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流れ時…1ロスト・クロッカー10

ビビッ……ビビッ……

メガネの少女は止まった。

瞳に沢山の電子数字が通り抜ける。

黒い瞳が金色に近い黄色に輝いていた。

「あまの……みなぬし……」

メガネの少女はそうつぶやくとパソコンにもたれかかって寝てしまった。

静かに赤い文字が浮かび上がり点滅する……。

ビビッ……ビビッ……


─エラーが発生しました─


ビビッ……ビビッ……


※※


わあああ!

と叫び声が聞こえる。


「何?」

アヤは周りを見回した。


まず目に入ったのは赤い夕陽。

そして沢山の人々がビルに押しかけている光景。

ここちよい風が三人の髪をなでる。


「ここ、さっき君と会った公園だ。雰囲気は違うけど。」


あの美しかった公園は暑苦しいばかりの銀色に変わっていた。

緑はまったくなく、地面にあったタイルは銀色のステンレスのようなものに変わっていた。

まわりには雑草の一本も生えておらず、ビルと銀色の地面を赤い夕陽が照らしていた。


「ここが……未来なのか?」

過去神は不安な顔をアヤに向けた。

「そうみたいね。」


人々は騒ぎ出している。

「偉大な福音さんの思想をなんだと思っているんだ!」

「自然を返して!」

「人間には自然が必要なんだ!」

「燃料を大切に使うべき!」

などと叫びながらビルに向かって何かを投げている。

どうやら大規模なデモ行進らしい。


「福音さんってあの自然共存派の福音さん?」

「そうじゃないかしら?」

「自然……共存派か……。」


三人がビルに向かって叫んでいる沢山の人々を眺めていると苦しそうな顔をしている今と身なりが変わっていない未来神をみつけた。


「やばい、俺がいる!ちょっと隠れてもいいか?」

「待て。」

過去神は鋭い声を出し、この時間軸にいる未来神の後ろ見るよう合図した。

二人が未来神の後ろへと目を持って行くと次の瞬間、驚きの表情になった。


「黒フード!」


黒いローブの男は未来神に声をかけた。


「話かけている。見つからないところへ隠れるぞ。」

「ええ。」

アヤと過去神は公園の門の前にある壁まで走って行った。

「はあ……怖いな。」

未来神も内心冷や汗をかきながら二人を追う。


門を出るとすぐビルがあり、その公園の外側の壁に未来神と黒ローブの男が立っていた。

三人は公園の内側の壁にしゃがみ込んだ。

会話がきれぎれだが聞こえてきた。


「君……か……?」

「そう……。……れ?」

「……は……だよ。」

「……が何の用……」

「忠告…………が時を……………」

「それは……戦争……って事……」

「いや……起こされる……」

「なんで……ことが?」

「これから……女の子が…………んだ。」

「……異種……」

「……アヤって………………で……なんだ。」

「アヤ!」

「知って……?…………歴史が変わった…………は……考えないと……。」

会話はそこで途絶えた。


アヤがそっと壁の向こうをのぞくと先程よりもつらそうな顔をしている未来神しかいなかった。


「アヤが……そんな……」

未来神はそうつぶやくとビルに向かって叫んでいる人々に背を向けるとどこかへ歩いて行ってしまった。


「私の事話していたわね。」

「そうだな。追うか?」

「そうしましょう。私達は会ってもなんの問題もないわけだし、未来神にはここで待っててもらって……。」

「ああ、じゃあ、俺はここにいる。」

とりあえず未来神を公園に置いて過去神とアヤはこの時代の未来神を追った。


すべてが銀で覆われている街を小走りに駆けた。

しばらく歩くと未来神の背中が見えた。

二人は息を飲むと話しかけた。


「あの……湯瀬プラズマさん。」

声を聞いた未来神は足を止め、つらそうな顔をこちらに向けるとうるんだ瞳で睨んだ。


「アヤ……なんでこの時代にいるのかわからないが、君が異種……。君が歴史を動かしたせいで六百年後俺は死ぬほどつらい思いをするんだ……。君がまさかそんな……異種だったなんて。」

「何を言っているの?異種ってさっきの人に言われたの?」

「ごめん。死んでくれ。君がここで現れてくれて良かったよ。ここで君を殺せばこの先の歴史が狂わず済む。」


このあいだのトラウマが蘇る。


未来神は二丁拳銃を取り出した。

二丁拳銃から目を離せないでいると過去神が素早く刀を抜き何かを撃ち落とした。

後からする銃声。


また……撃たれた……


過去神が弾を斬ってくれたおかげでアヤに怪我はなかった。


なんで?だから私が何をしたって言うの?


