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吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第一章 ズッカ編
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8話 晴れ、ときどき殺スライム

「ということで、これからスライム殲滅作戦を開始する」

「りょーかい! なのです」

「作戦は、スライムのいる草原に行く。スライムを殲滅する。スライム核と王冠を手に入れる。以上だ」

「クロム隊長!」

「なんだ、ルーナ隊員」

「それを作戦というのでありますか」

「作戦だろう?」

「そうなの?」


 ルーナが「作戦は?」とか言うのでとりあえず言ってみたが、何だその「クロム隊長!」というアドリブは。

 何か無駄な時間を過ごした気がする。しかし緊張感の欠片も無いな。

 まあ緊張感なんて、有っても無くてもルーナがすることは何もないけどな。



 こうして変な時間を無駄に過ごした後、俺とルーナを乗せてスライムがいるであろう草原へと向かった。




「おいおい、予想以上どころじゃないな」


 草原に着くと、予想をはるかに超えた大量の水色のスライムがウニャウニャと蠢いていた。200匹くらいと予想していたが、その倍はいそうだ。

 

「うへ、なんかキモいね」


 ルーナに至っては呆然としている。

 この世界のスライムは、某人気ゲームシリーズのスライムと形は同じだが、目や口がない。ついでにグミ感もない。微妙にぐにゃっとしている。そしてそれが大量にいる。

 それだけであのファニーなスライムが、一気にグロさ百倍になるから不思議だ。


「で、ルーナはどうすればいいの?」

「そのまま乗ってろ」



 さて、どうしたものかな。

 百や二百なら適当に切り裂いて終わろうかと思ったが、この数じゃ面倒だ。魔法でさっさと片付けるとするか。

 自分でも自分の魔法の威力がわからんから適当にやってみるか。じゃあ、この辺でっと。

 あ、いや何か技名を叫んだ方が様になるな。



 「“氷柱の雨ジュビア・デ・カランバノ ”!」


 俺が、唱えなくてもいい今考えた技名を叫ぶと、空中に氷柱が数十出現しスライムどもに振り注ぐ。鋭く尖った先端は柔らかなスライムを貫き地面に突き刺ささり、そして消えていった。

 断末魔の叫び声、飛び散る内臓と血しぶき、阿鼻叫喚の世界。というものもなく、数十体のスライムが「キュイ」とも「ピュイ」ともつかない小さな声を上げ、淡く青みがかった体液を吹き出し次々と萎んでいく。



「これ位でこんなもんか。じゃあ、これでどうだ。 “氷柱の嵐トルメンタ・デ・カランバノ”!」 」


 先ほどの十倍ほどの魔力を込め魔法を放つ。


 無数の氷柱が上空を埋め尽くし、そして数百いる全てのスライムへと降り注ぐ。

 ちなみに今回もテキトーに決めた名前だ。


「すごいね、クロム! あんなにいたスライム、全部倒しちゃったよ!」


 

 残念ながら全部ではない。

 スライムの残骸の中心に、数倍大きい淡い山吹色のスライムが一体生き残っていた。

 頭には金色の王冠のようなものが載っている。


「あれがクイーンスライムだな」


 生意気に結界でも張っていたのだろう。魔力を数量に振った氷柱の威力では、その結界を貫けなかったようだ。



「しかたないな、もう一発か。 “氷柱の槍ランツァ・カランバノ”!」


 一本の氷柱をクイーンスライムの真上に出した。

 今度は最初の魔法の倍程度だが、魔力を一本に凝縮してみた。スライムごときの結界ならこれで充分だろう。


 氷柱は難なく結界を破壊し、そのままの威力でクイーンスライムを貫く。

 少々威力が強すぎたようだ。

 クイーンスライムは山吹色の体液をあたりに撒き散らしながら萎んでいった。


 後に残ったのは大量のスライム核とクイーンスライムの王冠、そして辺りに漂う魔素。俺はその魔素を吸い込んだ。スライムの魔素量といえど、数百もあれば充分すぎる。

 しかし、ほぼ吸い切ったはずなのに、まだ魔素の気配が消えない。というより、かなり高濃度の塊りがある。


「ルーナはそこにいろ。ちょっと調べてくる」


 後ろで俺が魔素を吸い終わるのを待っていたルーナに、そう声をかけた。

 人間に高濃度の魔素は危険だ。不快感や頭痛、めまい、呼吸困難で命に係わるようなこともあるらしい。

 ルーナを待たせ、高濃度の魔素の気配を探す。


 

 クイーンスライムの王冠の傍に“それ”はあった。

 王冠の傍には黄色い球、そしてもう一つ黒い球があった。黄色い球はクイーンスライム核だろう。

 一方の黒い球から、高濃度の魔素の気配は溢れている。どうやら濃縮された魔素の塊りのようだ。

 俺はそれを結界で封じ、魔法で異空間へと放り込んだ。


「大丈夫だ、来てみろ王冠があるぞ」


 ルーナは俺の声を聞き、傍にやって来て、王冠を手に取り珍しそうに眺めていたが、ふと先ほどの俺の魔法を思い出したようだ。



「ねえ、クロム。そういえば、魔法使うとき何か言ってたよね」

「ああ、なかなかカッコいいだろ!」


「あの“コロンダノ”って何?」


 

 ……いや、転んでねえよ。いつも転んでるのはルーナだろ。


「全然違う。“カランバノ”な! 氷柱って意味だ」

「そっか。そっちなら、かっこいいね!」


 なんだ「そっちなら」って。ルーナが勝手に間違ってるだけじゃねえか。

 だいたいコロンダノってどんな魔法だよ。



「そんなことより、スライム核を集めないと金にならんぞ」

「それは勿体ないのです。すぐ集めましょう」


 あいかわらず変わり身が早いな。

 だが、拾い集めてたら日が暮れてしまう。


「集めるのも魔法でやるけどな」


 俺は風を操り、スライム核を集めた。

 数百ののスライム核の山は、さしずめ山盛りのイクラだ。水色なのが残念で仕方ない。

 集めた大きなイクラ、いやスライム核を先ほどの魔法でまた異空間へまとめて放り込んだ。


「あれ? 消えた!?」

 

 何も知らないルーナには、スライム核の山が突然消えたようにしか見えない。


「俺が異空間にしまっただけだ。すぐ取り出せるぞ」

「クロムって便利だね! アイテムバッグとかいらないね」


 俺はアイテムバッグじゃないぞ。


 そんなことよりさっさとここを立ち去らないと、例の冒険者のパーティーとかち合うな。

 別段かち合ったから何だという訳ではないが、色々とややこしい状況は避けるのが得策というものだ。


「というわけでルーナ、さっさと帰るぞ。乗れ」

「どういうわけか分かりませんが、了解!なのです]


 ルーナは俺の背中に乗ると、来た時のことを思い出したようだ。


「来たときよりゆっくりでお願いしますです」

「おう」


 俺は来たときより少しスピードを落とし走り出した。




「ゆっくりね…って! あばばばくぁwせdrftgyふじこlp―」



 来たときよりはゆっくりだろ。少しだけだが。


 俺のオサレな魔法の技名を“コロンダノ”なんていうやつでも契約者かいぬしだからな。

 アイテムバッグ扱いされても契約者かいぬし様だからな。


 嫌がらせではないぞ。


タイトルは 晴れ、ときどき殺人/赤川次郎 より拝借しました

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