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吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第一章 ズッカ編
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7話 黒い猫の背に乗って

「もしかして、お金がないの?」


 固まってるルーナにエフィルが声をかけた。


「うぅぅ、1レオネもないのですぅ」


 ない、はずだ。

 肉まんすら二つ買えなかったのだから、100レオネどころか1レオネ、いや50ゼントも怪しい。

 不本意だがジャコモの所に先に行って、金を借りるしかないか。冒険者の登録証タグを見せつけようと思ったが、この際しかたない。

 俺がそう考えていると、エフィルが何やら素敵なことを言い出し、言われたルーナは若干困惑気味に質問をした。


「では仮登録ということで、手続しましょう」

「仮登録って、お金掛からないのですか?」

「掛からないというか、後払いですね。高位持ちハイスペックの方では初めてですけど」


 なんだその貧乏人救済システムは! そんなのがあるなら早く言ってくれ。

 だがよく考えたら、金がないからこそ冒険者になるというやつも少なくないのだろうから、あっても不思議ではないな。


「ただし、登録料を全額払うまでは登録証タグは発行しませんよ」


 それはそうだろう。世の中そんなに甘くはない。しかし俺には考えがある。

 問題ない。…はずだ。


『ルーナ、そのまま仮登録しろ』

「ふぁ! ふぁい」


 念話で話しかけるといちいち驚くのはやめてもらいたい。


 仮登録自体は、誓約書を書いたのでそれで終了のようで、口頭で伝えただけだった。。

 ではさっさと次の行動に移ろう。

 

『よし、じゃあ掲示板で魔物情報を見て、さっさと魔物退治に出かけるぞ』 

「え? ジャコモさんのトコは?」

『そんなのは後回しだ。金を稼がないと今日は野宿だし飯も食えないぞ』

「そ、それは嫌なのです。…ところで何で念話なのです?」

『あまり話せないということにしておけば、都合がいいからな』

「そうなの? わかった」


 ちょっと話しただけでも驚くなら、今の会話を普通にしたらもっと驚くはずだ。長い会話は難しい、くらいに思われた方がいいだろう。


 それはともかく、さっさと探そう。

 ルーナに抱きあげてもらい掲示板を見ると、一番目立つところにこんな依頼があった。


   【クイーンスライムおよびスライムの討伐依頼】

  場所:シュガル村郊外の草原付近

  報酬:

  スライム核5レオネを10レオネに増額

  スライム核50個につき100レオネの報酬

  クイーンスライム核50レオネを100レオネに増額

  クイーンスライムの王冠3,000レオネを5,000レオネに増額

  ※スライムの数が多いためパーティーでの討伐を推奨します



 パーティーでの討伐を推奨しているだし、相当な数発生しているに違いない。一人でやるならかなり美味しいはずだ。


『ルーナ、このスライム退治をエフィルに詳しく聞いてみてくれ』


「りょーかい、なのです」



 ルーナは俺を抱いたまま、受付に戻りルーナにスライム退治の件を尋ねた。


 「クイーンスライムの討伐なら今朝来た依頼ですね。シュガル村付近でクイーンスライムが異常状態になり、スライムが大量発生しているそうです」

 

 スライムはクイーンスライムから生み出され、スライムの巣という適度な集団を形成する。いわば蜂や蟻みたいなもんだ。

 しかし、何らかの理由でクイーンスライムが異常状態になると、スライムをどんどん生み出すことがあるらしく、クイーンスライムを倒すか、異常状態が解消されないとスライムの増殖は収まらない。


「でも1時間ほど前に一組のパーティーが出発してますよ。徒歩のようでしたから、まだつかないとは思いますが」


 エフィルいわく、シュガル村はここから南へ歩いて2時間以上かかるらしい。


「あと、かなりの数のようなので一人ではちょっと無理だと思いますよ」


「だってよ、クロム。どうする?」

『問題ない。さっさと行くぞ』


「問題ないそうなのです。では、いってきまーす」

「あ、はい。いってらっしゃい」


 ルーナの、まるでピクニックに行くかのような間の抜けたあいさつに、エフィルは思わず返事をしたようだ。

 こうして俺たちはギルドを後にした。






「さて、この辺でいいだろ」


 ここは、ジャコモの町から少し出た人気の無いところだ。

 俺はルーナの腕の中から飛び降りると、そう言ってルーナが乗れるほどの大きさになった。


「えっ! ク、クロムって、大きくなれるの?」

「なれるから大きくなってるんだろ。いいから乗れ」


 何か言いたげな顔をしたが、ルーナは俺の背中に恐るおそる乗ってきた。


「大丈夫? 重くない?」

「大丈夫だ。それより頭を伏せて落ちないように掴まってろよ。飛ばすからな!」

「うん。わかった」


 ルーナは俺に覆いかぶさるようにして俺につかまる。程よい大きさの胸の感触が背中に―

 

「クロム、何か言った?」

「いや、なんでもない」


 危うく心の声が念話で漏れるところだった。気を付けよう。


「さあいくぞ!」


 よこしまな心を誤魔化すかのように俺は走り出した。

ルーナのウェーブのかかったショートヘアが、風になびいて銀の波のように踊りだす。


「ちょ、クロむ、くぁwせdrftgyふじこlp!#$%&――」


 背中で何か叫んでいるようだが、気にしない気にしない。





 30分ほどで目的地の草原近くの森に到着した。

 途中で冒険者の一団のようなものを追い越したが、あれが先発のパーティーだったのだろう。少し遠くでスライムらしき魔物の気配はするが、人の気配はないようだ。



 さて、そろそろルーナを起こそうか。


「おい、いい加減に目を覚ませ」

「早いです〜。早すぎるのです〜、ムニャムニャ―― はっ、あれ…! ココはドコ?ワタシはダレ?」



 ここはシュガル村の近くで、お前はルーナだ。

 気絶してるのかと思えば、寝てんじゃねーか、なかなか図太い神経だな。


「よだれは拭けよ」



「………ふぇい」



 これが契約者かいぬしとは先が思いやられるな。



 選んだのは俺なんだけどね。



タイトルは、中島みゆきの曲「銀の龍の背に乗って」から拝借してみました


お金の価値 1レオネ=約100円、補助通貨1ゼント=1円、100ゼント=1レオネです

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