表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お姉さん先生は男子高生に餌づけしたい。  作者: とーわ/朱月十話
第二部 第十話 球技大会と保健室
89/110

第十話・2

 しかし、クラスを出れば、まだ俺は『インテリヤクザ』として見られているままで。


「お、おい、海原……ここで会ったが百年目ってか、元気してたかよ」

「ちょ、それじゃ心配してるみたいじゃねーか……相手に塩を送ってる場合じゃねえぞ?」


 グラウンドでの開会式を終えたあと、俺たちはテニスコートにやってきた。三面あるテニスコートで、今日は一日中試合が行われるわけだ。


 そして一試合目で、B組のペアと当たった。


 顔自体には覚えはあるのだが、いまいち名前が覚えられていない――覚えるべきでないことは覚えない、それが俺の記憶術だ。


「……何で不思議そうな顔してんだよ。俺だよ俺、俺のことを忘れたのかよ?」

「海原よ、お前が忘れても俺たちは覚えてるぜ。ってか体育で一緒じゃねえかよ」


 校則ギリギリの茶髪にしたチャラめの男子生徒と、こちらもまた校則ギリギリのアッシュグレーがかった髪の男子生徒。どちらも進学校であるところの姉ヶ崎においては、『エンジョイ組』と言われるような、あまり勉強熱心でないグループの生徒だ。


「……んで、海原大明神。覚えてね―なら俺が教えっけど? ヒントはなんとか崎だ」

「ああ、そうだ……川……いや、浜崎だったか」

「山崎テツヤだ! ちょっといい感じの勘違いすんなコラァ!」

「山崎、慣れあってんじゃねえよ。今日こそ積年の恨みを晴らさせてもらうぜ……ちなみに俺の名前は長谷川だよ……!」


 また聞いても脳のメモリーが勝手に整理されて消えそうだが、もちろん名前を聞いても俺には恨まれる覚えは特にない。


「インテリヤクザの支配からの脱却だ……今日こそ革命起こしてやっからよ……!」


 何というか、Bクラスはこんな血の気の多い連中がいてよく普段は静かなものだと思う。


「支配とか脱却とか、テニスをする気が無いなら試合をスキップさせてもらうぞ」

「あぁん!? とぼけてんじゃねえよ……お前は支配してんだよ。恐怖で俺たちを支配し、モテカーストの上にまで立ちやがって……!」

「……モテ?」


 モテカーストという言葉自体も耳慣れないが、それの上に立っているとは一体誰のことを言っているのだろう。


 もしや、俺が先生に餌付け――もとい、弁当をお裾分けされているところを見られていたりして、それを勘違いされたなんてことがあったりするのか。


「海原、おまえ……俺の知らないうちに変わっちまってたんだな……」

「純……話がややこしくなるから勝手に傷つかないでくれるか」

「これが傷つかないでいられるか! 俺の心はダイアモンドじゃない!」

「身に覚えがないなら教えてやるよ、海原。お前が犯した大罪を……!」


 いつもは山崎がBクラスを代表して挑んできている気がするが、今日は長谷川の方がよく喋っている。俺が犯した罪とやらが人聞きの悪いものだったら、不本意だが実力行使でも学校中に広まるのは避けなくては――と、いつでも動けるように構えていると。


「姉ヶ崎高校、ミスコン隠れ一位……空野奈々海と通学した件について、海原、お前には説明の義務が……!」

「あ、あれは……知り合いだから、ちょっと世話になったというかだな……」

「待てよインテリヤクザ。あんなにべったり寄り添われて、甲斐甲斐しく自転車を押されて、それでちょっと世話になったなんて……羨ましすぎだコラァ!」

「「いいぞ山崎ィ!」」

「「かましたれ山崎ィ!」」


 ギャラリーがあからさまに暴力を促しているのだが――テニスコートを見ている先生は多少のことには動じないおじいさん先生で、介入してくる気配はない。これくらいで引くようなら、これまで比較的平穏な学校生活は送れていないが。


「……で、どうなんだ。何か申し開きは?」

「俺は何もやましいことはしてないが……空野先輩に迷惑がかかるから、変に騒ぎ立てられるのは困る。いいだろう、相手してやるよ」

「ひぃっ……ど、恫喝か……それくらいじゃこっちも引かねえぞ……!」

「ガチのマジのヤクザじゃねえかよ……膝関節がバカになっちまったぜ……!」

「それはもうテニスしない方がいいんじゃねーの? ってわけにもいかねーんだろうなぁ。人気者は大変だな、海原」

「言ってろ。やるからには勝つぞ、純」

「おう。二度とメガネを直視できない身体にしてやろうぜ」


 純はいつも軽いノリだが、一つ信頼できるところがある。


 それは、肝心な時に空気を読むということ。そして、やたらと友情に厚いということ。


 ――と、これでは二つになってしまった。


 つまり何が言いたいかというと、上杉純というやつは俺にとって数少ない、一緒になって熱くなってくれる友人だということだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[良い点] 第二部 第十話 球技大会と保健室 第十話・2 更新ありがとうございます。 書籍2巻の表紙イラストも、なかなか刺激的で…。 [気になる点] 海原君の巻き込まれ体質爆発。 [一言] 次回の…
[良い点] ヒロイン4人だったかなぁ?幼馴染以外は今の所ほのぼの展開があっていい感じで読ませてもらってます [気になる点] ちょっと展開がゆっくりで先生は立場があるのでわからなくもないですがそろそろ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