【02-02】初めての魔法で神殿を
僕の今現在の容姿や、普段着となる修道服の確認をしていたら、今度は視界の片隅に、表示しっぱなしの地図の右上あたりに暦が結構な時間を指していた。
『グレコニア歴1,033年6月10日16:12.10』と。
周囲の景色も茜色に染まりだしており、さっさと野営の準備をしないと、真っ暗になってしまいそうだ。
今日のキャンプ地というか、この崖と洞窟なんだけど、ここの整備を、日が暮れる前にしてしまわないといけない。最悪、寝床は洞窟内の草地でいいが、ここはあまりにも無防備なので何とかしたいとは思っている。
ないのならば、造ってしまえばいいではないか!!
そんな、どこぞの王妃みたいな考えがよぎり、それもそうだなとさっそく実行に移す僕。
案外、ノリと勢いだけで生きていそうな感がある。
これが、本来の僕の性格なのかもしれない。
まあ、それはいいとして、この行動が後に『瀑布の聖殿』と呼ばれる、辿り着くのがほぼ不可能と言われる、この世界で一番格式の高い聖域になるとは、この時の僕は知る由もなかった。
ただ、ノリと勢いだけで造っただけなのにね。
後悔も、反省もしていません。
そもそも、アメンラウドさんもこう言っていたしね。
『せっかくの第二の人生だ。君が思うように、自由気ままに生きなさい。後悔だけはしないようにね。』
閑話休題。
まずは入り口を造ろう。
入り口はこの洞窟でいいとして、ただの穴倉では少し寂しいため、ここは中東にある、あの世界遺産を参考にして造っていく。
何気に、この世界に転生して、初めて使う魔法である。
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【詠唱魔法】
言霊を紡ぐ事により、属性を付与した魔力を練り上げる事によって魔法を発動させる方法の事を言う。また、無詠唱魔法とは、詠唱魔法の発展形であり、言霊を言葉に出して紡いでいるかどうかの違いでしかない。
『詠唱魔術』と呼称する者もいるが、『魔術』とは、魔法を放つための術式(言霊を詠唱する行為)そのものを言う。そのため、本来は間違いではあるが、時代の流れとともに『魔法』=『魔術』と認識されつつあるので、現在ではどちらでも構わないとされている。
詠唱魔法を放つのに必要なモノは、『魔導』・『対象指定』・『言霊』・『魔力属性』の4つ。
『魔導』
魔導とは、魔法・・・・特に『詠唱魔法』を使うための専門知識の事を言う。詠唱魔法を使用する者は、この能力を神もしくは、遺伝により受け継いでいる。そのため、この能力を持っていないと、詠唱魔法を使用することはできない。
すべての魔法において、その最も必要な事は『思い込みイメージ』である。
どんな魔法を放ちたいのか、そのイメージ(魔法の効果範囲・威力・魔力・属性)をどれだけ詳細に込める事により、より強力な魔法が発動される。そのため、たとえ自然界にその現象が存在していなくても、術者の思い込みイメージがより詳細で正確ならば、魔法という現象として発動させる事も可能となる。
術者が行う『思い込みイメージ』がより詳細であればあるほど、魔法の威力が高まっていくと考えておいても問題はない。
『対象指定』
すべての魔法において、何処に発動させるかを指定する事。発動先には、これといった規則はないが、しっかりと認識しておかないと魔法は発動しない。
『言霊』
魔法を放つ際、魔力を乗せた言葉の事を言霊と言い、その行為を詠唱と呼ぶ。故に、魔法を放つ際に使用される言霊詠唱の事を、昔(500年ほど前)は『魔術』と呼んでいた。
また詠唱とは、術者の思い込みイメージを、言葉でもって補完する行為であり、行使に慣れた魔法ならば、無詠唱で発動が可能になる。俗にいう『無詠唱魔法』だが、ただ単に言霊を発音していないだけで、実際は思考内で詠唱するため(世間一般には区別されているが)詠唱魔法の1つの形態になる。
術者によっては、無詠唱で強大な魔法を放つ者も存在している。
『魔力属性』
別記参照。
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これが、僕が神界において、睡眠学習によって得た魔法『詠唱魔法』についての知識だ。
アメンラウドさん、ありがとうございます。
早速、睡眠学習の効果を確認しました。さすが、15年間毎日?行われていた事だけはあります。魔法と思う立っただけで、すらすらと思い出す事ができます。これだと、他の学習した内容も、簡単に思い出す事ができそうですね。
睡眠学習の事はこれくらいにしておいて、早速あの世界遺産もどきを造っていきましょう。
僕は、あの世界遺産『ペトラ遺跡群』の中にある『エル・カズネ』という遺跡の外観を詳細に思い出しながら魔法を放った。
そうして、寸分違わぬ外観が、このナイアゲルの滝にある岩山に聳える事になった。
今回は、いろいろと実験を兼ねて、完全無詠唱で魔法を放ってみたところ、あっさりと発動してしまいました。
魔力の消費も、あったのかなかったのか解らないくらいです。
つまり、体感できるほどに消費していないという事ですね。
体感できるほどに消費するには、いったいどれだけ魔力消費の多い魔法を放たなくてはいけないんでしょうか?
