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吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第一章 ズッカ編
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1話 吾輩は召喚魔(ねこ)である

 吾輩は召喚魔ねこである。


 名前は……まだない。




 ある日事故で死んだら、前世の記憶を持ったままこの世界の“召喚魔”というものに生まれ変わってしまった。

 前世は、金も希望もない三十過ぎのフリーターという社会の底辺層だったのだが、今は召喚魔の中でも高レベルの存在らしい。胸元が銀色の長毛という黒猫の姿も、かなりいい感じで気に入っている。

 なぜか標準形態が普通の猫より小さいというのは、威圧感に欠けるような気もしないではないが…

 そういえば死ぬ直前に「死んだらネット小説みたいに異世界転生なんていいな。いや、猫に生まれ変わるってありかも?」などと変なことを考えた気もする。

 神様もこんな時だけ願いを、しかも二つとも叶えてくれなくてもいいと思うのだが……。



 今いる所は召喚契約前の召喚魔が存在する空間にある、部屋のような光の球体の中だ。

 そろそろ俺の担当者がやって来る頃なのだが、暇なのでこうして誰にともなく自己紹介している。



「お邪魔してもいいですか」


 やっと来たようだ。

 光の壁の中から白いローブを着た女性、俺の担当者フェルナが入ってきた。

 彼女は神の下で働く天使の一人らしい。ただし性別はあるようだし輪っかも羽もない。

 

「そろそろ貴方も、いい加減に召喚されて欲しいんです!」


 彼女は開口一番そう言った後、矢継ぎ早にまくし立てた。


 「貴方は前にも言ったように異世界からの魂ってだけで高位になっちゃうのに前世の記憶持ちのせいで無駄に高いんですよ。ですからただでさえ貴方のレベルに釣り合う契約希望者なんて一握りなんですよ。……だというのに」

 

「何なんですかこの条件は!」


 

 フェルナは何をそんなに怒っているんだ? 俺が出した契約主の条件は“純朴でドジっ娘属性の美少女限定”ただそれだけだった筈だが……


「純朴とか美少女とかはまあ良しとしましょう!けど何なんです?このドジっ娘っていうのは!!」


「いや、ドジっ娘はドジっ娘だろう」


「そんな事を言ってるんじゃなんです! いいですか?ドジっ娘なんて“高位召喚契約所”に来ると思いますか? ドジっ娘が貴方のレベルとバランスが取れると思ってるんですか? そもそも何でドジっ娘属性限定なんですか! いくら異世界の記憶持ちだからって変なトコにこだわらないで下さい!」


 そんなにがんがん言わなくてもいいんじゃない? 疲れてるの?


「いや…しかしドジっ娘はゆずれ―」

「とりあえず!もう数日考えてくださいね!」


 いやジト目はやめよう、ジト目は。そんな目で見られても譲れないものは譲れない。



 絶対にだっ!!







 この世界は人族、エルフ、ドワーフ、獣人族そして魔族と魔物が存在する。

 人族は高度な魔力を持つ者は少なく、ほとんどの者は生活魔法と言われる程度の魔力しか持たない。

 そのため神の造りし召喚魔と契約をするにより、より高度な魔法を行使したり行使させることで、他の種族と同等の力を得ることが出来る。

 契約者と召喚魔は契約召喚法により行われ、一般的には契約者の心・技・体がより高い者ほど高位の召喚魔と契約できる。

 高位の召喚魔と契約する場合は、高位召喚契約所で儀式を行う。


 

 暇なのでお勉強をしているのだが、そろそろ数日とやらが経過しているでフェルナが来てもよさそうだ。




「お邪魔してもいいですか」


 噂をすればなんとやらだね。いつも通りの台詞でフェルナが入ってきた。

 

「考え直してくれま――」

「ドジっ娘は譲れん」


「ああ……やっぱりですか」


 だからジト目はやめてって。


「前回はああ言いましたけど、実は最近ダメ元で高位召喚契約所を訪れる人が増えてるんですよ。一応召喚出来なそうな人でも門前払いは出来ないので、一度だけは試せるんです。で……先ほどこういう契約希望者がやってきました」


 目の空間に少女の姿が映し出された。


「彼女はルーナ、15歳です。美少女かどうかは貴方次第です…」


 美人というより、かわいいと言った方が似合いそうな、短めのくせっ毛のせいもあってか年齢より幼く見える銀髪の少女がそこにいた。


「が…………ドジっ娘です」「よろしくお願いします」


「即答ですね」「即答です」


「本来なら高位召喚魔と契約なんて叶うような子では―」

「そこをなんとかお願いします。フェルナ……様」

 

 フェルナも“ドジっ娘と契約したがる高位召喚魔”という問題児をどうにか片付けたかったのだろう。通常ならあり得ない“高位召喚魔とドジっ娘”の組み合わせをすんなり承諾した。

 


「ドジっ娘なんてもう来るわけないんですから、強引にでも契約してくださいよ!」


 

 そもそも強引な契約は出来ないはずなのだが、余程問題児を厄介払いしたいのだろうか。一番分かっている立場のはずの彼女は、あり得ない台詞を残して帰っていった。




 まあ、ドジっ娘ちゃんには契約しか選択肢はないのだろうが……



1話タイトルは小説のタイトルと同じく、吾輩は猫である/夏目漱石 より拝借

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