表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
二部「かわたれ時…」運命神と抗う人間の話
169/560

かわたれ時…2織姫と彦星の運8

「ん?」

サキは横に立っている愛想笑いを浮かべた男を見た。おそらく彼がサキ達に話しかけてきたのだろう。


 彼は目つきが鋭くあまりよさそうには見えなかったが根は優しそうだった。服装は黒の生地に金の龍が描かれている着物。その着物を半分だけ脱いでいる。


 たくましい肉体が半分だけ見えているそんな感じだ。緑の短い髪になぜかシュノーケルグッズをつけている。はっきりと言って奇妙な格好だ。


「えーと……誰だ?」

みー君は男に問いかけた。


「はいはい。俺様……じゃなくてわたくしはツアーコンダクターでございます。今はちょうど暇なんで……じゃなくて……輝照姫様と天御柱様にはアトラクションを待たすなとの天津様からの伝言でして……お先にアトラクションへお連れいたします。」


「お前……ボロボロじゃねぇか……。」

みー君はツアーコンダクターを名乗る龍神にため息をつきつつちらりとサキに目を向ける。


「先に行かせてくれるんだったらそっちのがいいじゃないかい?」

「だよな。」

みー君はサキに確認をとるとツアーコンダクターに目を向けた。


「じゃ、よろしく。」

「はいはい。二名様!」

ツアーコンダクターの話を聞いていたまわりの神がざわざわとざわめいていた。


「おいおい……太陽の姫君様と天御柱様だぜ……。なんで堂々とこんなところにいるんだ?」


「私……粗相したかしら?」


サキは神々の会話を聞きつつ、自分がけっこうな有名神な事に気がついた。みー君はまあ、知らない神はいないだろう。だが自分はついこないだ太陽神の上に立ったばかりだ。


「サキ、お前は四大勢力プラス月と会議ができるんだぞ。有名になるのは当たり前だろう。おまけにアマテラス大神の力を持っている。アマテラス大神から太陽を任されているんだぞ。自覚しろよ。」


「う……うん。そうだね。」

サキの顔色を見たみー君はサキの肩をポンと叩くとツアーコンダクターについて歩き出した。


サキも我に返ると慌ててみー君を追い走り出した。


「はいはい。ここからどうぞ。」


ツアーコンダクターはそそくさと二人を置いて去って行った。サキ達は怯える神々の間を抜けて近未来風に作られたエレベーターの前に連れて行かれた。


 どうやらアトラクションは上の階にあるらしい。何気なく横を見ると大きなテレビ画面があった。そのテレビ画面の映像は赤い大きな龍と楽しそうな神々が戦っていた。現在アトラクション内にいる神々が映し出されているらしい。


「ちょ、ちょっとみー君!あの赤いでかいのが飛龍とか言うんじゃないだろうね。」


「ああ。あれは飛龍だな。」


「やだーっ!もう帰る!無理無理!死んじゃうよ!あほか!火吹いてるじゃないかい!」

サキはジェットコースターに乗りたがらない子供のようにダダをこねはじめた。


「あいつは容赦ないが……ゲームだからな。死にはしない。」

みー君は楽しそうに笑った。しばらくしたらエレベーターが開いた。みー君は嫌がるサキを引っ張りながらエレベーターに乗り込んだ。


「無理だって言っているじゃないかい!」

「大丈夫だって。アトラクションだから。」


みー君がサキを励ましているとエレベーターに一緒に乗っていた女性がこちらをむいて微笑んだ。


おそらくこのアトラクションの説明係だ。


「ではアトラクションの説明をさせていただきますね。」

「ああ。頼む。」


みー君はとなりで何かに祈りを捧げているサキを呆れた目で見つめながら話を進める。


「このアトラクションはアクションゲームの中に入り込むアトラクションです。竜宮の過去を見せる能力と架空感能力を使い作られたアトラクションでございます。今、お二方の頭についているのがHPでございます。つまりライフ。このメーターがゼロになったらゲームオーバーでございます。」


サキ達は慌てて上を見る。サキ達の頭少し上で緑色の線が浮いていた。


「ほお。」

みー君はフフッと楽しそうに笑った。


「戦闘向きではないお客様には色々能力をお貸ししておりますがお二方は必要なさそうなのでそのままでよろしいですか?」


「え?ええ?いいわけあるかい!」

サキは真っ青で叫んだ。


「おいおい。そんなチート技、使ったらいけないだろう。そのままでいい。」

「ええ!ちょっとみー君……。頼むよ……お願いだよぉ……。」

サキが必死にみー君を止めるがみー君は聞いていない。


「大変失礼いたしました。ではドラゴンクワトロへどうぞ。」

「あんたもなんか反論しておくれよ……。」


始終笑顔でいる説明係の女性にサキは涙目で訴えるが軽く笑われて流されてしまった。


女性が笑った刹那、エレベーターのドアが開いた。大きな闘技場の真ん中に赤い髪の女性が立っている。みー君はサキを引っ張りエレベーターを降りた。


「お?なんかずいぶん凄いのが来たな!」


闘技場の真ん中に立っていた女性は男っぽい口調で豪快に笑った。袖のない紫の着物に鋭い瞳、燃えるような赤い髪が無造作にはねている。胸が大きく、スタイルは抜群だ。


「飛龍、相変わらず殺人龍みたいだな。」


「あー?ひでぇ男だな。あたしは人間に恵みをもたらす龍。母性の龍神って呼ばれてんだ!」


「そんなやる気満々で言われてもなあ……。」

みー君は後ろに引っ付いているサキを鬱陶しそうに見つめながらつぶやいた。


 「みー君、今……飛龍は人型なのかい?」

 「そうだな。」


 サキがささやくように言葉を発したのでみー君も小声で返事をした。飛龍の頭には長い緑のラインが浮いていた。おそらく飛龍のHPだろう。かなりある。


 「で、あんたらなら難しさは最上級でいいよな。あたし久しぶりに本気だしちゃおー。」


 飛龍は狂気の瞳でこちらを見て笑っていた。サキは青い顔で怖気づいていた。


 「ひいい。」

 「おいおい。そこの太陽の姫様、そんなに怯えんなよ。そこのモニター見えるか?」

 飛龍は怯えているサキを眺めながら自分の後ろを親指でさした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