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流れ時…1ロスト・クロッカー4

ビビッ……ビビッ……

世界が一瞬歪む。

メガネの少女がパソコンに向かいながら唸る。

……こんな世界だったらアヤはどう動くだろう?

未来がこんな世界だったら「おもしろい」よね?

次は未来神プラズマを出して……それから……


※※

う……

アヤは恐る恐る目を開けた。


「!」

目の前には赤い空と大自然が広がっていた。

木々は覆い茂り、長く伸びた草が風で揺れている。

過去神は消えていた。


嘘……


どうやら助かったようだ。


挿絵(By みてみん)

「アヤ……君は凄いよ……。」

ふいに声がかかった。

横を見るとぐったりしている現代神がいた。


「あんな状態で動けるなんて……僕なんて足がすくんじゃってなんにもできなかったよ。」

「私だって助かるなんて思ってなかったわ……。ほら、見なさい。足が震えてる。」

アヤはがくがくしている足を指差した。

「僕も……腰が抜けて動けないよ……。」


「で? ここはどこなの?」


「三千二百年だね。つまり、未来だよ。」

「未来? これが……なんかもっと機械化とかしているのかと思ったんだけど……。」

「僕も未来に関してはノー知識だよ。現代神だからねぇ。」

「だいたい紙に書くだけでその時代にいけるってどういう仕組みなの?」

「……さあ?」

現代神はアヤの問いかけに呑気に首を傾げた。


「まあ、いいわ。現代の時計壊れちゃったわよ。どうするの?」

「時計を描いて現代にぎりぎり入らない年代を書いてその時代に飛んで現代の時計をみつけて戻るって手しかないね。」

「はあ……なんだか大変な事になってきたわね……。じゃあ、さっそく戻りましょう。」


ため息をついたアヤは残っていた紙とボールペンを取り出す。


「待って、この近くに時神がいるみたいだ。未来神がね。ちょうどいいから一緒に来てよ。」


「じゃあ、また探すの? さっきみたいに殺されそうになるとかは勘弁よ。」

「こっちの時神も時間を狂わせてなければいいんだけどね。過去神はあの時代に戻れないから置いといて今は未来神に会おうよ。」

そう言うと現代神は立ち上がり歩き始めた。


「ま……待って。」

アヤは現代神がいなくなると困るので慌てて追いかけた。


しばらく歩くと村に出た。

木々に囲まれたひっそりとした村だった。

「なるほど……人間は機械化をやめたのかな。」

畑の横にきれいな川が流れており、木々で作った家が建ち並んでいる。

パッと見てかなり前の時代に来たみたいである。


「……生活を昔に戻したって言うの?」

「たぶんね。燃料がもうつきたんじゃないかな?」

村人が家から出てきた。

時間帯的に夜明けのようだ。


「なっ!」

アヤは出てきた人に驚いた。

服装はみすぼらしく、なぜか犬のような耳がついており、しっぽが生えている。

その他、ぞくぞくと出てきた村人は皆おかしかった。


鳥の羽が生えている者、猫のヒゲのようなものが生えている者など、まるで魔物だ。


言ってしまえば江戸あたりの貧しい農村の人が動物の格好をしている感じである。


「ふうむ? ……人の純血がいなくなってしまったのかな? 皆どうみても動物が入っているね。」

「ちょっと……人間は動物と交配したって言うの!」

「わかんないけど、そうなのか、それとも動物を混ぜる技術があるのか……かな? あれは人間だよ。」


「……。」

アヤはあまりのショックで言葉が出なかった。


「おい……あれは純血様じゃないか?」

「おお。何千年と人間のみと交配を続けてきたっていうあれか?」

遠くで声がする。

どうやらアヤ達を見て言っているようだ。


「日本語自体はあんまり変わってないみたいだね。ちょっと聞いてみようか。最近変な事が起こってないかを。」

現代神はなんのためらいもなく村人に近づいて行く。

アヤも気味悪がりながら現代神に続く。


「あの……最近、時間がらみで変な事ってありませんか?」

「純血様がいらした! 皆、王をお呼びするのだ!」

村人は犬の人に命令され、忙しなく動き始めた。


「いや……あの……。」

ぽかんとした二人は村の中でもひときわ豪華な家に入れられた。

「なんていうか……いきなりすぎて頭が働かないんだけど……」


アヤは周りをキョロキョロ見回しながら唸った。

壁の側面は宝石がちりばめられている洋風な雰囲気なのに床が畳というなんともアンバランスな部屋に通された。


「しばしお待ちを。」

犬の人はそう言うと外へ出て行った。

「……なに? これ?」

「さ、さあ。村人の言動からするとやっぱり動物と交配したっぽいよね?」

二人がしばらく呆然としていると犬の人の声と男の声がした。


「こちらです。」

「何? 純血だって? 珍しいね。俺、会うのはじめてだよ。」

閉まっていた障子が開かれた。

アヤと現代神は開かれた障子に目を向けた。


そこには犬の人と赤い髪の若い男が立っていた。