「過去神白金栄次……なんで彼女を守っているんだ。彼女は異種だぞ。」

「根拠がないだろう。」

「ちっ、君がいなかったらすぐにでも……。まあ、いい。どうせ、のちに現代神とアヤは来るんだ。その時始末する。今は何もしないで退いてあげる。だからさっさとこの時代からいなくなりな。」


未来神はそう言い捨てると背を向け、暗くなりかけている銀色の道を駆けて行った。


「ああ、ちょっと!」

アヤが追いかけようとしたら過去神に止められた。


「やめておけ。あいつを追うよりも黒いあいつを探したほうがいい。黒いあいつはなんだか知らんが情報通でお前の事も何か知っているようだ。」

「……そ、そうね。黒フードをみつけましょう。ありがとう。なんだかわかんないけど助かったわ。」


「ああ。あいつがあそこまで豹変するとはな。」

「異種って何かしら?」

「異種はな……劣化を始めた時の神の事を言うのだ。本来はな。」

過去神は着物を翻してもと来た道を歩み始めた。


「劣化をはじめた時神?」

アヤも過去神の後を追う。


「そうだ。時神の劣化が始まれば時の力がなくなっていくと同時に人の力が流れてくる。その間だけ歴史と時間の能力を両方持つことができるのだ。人の力で身体が満たされたら歳が逆流しその時の神は消滅する。その時の神が消滅したら新しい時の神が現れる。時神はそういう仕組みで動いているんだ。」


「そうなの……不老不死じゃなかったのね。話を戻すけど……私が劣化しているって事なの?私……死ぬの?」

「さあな。俺はお前が何をしていままで生きてきたのか知らないからわからん。そもそもお前は時の神なのか?」

「……違うわ。こないだまで普通の学生だったわよ。」

「そう……なのか。」

二人は先ほどの公園に戻ってきた。


未来神は怯えながら二人に向かって手を振っていた。

デモは先ほどとなんにも変らずに続いている。


「お前に襲われたぞ。」

「俺に?なんでだ?」

「私が異種なんだって。私、でも、こないだまで普通の学生だったのよ?」

アヤは複雑な顔を二人に向けた。


「うーん。よくわかんない。とりあえず、俺がおかしくなったのはあの男のせいだって事はわかったな。じゃあ、過去神がおかしくなったのはいつなんだ?それがわかれば、あの黒いやつ捕まえられるんじゃないか?」


「もう一度……あの辺の時代に戻りましょう。あの黒フードは急に消える事ができるみたいだし待ち伏せしないと捕まらないわよ。」

「そうするか。」

「ここじゃあ、時計を探すのが大変だから一度俺が生きている時代に戻ろう。」


未来神の提案により、三人は一度、二千三百年に戻り、そこからまたあの時計の中に入る事にした。


しかし……


「時計が……ない。」


「なんで?ここにあったじゃない!」

ここはさっき来たばかりの古代博物館。

目の前にあったはずの時計がなくなっていた。


「……。俺達の行動を読んで妨害しているやつがいる……。」

「……そうだわ。三千二百年に戻ったら現代神がいるかもしれない。私、現代神と未来へ行ったのよ。」


「いない確率が高いだろう。現代神は時を渡れる。つまりお前を探しているとすれば、一緒に池に落ちて今頃、源平の時代に飛んでいるだろう。」

「……思い出したよ。」

ふいに未来神が声を発した。


「なんだ?」

「ここには、もう一つ時計があったんだ。まだ公開されていない蔵に入っている時計が……。このフロアにないならまだ蔵の中にあるかもしれない。なんでしまわれているのかはわからないけど行ってみる価値はある。来て!いまなら警備の人も少ないから蔵に入れるよ。」

「あなた、なんでそんなに詳しいの?」

「俺、前、ここでバイトしてたんだ。」

「へえ。」


未来神に連れられ立ち入り禁止の黄色いテープをまたぎ、ひとつの扉の前に行きついた。

床はピカピカに磨かれたタイルが敷き詰められているのにこの扉は古臭い木の扉だった。


「本当に警備いないのね。」

「この時間は外に一人いるだけなんだ。ここはずっと変わらないね。」


そう言うと未来神は扉を開けた。

目の前に古びた和時計が現れた。

展示されていたあの時計にそっくりな時計だった。


「やっぱりあった!ずっとここに入りっぱなしなのか?この時計は……。」

未来神はふうとため息をつく。

「じゃあ……行くわよ。」


アヤは二人の手を掴むともう一つの手で時計を触った。

白い光が三人を包んだ。



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