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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
二部「かわたれ時…」運命神と抗う人間の話
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かわたれ時…2織姫と彦星の運24

 「で、後は運命神だねぇ……。あの子は何をしていたのかな?噂によるとあの少年少女は両方とも生きているみたいなんだけど。」


 「生きてる!?」

 剣王の発言でサキが声を上げた。


 「おい!なんだYO。いきなりデカい声を出すなYO!」

 「ああ。ごめんよ。」

 ワイズが注意をしてきたのでサキは素直にあやまった。


 「今の感じだと太陽の姫君はこの事を知らないみたいだねぇ。」

 剣王は顎のひげを撫でながら笑った。剣王を見ながらマイが声を上げた。


 「それに関してはわたしが話そう。わたしは実はもうワイズの側近から手痛い罰を喰らっている。恐ろしくて今でも冷や汗が止まらない。


 これからワイズの傘下になる事はわたしとしてはとても地獄だ。その手痛い罰の中でワイズの側近が二人を救った。少年の方は元々運命神の神社のおみくじで大凶を引いていた。


 ある程度つじつまは合うが奇跡を起こしてしまった分、厄の処理に困った。ワイズの側近から厄を引き受けろと二重の罰を受けた。そもそもワイズの側近が動いたのは輝照姫様が頭を下げて二人を助けてくれと頼み込んだかららしく彼も輝照姫様のご意見をよしと思い計画に乗っかったとの事。」


 「あのバカ……。」

 マイの発言にワイズが頭を抱えて呻いた。


 「なるほど。ではワイズから彼に対し何か指示を出したわけではないという事ですわね。それをいかんと思った輝照姫が彼と交渉をし、二人を助けた。そして彼は輝照姫の指示に従い速やかにマイを罰したと。」


 月照明神が涼しい顔で語った。


 サキはそんな話になるとは思わずなんと反応を示したらいいかわからなかった。


 「だけどさあ、彼女、少年が生きている事知らなかったみたいだけど……。」

 剣王がマイに視線を向ける。


 「ああ、それは知らないだろう。輝照姫様はワイズの側近にすべて任せて太陽の業務に戻り、地味子を保護したのだから。今朝、その話を聞いてもおかしくはない。」


 「ああ、そうなんだ。だが、太陽の姫、君は一つ処理しきれていない事がある。」

 剣王に睨まれてサキはごくんと唾を飲み込んだ。


 「厄の処理はマイがするとして奇跡の処理はどうするんだい?」

 「奇跡の処理?」

 サキはもう何の話なのかまったくわからなかった。


 「厄だけでなく、良い事も神は処理しないといけない。それを信仰心として盛り立てるのもいいが今回はそっちの奴らの過失で起こった事故。無理やり起こした奇跡は誰かが処理しないとさ。」


 「剣王、そのために冷林がいるんじゃないの?」

 月子は頬杖をつきながら剣王を見つめる。


 「その通り。だが冷林ともおそらく交渉が必要だぞ。今回は人間が願った奇跡じゃない。神が事故を起こしてそれの修正に使った奇跡だ。当然、冷林は動かないぞ。」


 剣王はサキに向かい、にこりと笑ってみせた。冷林はまったく動きがない。


 「……わかったYO。今回は私の過失もあるYO。奇跡の交渉は私と冷林で行う。天御柱はマイが私の傘下で管理をしなければならないと思ったんだと思うYO。まあ、マイはあの時点でまだ誰の傘下でもないわけだから誰が罰しても文句はないYO。」


 「だいたい芸術神を監視しようと言いだしたのはワイズですもの。輝照姫はそれを見込んであなたの側近と共に動いていたんでしょう。」


 月照明神の言葉にワイズは悔しそうに緑茶を飲んだ。


 ……まあ、なんて言うか……たまたまだったんだけど……。これは言わない方がいいかな。


 サキはだんまりを決め込んだ。


 「わかったYO。輝照姫には感謝申し上げるYO。後でお礼を差し上げるYO……。」


 「おお!」


 サキは思わぬ展開に転び、目を輝かせた。マイのおかげが半分ある。そしてみー君が裏で頑張った行為が半分だ。


 マイはみー君にサキが頭を下げて頼み込んだと言った。強制的に従わせたわけではないのでワイズは何も言えない。


 みー君は芸術神を監視するのは東だと思っていたため、サキの意見に従った。ワイズが芸術神を監視すると言ったためにみー君の行為を咎める事はできない。


 結果的にワイズ本人がこの大事に気がつかず、まったく関係のないサキにすべてやらせたと言う風になった。


 こうしてサキは竜宮と東から多大な援助をもらえる形となった。おまけに地味子も助けられ、マイもワイズに縛られる形で暴れられなくなった。コウタとシホの幸せも保障された。


 すべていい方に転がった。


 会議はその後、すぐに終わった。月姫姉妹は前回の借りは返したとは言わなかったが笑顔の表情がそれを言っていた。


 剣王はだるそうに歩き出し、冷林は浮遊しながら後に続いた。ワイズは虫の居所が悪いのかマイを引っ張りながら足音荒く去って行った。マイはサキを見てフフッと意味深に笑っていた。


 事務的な空間に残されたのはサキとオーナーと地味子と飛龍だ。


 「天津、ヤモリがね、今回みたいにルール変更を知らずに事件を起こしてしまうのが嫌だから形だけでも自分を守ってほしいと言っているんだよ。竜宮には戻りたくないらしいけどあんたには守られたいんだってさ。」


 「そうか。」

 サキの言葉を聞きつつ、オーナーは事務椅子に座りながら地味子に目を向けた。


 「あの……太陽の姫君に守られてこういう事言うのもあれなんですけど……私は弱いですから守っていただきたいんです。死刑になるほどの罪だってわかっているんですけど……その……。」


 「今回の件はもうよい。輝照姫に感謝するんだな。……お前を守る事は可能だが死刑になる罪だとわかってやっていた行為を許すわけにはいかない。」

 オーナーの言葉に地味子の肩がピクンと動いた。


 「それと飛龍。お前も速やかに私に報告するべきだった。それも罪が重いぞ。」

 「……。」

 飛龍は青い顔で下を向いている。


 「だからお前達は二人で現世に三か月追放だ。高天原の地を踏む事は許さん。」

 オーナーの厳しい目線に二人は肩を落とした。


 「三か月も戦えないのか……あたしは……。」

 「こんな野蛮な龍神と三か月も……。」

 二人はとても嫌な顔をしていたが渋々罰を受け入れた。


 「三か月経ったら私が直々にヤモリを守ってやろう。その間、何か罪を犯したら死刑だ。飛龍もだ。」

オーナーの鋭い瞳に怯えながら二人はため息をつきながら頷いた。


 「それと輝照姫、本当に迷惑をかけた。なんでもいい。かなえられる範囲で詫びをさせてくれ。」


 オーナーが深々と頭を下げるのを見ながらサキは口を開いた。


 「じゃあ、暁の宮に援助をしておくれ。」

 「……了解した。」

 サキの発言にオーナーは素直に了承した。サキは勝ち誇った顔で笑った。

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