チーム2 wolfs
「祖父江ええええええええ!てんめえまたやりやがったなあああああ!?」
「うるせえぞ宗田あああああ!お前に関係ねえだろうがあああああ!!」
きーーーんと耳を通り抜けていく怒鳴り声に、鈴音は顔を顰めた。
「ちょっとお…うるさいんだけど…」
それに便乗するように奏也が眉をひそめる。
「鈴音がうるさいって言ってるじゃないですか。静かにしてください。」
すると唯一の良心である海が4人を嗜める。
「まあまあ、あんまり大声出すと周りに迷惑だから、な?ちょっと落ち着こうな。」
「滝田!でも宗田が勝手に怒鳴りつけてきたんだぞ!?」
「あ!?祖父江が勝手に糞野郎どもと戦うからだろうが!てめえは遠野かおら!!!」
「うんうん、エリナもやむを得なかったんだな。翔悟も心配なのは分かるけど怒鳴るのは良くないぞ。」
「そ〜だよ。うみくんの言う通りでしょ?喧嘩はだめー。」
鈴音がエリナの後ろにまわり、エリナを抱きしめる。
「うわっ。お前何なんだよ、ベタベタしやがって…。」
「ん〜。やっぱりえりなは閉じ込めたいなあって。とおっても鈴音好み。」
「はあ?なんだよそれ。」
ふふふふふ、と怪しく笑う鈴音を奏也が少し不機嫌そうに止める。
「駄目ですよ、鈴音。僕は鈴音が誰かを閉じ込めることを許した覚えはありません。エリナを閉じ込めたいならまず僕に許可を取ってください。」
それに面倒くさそうに相槌を打ち、鈴音は言った。
「お兄ちゃん閉じ込める許可をクダサーイ。」
「許可。」
今のやり取りはなんだったのか。奏也は即答した。
「…いや茶番は他所でやれよ!!!!!」
「ナイスツッコミしょうごくん〜。」
「はは、みんな仲良しだなあ。」
若干の温度差はあるものの、結構いいチームなのだ。だがまあ、翔悟とエリナの仲の悪さは…ご愛嬌だ。
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「っくっそ…。何だよいきなり…!」
先程まで談笑していたはずが、いきなり戦争が始まった。廊下に出たエリナが突然襲われたのだ。咄嗟に刀を抜き、致命傷は回避したものの、腹に深傷を負っている。勿論リーダーの翔悟が異変に気が付かないはずもなく、すぐにwolfsは戦闘態勢に入り廊下へと出た。
「祖父江、動けるか。動けるなら滝田の後ろに…」
「はっ、ナメんじゃねえよ。こんくらいっ…余裕だっつの。」
挑発するように笑い、翔悟を見上げる。
「…いい度胸だ。後でたっぷりしめてやるよ!」
「どっちがだバーカ!」
勢いだけで突っ走り、相手を斬りつける2人。敵サイドは2年生。キツイと言えばキツイ。
「う、やべ!」
翔悟の目の前に現れたのはアサシン。隠密行動が得意な厄介な存在。1年B組には在籍しない。小刀で腹をやられそうになる。
「…。ほんっとうにうちのリーダーは危なっかしいなあ!目が離せない!」
それを弾いたのは海だった。にっと愛想のいい笑顔を浮かべる。すると後ろから奏也が飛び出してきた。
「全く。翔悟とエリナにだけいい格好はさせませんよ。僕にだって少しくらいカッコつけさせてください。」
鎌を振りかざし、アサシンを仕留める。
「ねえ、貴方後ろから来るなんてすごく卑怯。でも、そういう人だあいすき!」
鈴音の背後に忍び寄っていた槍使いを鈴音は振り返らずに鎖で捕まえる。そして締め上げながら後ろを向いた。
「…残念。顔がタイプじゃない。」
そしてそのままため息をついて殺してしまった。
「お前らいつの間に追いついたんだよ…」
エリナが苦しそうに腹を押さえながら聞くと海は眉を下げた。
「ん〜、2人が走って行ってその数秒後には俺は追いついてたよ。」
「結構はやかったんだな。」
翔悟が言ったとき、隣に立っていたエリナがどさりと倒れた。
「っおい祖父江!?」
「えりな!?」
慌てて翔悟が抱き起こすと鈴音が駆け寄る。
「…はぁ…はぁ…」
苦しそうな吐息に奏也が苦い顔をした。
