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序章3

翌朝、まだ空が白み始めた頃に宿屋についている朝食を食べずに部屋を出る。証拠もなにも残さず俺は颯爽と街を出る。そう、扉を壊したのを気付かれぬ為にな。



街は静かで人で活気づくまでまだしばらく時間はかかりそうだな。やることもないのでもしかしたらと思い市場のほうに足を向ける。

スッとした朝の清々しい匂いと朝焼けのオレンジとすこし紫がかった雲の色合い。いつも見ていた空の色もこうして違う土地から見上げるだけでずいぶんと変わって見える。




カツカツと響く足音を聞きながら階段を降りて行くと所々だが、屋台が稼働し始めているのがわかる。



「へぇーもう空いてる屋台もあるんだな」

市場の屋台で食欲のそそる匂いを放つ肉の串焼きで腹ごしらえをしながら練り歩く。



すると屋台を出店している人でもなければ、業者でもない朝っぱらから似つかわしくない煌びやかな服装の女子を見かけた。

その子の腰まで伸びた黒髪は朝日を浴びてキラキラと輝き、服装も相まって品の良さがオーラとして出ていた。



「あのー、すいません。」

すれ違いざまにその子をみていると唐突に声をかけられた。


「うぇ?」

まさかのことに間抜けな声をだしてしまう。


「あなた、昨日ここでアンブラウス家の貴族であるトルタス様を失神させた人ですよね?」

暖かさを浴びたような優しい声なのにまさかの聞きたくもない話を聞いてくる。


「うぇ?あ、い、いえ、違いますよ?えー」


「いえ、私は見ました。あなたで間違いありません。」

彼女は確信したと、そんな表情でぐいぐい近寄ってくる。やばい、これは逃げないと!

俺がダッシュの構えで逃げようとしたところまさかの反応がくる。




「かっこよかったです!凄く!だって絡まれていた女の子を救うためにわざわざ助けに入るなんて、私感動しました!」

キラキラとした瞳で俺に熱視線を送ってくる。


「えぅ?」

もっとおかしな声を出してしまう。


「かっこいい?俺が?」

上ずった声で聞いてしまう。


「はい、とても素晴らしい行いだと思います。」

ニッコリと微笑む彼女の後ろから朝日が照らしまるで天使のように見えたのは俺の錯覚か?

こんなにも可愛い女の子に褒められるなんて、どうゆうこと?ま、まさか彼がモテ期!?ついに到来したのかモテ期がぁ!



「あ、ありがとう。まぁ当然のことをしたまでですけどね。困ってる人がいたら助ける。人として当たり前なんですよ。悪は即座に断つ。これが我が家の家訓でしてね。」


女性にここまで褒められるのなんて9歳この頃、近所の家に住んでたおばあちゃんの犬を一日中面倒見てて褒められて以来だ。




「ほんとに素敵です!よろしければお名前を教えてもらえないでしょうか?」

キラキラした瞳を向けられて誰が断れようか、否、断じて否である。

「俺はキリアス・ユーリ今年から魔法学校に入学する新一年だ。君は?」

すると彼女は目を丸くさせて手を口に当てている。

「そうなんですか!私もなんです!私はカイリス・ユフィ、今年から入学する新一年です。よろしくお願いしますユーリ。」



後ろで手を組みながらニッコリと微笑みを向けてくる。そのユフィから漂ってくる花の匂いはまるで俺らを中心に花々が咲き誇ったと思わせるほどいい匂いだった。




「よかったら朝ごはんでも一緒にどう?ちょうど屋台も開店し始めたし。」

この出会いを無駄にするわけにはいかない。絶対仲良くなってやるんだ。

「あ、すいません。このあと家族で朝食の約束がありまして、ここには少し散歩に来ただけなんです。」

シュンとうなだれて申し訳なさそうに上目づかいで見てくる。可愛いすぎない?これ。



「いや、それなら仕方ないよ。じゃあ、また学校で会おう。」


「はい!!また学校で会いましょう!」



向日葵のような咲き誇る笑顔を俺の脳裏に残して彼女は去っていった。

まさか、これが恋する気持ちか?

なにも飲んでないのに翼を授けられた気持ちだ。



「ふへへへ。」

俺はそんな気持ちの悪い声をだしてからか朝食をすませると指定されていた駅に向かった。






またも戻ってきた。『グランクラン駅』

早めについてしまったが、列車は来ていたようでガラガラの車両に入り適当な窓際の席に座る。

出発まではあと30分ほど時間があるので弁当を買っておくことにする。この街はいろいろな文化が混合した街なので、パンやらお米やら麺やらとそれはもうさまざまな料理のお弁当が販売していたので、サンドウィッチを選び俺は出発を待つ。

ここから約3時間ほどで魔法大国イスラランカ王国の国立魔法学校に到着する。


などと思っていると新入生だろう生徒が続々と列車に乗り込んでくる。

ん?あの貴族ぼっちゃま!こっちにくるなよ。こっちにくるなよ。こっちにくるなよ。……。

ふぅ俺の念が通じたのかあいつは後ろの方の車両に向かっていった。




「失礼。ここに同席させてもらっても良いでしょうか?」

っと透き通るような綺麗でだけど儚げな声が俺に話しかける。

「あ、はい、どうぞ。」

4人がけの席なので俺に拒否権などはなしで、どうぞ、どうぞと手で席へと促す。

「ありがとうございます。」




その子は窓際に座ってた俺とは対角線上の向かいに座る。

白髪の女の子で髪は胸の少し上あたりまで伸びている。整った顔で筋の通った鼻に薄紅色の唇、そしてほどほどにある胸の膨らみ、だけどいかんせん無表情すぎる。手荷物を上にあげたりして、腰を据えると無表情のままただじっとしてしまった。



話しかけないほうがいいかな?


