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流れ時…1ロスト・クロッカー8

なんでよ!

なんで?


アヤは心でそう思っていた。


さっきの地獄はどうしたのか穏やかな日の光がさしている公園をカップルが通り過ぎて行く。

あきらかに現代ではないが源平の時代でもなかった。

アヤは公園のようなところで一人立っていた。


噴水が日の光できらきらと輝いている。

まわりは高層ビルが立ち並んでいてサラリーマンや子供がたくさん歩いていた。

アヤは少し暑かったので羽織っていた着物を脱いだ。


「ここ……まさか二千三百年の……東京?」


綺麗に手入れされた植木と磨かれたタイルの地面。

大都会の中の憩いの場のようにある公園。


なんで?

なんで私……タイムスリップしたの?

過去神はあの紙に……ふれてもいないのよ?

なんで?


その時、近くで自分をみている目線を感じ取った。

アヤはきょろきょろとあたりを見回す。

一人の男と目が合った。

男はこちらをまっすぐ見つめている。

アヤにはその男が誰なのかわかってしまった。


「……未来神……湯瀬……プラズマ……。」


「あれ?なんで俺の名前知っているの?それよりもその恰好どうしたんだ?」

未来神はあの時の険しい顔ではなくニコニコ笑っていた。

軽い感じでアヤに話しかけてきた。


挿絵(By みてみん)

「……。あなた、私に何か恨みでもあったの?」

「ええ?よく見たら怪我してんじゃないか。どうしたんだい?」

未来神は聞いていないのかアヤを舐めるように見ている。


「あなたが……やったんじゃない……。」

「何?俺が?なんで女の子を傷つけるような事しなければなんないんだ?」


ここでもそうだ。

さっきの過去神といい、私を殺そうとしてこない。


いつからだ……

いつから私は二人の的になった?

まず、なんで殺されそうになっているの?私……。


無性にそれが知りたくなった。


「あなたは歴史を動かす事ってできるの?」

この未来神もアヤに危害を加えなさそうなので質問してみる事にした。


「できない。歴史の管轄は人間じゃないか。歴史をつくるのは人間だよ。俺は時と共に生き、ただ未来を守っているだけさ。」


と、いう事はやはり時の神は起こった出来事を戻すことはできないし、違う時代に飛ばす事もできない。


「つまり……そういう事……」


そう考えると現代神が言っていた事は嘘になる。

現代神は未来神と過去神が時間を狂わせていると言っていた。


しかし、二人には歴史を変える能力はない。

いや、そうとは限らない。

二人が嘘を言っている場合だってあるのだ。


歴史を動かせないと見せかけて現代神を欺き、二人で一気に歴史を動かしたり止めたりしようとしている可能性だってある。


「なあ、どうしたんだ?さっきから福音さんみたいな顔して……。」

「福音さん?」

「あれ?福音さん知らない?最近出てきた議員なんだけどいつも眉寄せて険しい顔している人なんだ。ええと、確か自然共存の精神をひたすら国民に言いかけている人でさあ。」

「へえ。」

こうやって話していると彼には悪っけがまったくない。


「まあ、とりあえず怪我治そう。」

未来神はポケットから液体の入ったビンを取り出した。


「なにそれ……」

液体は青色をしていてなんだか不気味な色を放っている。

「飲みな。ほら。」

「飲みなって……。」

戸惑っているアヤに無理やりビンを押し付けると未来神はにこりと笑った。


「今、はやっている傷薬だ。血小板とか傷口を治す細胞を活性化させてなんかやる薬だ。俺もよくわかんないけど一瞬で治るよ。西条ケレンさんっていう外国の方とのハーフのあの人が発明したっていう……。」

「知らないわ。」

「え?知らない?ははっ、というか君、何時代からきたんだい?その古代の着物といい、コスプレ?それとも君も時神?まあ、俺を時の神だってわかるところからすると時神と考えるのが妥当か?」


「私は人間よ?」


「人間は歴史をつくるのみで時代は渡れないよ。時代を渡れるのは中立の立場を保っている現代神だけさ。」

「……現代神……だけ……。現代神だけの能力……だから過去神は特殊な能力って……」

「そうだ。君、時代を渡ってきたんだろ?じゃあ、現代神だよね?」

「違う……私は勝手にタイムスリップしちゃっただけ。」


アヤの頬を冷や汗が伝う。


私って……なんなの?

現代神がなんかしたのかしら……

そうだ。そうに違いない……。

現代神が私になんかしたんだ。


「ま、いい。とりあえず、それ、飲めよ。」

「……。」

未来神が青い液体を指差す。


彼らは一度アヤを殺そうとしたやつらだ。アヤはどうしてもこの液体が毒にみえてしかたなかった。


「毒……じゃないわよね?」

「毒?毒って時代劇サスペンスとかで出てくる毒を盛るってやつの事?」

「時代劇サスペンス?」

「ほら、今やってるよ。」

未来神はビルの前にデカデカと貼り付けられている薄型超巨大テレビを指差した。

そこでやっていたテレビはアヤの考えている時代劇とは違った。


現代で普通に放送されているサスペンスドラマ……


「これが……?これ、普通のサスペンスドラマじゃない。」

「時代物のサスペンスドラマさ。」

「時代物?これが?」

そこで気がついた。


私はいま、未来に来ているのだと。

そうか……私が生きている時代は過去か……それで時代劇……


アヤが考えにふけっていると未来神が首をかしげて困っていた。


「ああ、ごめんなさい。私からすればここは未来だから。感覚が狂っただけ。」

「ふーん。あ、俺さ、一度過去に行ってみたいんだ。君なら過去に行けるだろう?」

「行けるかわからないわ。いままでだってなんでタイムスリップしたのかわからないんだから。」

「ま、そのことは後で聞くからとりあえず薬飲みな。そのまんまでいたら変な目で見られるよ。」


未来神に言われてまわりの目が気になってきたアヤはどうにでもなれという気持ちでビンの蓋を開けると目をつぶって液を飲み干した。

すると一瞬で皮膚のひきつるような感覚が消えた。

よく見ると擦りむいた膝ももとに戻っていた。


「嘘……。」


「たいした傷じゃなくて良かった。これで大丈夫だ。じゃあ、話を聞こうか。」

「え?あ……うん。」

この時代の人間はこうやって傷を治しているらしい。

アヤはゲームの中などによく出てくる回復アイテムを想像した。


「まず、なんでこの時代に来たんだ?」

「話せば長くなるの……。」


現代神がいきなり現れた事、未来神、過去神に殺されそうになった事などをアヤは簡潔に話した。


「……そうなんだ。それ、俺も気になるな。その話けっこうおかしいんだよな。時神は歴史なんて動かせないし。それに俺は君に異種って言ったのか……。意味わからないね。まあ、まず、君を連れまわした現代神を探そうか。」


「え?一緒に来てくれるの?」

「気になるからさ。一緒に行くよ。」

「一応、お礼言っておくわ。」

二人は現代神を探すため別の時代に行こうと試み、時計を探し始めた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] レビュー全文 【簡単なあらすじ】 ジャンル:SF 時計の好きな主人公は、たくさんの時計をコレクションしていた。ある日、その時計が狂っていることに気づく。そこへ突如現れたのは、時神だと名乗…
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