴史を動かしたわけじゃないし殺される理由がない。」


現代神は睨みつけているアヤから目を離すとつぶやいた。


「……君は立派な異種なんだよ。」



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