「…毒性ですね。多分呪術の一種でしょう。急がなければエリナが危ない。」
「はやく保健室に運んでやりたいところだけど…まだみたいだな。」
海が睨みつける先には残り3人となった敵。
「俺が、祖父江を守る。お前らは戦いに専念しろ。」
「大丈夫、なんですか。」
不安そうな奏也に、翔悟はニヤリと笑った。
「当たり前だ。俺はwolfsのリーダーだぞ?チームメイトくらい守れて当然。」
「…えりなのこと、よろしくね。うみくん援護お願い。」
「了解!」
鈴音が1番に敵に向かい、それに海も続く。奏也が軽く助走をつけて飛び上がった。
「んじゃあまあ…」
「「死ね。」」
鈴音と奏也。2人は双子。阿吽の呼吸で相手を粉砕することが可能だ。2人が相手を拘束し、斬りつけたことを確認すると海が鈴音たちの前にたち、衝撃に備えた。
「…相変わらずすげえ威力!」
奏也の鎌は、一見軽そうに見えて一撃がかなり重いのだ。
「リーダー!そっちは?」
「っ、悪い、今、余裕ねえ!」
いつの間にか剣士が1人逃げ出していたようで、片手にエリナを抱えた翔悟を襲撃していた。
「おら、よ!」
ばちばちと稲妻の走る剣が相手の鳩尾に入ったらしく、相手は崩れ落ちた。
「…終戦か。」
「はやくエリナを保健室に!」
「俺がこのまま連れてく。お前らは事情説明しといてくれ。」
そう言うと翔悟はエリナを抱き上げ、保健室へと足を進めた。
「…あの2人、実は仲良いよねえ。」
「ですね。」
「だな。」
3人は仲良く教室へと入っていった。
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「んん…」
終戦から一時間後。エリナが目を覚ました。
「おー。やっと起きたか祖父江。」
「…はっ!?」
翔悟に驚いたようでガバッと起き上がる。
「元気だな。」
「なんでお前がいんだよっ…!つか戦争は!?」
「戦争は勝った。たまにはお前に恩を売っとくのもいいと思ってわざわざ運んでやった。」
「はあ!?頼んでねえんだけど!」
「はん!ザマァみろ!」
ぎゃーぎゃーと喧嘩を始めた2人は、授業を終えた海たちに保健室からつまみ出されたわけだが。
「はいはい、喧嘩するほど仲がいいってな。」
「「どこがだよ!!」」
今日もwolfsは平和なのだった。
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宗田 翔悟
性別 男
名簿番号 6番
武器 刀(一刀流)
特徴 エクスカリバーのような大きな剣が最大の特徴。魔導師の素質は昔捨てたが、名残で剣に稲妻が走ることも。ヤクザのような男で口も素行も悪い。実力はピカイチ。実は母子家庭で妹がいる。妹には優しい。
祖父江 エリナ(そふえ えりな)
性別 女
名簿番号 7番
武器 刀(二刀流)
特徴 基本的に一本しか剣を出さない。自分が死にかけのとき、またはピンチの時しか二本目を解禁しない。翔悟とは喧嘩するほど何とやら。現役ヤンキー。タバコとかのルールは守る。実は父子家庭で弟がいる。料理が得意。
滝田 海
性別 男
名簿番号 8番
武器 盾
特徴 1番の七瀬に守備範囲は劣るものの、強度が違う。根性があるため、力を抜かない。苦労性でいつも翔悟やエリナに振り回されている。それもまあいっかと思っいる。このチームで一番まとも。
橘 鈴音
性別 女
名簿番号 9番
武器 鎖
特徴 鎖で捕まえてそのまま締め上げる。顔が可愛い。しかしヤンデレ。暴走したら監禁までいく。対象は様々。女も男も関係なく、執着しては離れ、執着しては離れを繰り返す。特定の相手がいないからこそ敵にも被害が出ることもある。
橘 奏也
性別 男
名簿番号 10番
武器 鎌
特徴 鈴音の双子の兄。顔がかっこいい。鎌で相手をざっくり斬りつけたり、内側で捕まえたりする。鈴音と同じヤンデレ。妹が傷付くことを何より嫌い、また暴走の素となる。暴走したら鈴音以外の誰にも止められない。