赤い髪の男は頬に赤色のペイントをしていた。紫だったらクマに見えたところだ。

その男はどこからどうみても普通の人間のようだった。


服は現代にありそうなネックのついている黒いシャツに黒いズボン。


「本当だな。純血だ! 君らはどこの豪族の生まれだ? そんなぼろぼろな恰好をして。俺は湯瀬プラズマだ。よろしくな。」

「ご……豪族?」

「ん? どうした?」

「あ……いえ。」

赤髪の男が不安そうな顔になりはじめたのでアヤは無理に笑顔をつくってみせた。


「……!」

しかし現代神の顔つきは厳しくなっていた。


「どうしたの?」

「お聞きしますが……あなたはもしかすると……。」

現代神はアヤの問いかけを無視してまっすぐ赤い髪の男を見上げる。

「なんだ?」

「未来神……なのでは……。」

現代神の言葉で赤い髪の男から笑顔が消えた。


「さがれ。」

「はっ。」

赤い髪の男は犬の人を追い出した。


犬の人の遠ざかる足音を聞きながら赤い髪の男はため息まじりにつぶやいた。

「君、時神か?」

「そうです。時神、現代神。」

「で? 俺に何の用?」

未来神は軽い口調で問いかけた。


「……時間を……ゆがませていませんか?」


「……。」

現代神の真面目な声音で未来神は黙り込んだ。

「……。ゆがませていましたか……?」

「だったらなんだ。」

「今すぐ、戻してください。」

「できない……。それだけは。」

未来神の顔つきが暗くなっていた。


「どうしてです?」

「戦争が起きるからだ。機械化に走った人間共と自然共存派の人間共のな。機械化したやつらは少数だが感情を消している種族だ。自然共存派は、それは人間じゃないって言い張って近い将来、その機械化した人間を壊すって言っているんだ。機械化した方もただ壊されるのを待つわけじゃない。攻撃されると防護プログラムが作動するようにできている。つまり、戦争が起きるのさ。だから俺は戦争を後にまわしているんだ。ずっと後にまわすつもりだ。」


「それはダメです。歴史は歴史です。時神は感情に流されてはいけません。」

二人は暗い顔つきで真剣に会話をしている。


アヤはなんだか不思議な気持ちだった。

時や歴史はこう簡単にゆがませられるものなのか。


でもそんな時の神でも歴史を変える事は不可能。遅らせたり早くしたりする事は可能だが事柄は確実に起きるのだ。


「……。すまないな。帰ってくれるか? 俺は歴史をもとに戻す気はないしお前だけだと話をする気にはならない。」

アヤはお前だけだとの「だけ」に違和感を覚えたが違和感を覚えただけで軽く流してしまった。


「それはできません。」

現代神はいつになく険しい顔で未来神を睨む。


「……。」

未来神は無言で手をあげた。

するとどこからか大きな犬が現れた。

その犬は先ほどの犬の人に似ていたが人間というより犬だった。

未来神はその犬にまたがるとどこかへ飛んで行ってしまった。


「まっ……まってください!」

現代神の叫びもむなしく、未来神は遠くの空へと消えてしまった。


「ね……ねえ……どうするのよ。」

「探すよ。探さないといけないよ。もう一度、話をするんだ。」

二人はしかたなく外に出た。


そして近くを歩いていた猫っぽい村人に居所を聞いた。

「あのぉ……。」

「おお! 純血様。」


村人の輝く顔を見ながら現代神は言葉を選んで話しかける。

「ええーと……湯瀬……プラズマ……様だっけ? ……にうちへ来いって言われたのですがおうち、どこだかわかりますか?」


「屋敷の事でございますか?」

「ええ……たぶん。」

「それならあの山のふもとですよ。」

村人はかなり遠くの山を指差した。


「遠いですね……。」

「そうですね。なんならわたくしが送りましょうか?」

猫の村人は猫によくありそうなまったりとした顔をすると骨格をコキコキとならしはじめた。


「え……?」

二人は驚いた。


猫の村人は骨格を変えて四足の大きな猫へと変貌した。


「さあ、乗ってください。私の足だと夜にはむこうにつきますよ。」

「あ……あの……お仕事の方は?」

「心配いりませんよ。純血様をお乗せしたという事が我々にとって名誉な事なのですから。」

「……。じゃ……じゃあ……遠慮なく……。」


ウキウキしている猫の人に対し戸惑いが少し生まれたが二人は恐る恐る猫の人の背に乗った。


「じゃあ、行きますよ。」

ノリノリな猫の人は爆発的な加速力で森を駆け抜け、垣根を飛び越えまっすぐ屋敷へと向かいはじめた。

上に乗っている二人はあまりのスピードにつかまっているのに精いっぱいだった。


「わたくしの祖先はチーターの血が入っているのですよ。ですから、足には自信があるんですよ。と言ってもプラズマ様の配下の犬の彼にはかないませんがね。」


猫の人は楽しそうに語っているが、二人は気を失いそうでそれどころではなかった。



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