「すいませーん。ここの席座っていいですか?」


いつのまにかどんどん人が増えてきているようで多くの学生が列車に乗り込んでいるのが窓から見えた。


「あっどうぞ、どうぞ」

と言ったものの話しかけてきたのは2人組のらしい。俺が2人が座れるように移動しようとしていたら。

音もなく風吹くようにスッと白髪の女の子は隣に腰を据えた。



「ありがとうございます〜」

2人の女の子はそういうとキャッキャとしながら前の席に座った。



もう出発2分前くらいだ。ワクワクした気持ちで窓の外に目を向ける。ん?なにやら知った顔が……。

宿屋の主人!!俺は慌てて左の窓から右に向けて、早く出発しろ!っと心で唱える。ここで見つかるわけにはいかない、早く、早く出ろー!!


すると、プフォォォォォオっと大きな汽笛が鳴らされる。



宿屋の主人がなにやら駅員に話しているのをちらりと横目で見ながら俺は魔法学校へと旅立った。



しばらくして落ち着くと、迎えの女の子が話しかけてきた。



「初めまして。私はコーネリウス・ダミアンよろしくね!」

っとキラキラ光る金色の髪をした、活発そうな女の子が自己紹介を始める。


「私はブレミアン・ミュウニよろしく。」

っと隣に座る、おっとりとした、少し色を抑えた金に近い茶色の髪をした女の子が自己紹介をしてくれた。

見た感じ同い年ぐらいだろうがここは敬語を使っておくのが無難だな。


「俺はキリアス・ユーリ、です。よろしくお願いします。」



「敬語なんか使わなくていいのに、この列車はみんな新一年生なんだから」

ダミアンはそう言ってニッコリと微笑む。



「え?そうなの?」

っと俺は聞く



「そうそう。今日登校するのは新入生だけだからね、今日はたしか、魔力測定と基礎能力テストだったかな。」

ダミアンは首を傾げながらそう教えてくれた。


「それで、あなたの名前は?」


ダミアンは俺との会話が終わると隣の白髪の女の子に自己紹介を促す。そういや、あまりの存在感のなさに一瞬忘れてた。


「アイリス。よろしく。」

それだけ言うとこくっと頷き、話は終了とばかりにカバンから本を出し読み始める。


こいつ、コミュニケーション取るかゼロかよ!

ってかこの状況、これって、もしかしてハーレム?これがハーレムって現象かよ!隣の白髪の女の子は置いといて、前の2人は話しかけても大丈夫そうだし、ここはひとつ話しかけて、



っと前を見たら2人はなにやら2人にしかわからない何かで盛り上がっているようなのでそっとしておくことにした。




しばらく時間がたちお昼時だ。

それから話しかけることもなくただぼーっとしていたが、前の2人がお弁当を広げ始めたので俺もお昼を取ることにする。



買っておいたサンドウィッチを取り出し食べようと包んでいるセロハンを剥がそうとしたら、

「サンドウィッチも買ったんだ、何味?」

突然に聞かれて驚いたが、会話のきっかけを放ってくれたので返さない訳にはいかない!



「あ、これはなんかおすすめにあった玉子ハムソーセージサンドで、ハムもソーセージも似たようなもんだしハムでまとめとけよって思うよねー」

軽く小ボケをかましてのひとことこれはいい反応が返ってくるはず!チラと前の2人に視線を向けると、


「……。」っと2人してポカンとしていた。ふとダミアンの手元を見るとサンドウィッチがあり、どうやら弁当とサンドウィッチを食べるようだ。



「そ、そうなんだ、たしかにハムでまとめてもいいかもね。」

ハハハーっと前の席の2人は苦笑いを浮かべていた。



は、恥ずかしい!!!くっそー!!俺は恥ずかしさのあまりに出た涙を「これカラシ効きすぎだな」などの小さなひとり言で誤魔化し外を見ながら食べる。

すると隣の白髪の女の子は笑い堪えるようにクックっと声を漏らし肩を震わせていた。


あー帰りたい。




しばらくすると話し疲れたのか前の2人は寝てしまい、俺は特にすることもないのでぼーっとしている。




「ねぇ、……ねぇって!」

あまりにふわりとした声なので気づかなかったが隣の白髪の女の子が俺に話しかけていた。

「あ、ごめん、どうした?」



深海のような瞳が俺を見つめていた。

「ユーリは何のために学校にいくの?」


まさか話しかけてくるとは思わなかったな。必死に解答を模索して振り絞る。



「うちの家、漁業だから手伝えたらとか思ってたけど今はいろいろ学んで、もっと知識をつけてなにになれるか考えたいかなーって」



「そうなの、私は力をつけたいの。誰よりも強く。」

自己紹介のときと同じトーンで俺にそう告げた。



「強くって、国の部隊とか冒険者とかギルドに入ったりするのか?」

この子、アイリスの見た目とは正反対の意見だなと思い目指しているものについて聞いてみると、


「んーん、ただ強くなりたいの、それだけ。」


「それだけなの?」


「そう、それだけなの。」

ふわっと窓から入ってくる風にゆらゆらと前髪が揺れる。髪を耳にかけながら彼女はふわりと微笑むと、深海のような瞳を閉じ「いい風だね。」っとひとり言のように言う。


また勘違いで返答して笑われるのは嫌だったが、起きているのは俺たちだけだし、それに一応は返事しないと、っと思い「そうだね。」っとひとり言のように返しておいた。


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