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流れ時…1ロスト・クロッカー6

ビビッ……ビビッ……

パソコンに向かっていたメガネの少女はキーボードから指を離した。

……あれ……おかしいな?

頭にツクヨミ様の神社が映るのはなんで?


私って……


あの後「プラズマさん」と……。


※※


「おい!しっかりしろ!」

誰かにゆすられている。


あれ?私……どうなったの?生きているの?


アヤはそっと目を開けた。

「娘が傷だらけで池に浮いているなんて尋常ではない。」

アヤに話しかけていたのは男だった。


ん?この男の人……どこかで……


男は平安貴族のような恰好をしていた。

水干袴を着て烏帽子をかぶっている。


「話せるか?何があった?」

しきりにアヤに話しかけている。


「……。あなた……どこかで……」

うつろだった意識がだんだん戻ってきた。

「あなた!」

アヤは驚いて男から離れようとしてよろけて倒れた。


「どうした?大丈夫か?安心しろ。俺は何もしない。」

男はアヤに近づく。


「……何言っているの!時神過去神!あなた……私を殺そうとしたじゃない。」


きょとんとして立っている男は江戸の時代にいた過去神だった。

「なぜ、俺が娘を殺そうとする?お前を殺して俺は何か良い事があるのか?それからなんで俺の事を知っている。」

「え……?」

そういえば、周りの雰囲気がおかしい。


大きな屋敷が連なり、荷物を運んでいる牛が舗装されていない道をゆらゆらと歩いて行く。

過去神と同じような恰好をしている者とみすぼらしい着物を着た者がアヤを気味悪そうにちらりちらりと見ながら通り過ぎて行った。

挿絵(By みてみん)

「とりあえず、止血だけはしたが一応医師にみてもらった方が良い。」

「ここ……どこ?うう!寒いっ!」

よく見るとアヤの口からも過去神の口からも白い息が漏れている。


「都だ。今は冬だ。そんな恰好をしているから寒いのだ。」


過去神の言葉にアヤは眉をひそめた。

「……いつ?」

「寿永三年だ……」

「!」


寿永三年って……源平の時代じゃない!


源平の時代つまり治承・寿永の乱の真っただ中である。


現代神は?


アヤは周りを見回したが現代神の姿はなかった。

「……。どうして?私……タイムスリップしたの?」

「たいむすりっぷとはなんだ?」

「時間を渡る事よ。」

「そうか。お前は時の神なのか?」

「それより、なんであなた生きているの?あの時代から何百年も前なのよ?」

「時神は時と共にいる。お前がどんな時代から来たかは知らんが、時神は神だ。人の物差しではかるな。」


……と、いう事は……彼らは不老不死なのか……


「お前はなぜ時を渡ってきた?」

過去神はあやしむようにアヤを見てきた。


少なくともこの時代の過去神はアヤに危害を加えなさそうだったため、アヤは過去神を刺激しないように話す事にした。


「つまりお前は現代神と時を渡っていたがなぜか一人でこの時代に来てしまったと。」

「そういう事。でもきっと現代神がなんとかしてくれて助かったんだわ。」

「お前、池に落ちたと言っていたな。」

「そうよ。」

「現代神がなんかしたとするならそれだろうな。」

「え?」

「この時代に明確に時間をはかるものはない。この時代は時をはかる方法がたくさんあるのだ。日時計、星をよんで時を知る者、大雑把に日が出ている内は昼、日が沈んだら夜と考える者、そして水で時間を知る水時計……。」


「水……時計……。」


「だが、ただ池に飛び込んだだけでは時は渡れないだろう。水時計はそんな単純なものではない。おそらく色々条件が重なったのだ。……日が沈んだから夜、水時計、池に映った星……。条件ならあるだろう。」

「……なるほど。現代神はそれを見込んで私をこの時代に飛ばして助けてくれたのね。」

「さあな。そんな事本人に聞け。」

過去神の言葉にアヤは気がついた。


現代神が……いない。

現代神と別れた今、現代に戻る術はない。

まずい……


「私……もとの時間に……戻れない……。」

「とりあえず治療する。来い。」

アヤの言葉を半ば無視した過去神は手を掴んだ。

そこでまた新しい考えが浮かんだ。


「あなた、別の時間に行くことはできるの?」


「……?過去神は時間を渡る事はできん。」

「な、なんで?」

「その現代神とやらの能力は特殊なのか?」

「え?」

現代神の能力がどうなのかアヤは知らない。


「……通常はいけんはずだ。」

「で、でも、現代神は未来の時計を描いただけで未来へ飛べたわ。」

「だから、特殊な能力の持ち主なのかと聞いたのだが。」


わからない……

だいたい私は普通の人間だ……時の神の事情なんて知らない。


「だいたいなんであなたは私を殺そうとしたの?」

「知らん。その時代の俺に聞け。」

「そんな……。」

そこでアヤの意識は途切れた。




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