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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ブラッドボーン社での技能資格習得会場券

作者: soro

資格はあればあるほどいいと、常々思っている

朝子は今日も、「片付けコーディネーター2級」という

資格を習得しに、何回も通っている渋谷の教育センタービル

の5階にある試験会場で試験を受けてきたばかりだった。


「合格発表はメールでか、、大丈夫だと思うけど

 大学卒業までに後、10個ぐらいほしいなぁ~」


スマホの画面を確認し、バイトの時間までまだ余裕が

あった朝子は、ロビーのソファーでどう時間を潰そうか

迷っていた。


「ん~本屋にでもよって資格本の新しいの出てないか

 チェックでもしようかな、、ん?」


左手を支えにして立ち上がろうとしたとき、クシャと

何かに左手が触れた。

朝子しかいないロビーで立ち上がり、見下ろすように

座っていたソファーを見てみると、お尻の形ができた

シワの横に赤色の小さな紙が一枚、潰された形で

目に留まった。


「ん?名刺?」


何気なく、朝子は紙を拾い上げ見てみると

そこには、黒い文字で


「ブラッドボーン社での技能資格習得会場券」


と書かれていた。


「玩具大手のブラッドボーン!?」


本屋の事は頭から吹っ飛び、赤いチケットに書かれた

文字を急いで読んでく、、


「午後2時から、渋谷教育センター地下4階、、2時ってもうすぐ

 だ、、でも、、地下4階なんてこのビルにあったかな?}


朝子は、秋晴れの青い空をガラス越しにみながら

暫く、温かい陽だまりで紙を睨んでいたが、リュックを

背負うと、ビルの受付へと急いで歩いていった。


ーーーーーー


「あの~これの会場が地下4階ってなってるんですが」


「恐れながら、当ビルの地下は、、ブラッドボーン社の方でしたか!?」


メガネをかけた年配の女性は、気だるそうに返事をしていたが、

朝子が差し出していた紙を見ると急に態度が急変し、地下4階への

エレベーターは奥にあるといい、不思議そうな朝子を連れ、

「関係者以外立ち入り禁止」と書かれたプレートの扉の

奥へと歩いていく、すると、一本道の先に、真っ赤なエレベーターが

一台設置されており、他には何も無かった。


「こちらから地下4階へとお進みください。エレベーターを

 降りるとすぐ目の前の扉が会場への入り口ですので、、失礼します。」


「あ、ありがとうございます、、。」


チーンという音と共に、エレベーターは受付の女性を置いて閉まり、

数秒ほどで、ガタガタと開いた扉の先には、ブラッドボーン社の

ロゴマークである、ツギハギだらけの骸骨がユーモラスに

笑っているマークが印刷された扉があり、朝子は吸い込まれるように

扉を押して開け、中へと入っていった。


ーーーーーー


中には、無数の椅子が無造作に並べられており、各々が

好きな椅子に腰掛け、会場の舞台でマイクを持って

説明している男に注目していた。


「わが社の生産ラインで最も高い技術が要求されるのが

 分別分断の作業です。」


スクリーンには秘密とされてきたブラッドボーン社の

生産ラインが映っており、今大人気のボーン人形やプリンセス

人形、モンスター人形、その他、誰もが知っている

キャラクターの人形が次々と機械によって作られているところだった。

朝子は、一番後ろの席に座ると、舞台の男に注目した。


「ここに集まっていただいた方々全てを採用することはできません。

 現在の採用枠は5枠です。」


周りから不満の声が聞こえ、朝子は、自分が場違いの場所に来てしまった

のではないかといまさら思い、立ち上がろうとしたが、突然

力強い手が彼女の両肩を押さえ込み動けなくした。


「それは、、私のモノのはずだが、、」


「!?」


女性だろうか、肩を押さえつける手の爪は黒いマニュキアが塗られており、

軽く押さえつけられているだけのはずが、朝子は体一つ

動かせない事に気がつき、それだけではなく、声も出せなくなっていた。


「忘れた私にも、安易に君を通した彼女にも非はあるが、なによりも

 他人のものを勝手に持ち去るあなたに一番の非があると思う。」


甘く、優しい声だったが、背筋から大量の冷や汗が流れ出ては

すぐに消えてなくなり、いつの間にか、会場全体が

自分と背後の女性に注目していることに気がついた。


「160の55、よく歩いているようだね。程よく筋肉がついている

 ヨガもしているようだ。少々睡眠不足。パーツとしては

 Bだが、手足の指は綺麗に手入れされている。A、、収縮して

 加工すればAプラスになるかもしれない。」


女性は読書でもするかのようにスラスラとそういい、それを、

誰もが静かに、中には感心するように見つめるものもいた。


「私としては、、、指のみを切断し、残りはまとめて

 B級品の修理用として保管するべきだと思う。」


「なるほど、では、、、できるかね?」


いつの間にか、野次馬の中心に演説していた男が立っており

朝子には目もくれず、背後の人物にそう語りかけていた。


「もちろん。」


ほんの一瞬、肩から両手が離れ、朝子の口から声が発せられようとした

つかの間、ヒュンヒュンと耳元で音がし、椅子に座ったままの

若い女性の首は血の一滴もこぼれることなく切断され、

まっすぐに伸びた手足の指も、第一関節を残して全て

切断されていた。


「うむ、、表面張力によって見事に切断接着されている。

 そして、、」


前に進み出てきた男は、光の無い眼の若い女性に見向きもせず、

その手の人差し指をつまむとゆっくりと引っ張った。

人差し指は、抵抗することなくスッと離れ、残された

切断面には、血がゼリーの様にコーティングされており

一滴の血も流れ出てこない。


「血のコーティングも見事にできている。すばらしい。

 胴体はB保管。指は全て収縮加工してA保管しなさい。」


男がそういうと、青い作業服にブラッドボーン社のロゴマークが

胸に入った作業員がどこからとも無く現れ、用意された特殊な

赤い箱に、それぞれ指示通りに部位を保管すると、無いごとも無かった

かのようにその場を後にした。


「Aですか?Aプラスの部位だと思いましたが?」


「うむ、、季節の変動を考えるとAがだとうだろう、、しかし、

 君の技術は見事だ」


男は、椅子に残された朝子の首をつかむと、断面を満足そうに眺め


「後日の実地試験を前に、採用枠を残り4とします。」


この決定に不満を漏らすものは誰一人としておらず、男は

祝いの品でも渡すように、朝子の首を女性に手渡すと、再び

壇上へと歩いていき、他の参加者もそれぞれの椅子に

座りなおしていた。


「君のお陰だ、、こういった場面での見せ場ほどいいものはない。

 置いておいた紙を拾ってくれて感謝するよ、、」


女性は小さな声でそういいながら椅子に座ると、目を開いたまま

ジッと無を見つめている朝子の髪優しく、撫でとかしていた、、。


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