ふと、疑問に思いましたが、実験してみようとは思っていません。
きっと、ロクでもない未来が待っているでしょうから・・・・。
外観が完成したので、お次は内装に取り掛かりましょうか。
早くしないと日が沈んでしまいますしね。
『エル・カズネ』の内部構造は知らないので、ここからは完全に僕の独断と偏見で内装工事をしていきます。
建物自体二階建てっぽいので、内装もそのように造っていきます。
まずは1階部分。
入り口を入ると、50mほどの廊下を進み、T字の形になるように廊下を配置します。
T字の廊下の先に一番奥に巨大な吹き抜けの空間を造ります。空間の大きさは、横幅約100m、全長約400mとし、この空間と廊下とは、エンタシス式の列柱が並んだ列柱で区切られています。また、左右の壁には、等間隔でエンタシス式の柱のモニュメントを配置しておきます。
空間の最奥には、一段高く祭壇を設けていますが、今はまだ何も祀っていません。明日以降にでも何か造っていきましょうかね。
入口の左右には、左右に部屋を造ります。
左側の部屋は、僕のプライベート空間で、水回りを配置してあります。入り口付近位はかなり広いLDKとなっており、奥の方、ちょうど滝の裏側になるあたりにはお風呂と、禊用の部屋を造ってあります。右側は、お客さんスペースの予定ですが、今のところは誰も来ないので、空き部屋として何も造作はしていません。
2階の廊下へと昇る階段は、左の部屋の中に造りました。つまり、2階部分は完全にプライベート空間となります。
魔法って、とっても便利ですね!!
土木知識など皆無な僕でも、それなりに体裁が整った建造物をでっちあげる事ができるんですから。
この建造物の名称ですが、どんな名前がいいのでしょうか?
建物自体の外観は世界遺産の『エル・カズネ』をそのままパクっていますが、内部構造は全くの別物に仕上がっています。
安直だけど、『瀑布の聖殿』でいいかな。
光魔術を使って、煌々と明かりを灯す僕。
現在僕は、夕食づくりの真っ最中です。材料は、ストレージの中に入っていました。ついでにほかの服やいろいろな道具も入っていたけど、あのチョイスはどうなんだろうか?
後で、魔眼の経験値を稼ぎながら、中身をしっかりと見てみないといけません。
「いただきます。」
1人での食事は、やっぱり寂しいものがありますね。
夕食を食べ終えてお風呂に入った後、僕は、2階にある大きなベッドの上で、ストレージの中身を並べて鑑定をかけていきます。
さすがに大きなものは出していません。
ストレージに入っていた中で、一番大きなものは『可動式簡易住宅セット』という野営道具?でした。
いったん建物の外に出て展開してみれば、キャンピングカーのような形状をした馬車でした。馬車といっても、生きた馬ではなく、ゴーレム?のような感じの馬型人形に曳かれています。なぜか知らないけれど、御者をしている人形もいました。中を確認すると、簡易キッチンと調理器具各種。シャワーにトイレ。ベッドが1つとダイニングセットが1つの豪華セットです。
使うかどうかはさておき、とりあえずはストレージの肥やしにでもしておきましょう。
再び部屋の中に入って続きを行います。
現在の僕の服装は、ストレージの中に入っていた『質素なワンピース』です。麻みたいな感じの生地で造られたこのワンピースは、寝巻にするのはちょうどよさげな感じです。1着しかないのが悔やまれますね。
まずは、服飾関連からいきましょうか。詳しい内容(セット内容等)は後程。
・清潔な布セット
・下着セット
・質素なワンピース
・修道服セット。
・聖女専用儀式用法衣セット
・魔法使い専用戦闘服セット(女性用)
・伝説の体操服セット
・伝説の水着
・メイド服セット
次は、エジャプルス共通通貨のセットです。
賤貨・小銅貨・銅貨・小銀貨・銀貨・金貨・神銀貨が、それぞれ10枚ずつ、神金貨が1枚入っていました。
次に、食材関連といきましょう。
・調味料セット。
・香辛料セット。
・携帯食料セット。
・生鮮食品セットセット。
そのほかの道具類は次のモノがありました。
・カード類
・携帯型小型端末
・筆記用具
なぜか知りませんが、魔物の死体が入っていました。
・アクアコカトリス(雄)・・・1匹
・アクアコカトリス(雌)・・・1匹
・アクアコカトリス(卵)・・・10個
出逢った事もない魔物を、いつどうやって討伐したのでしょうか?
本当に不思議です。
で、最後に『◯◯の◯を映す三面鏡』
例の鏡です。初めて鑑定したあの鏡です。現在は、どんな能力があるのかは解らないあの鏡です。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
【アイテム名】◯◯の◯を映す三面鏡
【道具カテゴリー】〇〇〇魔道具
【売買金額(平均)】????/????
【所有者】イズモ
【解説】△▽
◯◯・◯◯・◯◯を映す事が可能な鏡。
魔力属性の『〇属性』・『〇属性』と、固有能力の『〇〇〇〇』を持っていないと、◯◯としては使用する事はできない。
【◯◯としての使用方法】△▽
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今現在は、このような鑑定した結果が出ています。昼間鑑定した時よりも、多くの情報が表示されていますが、まだまだ内容はさっぱり解りません。
このまま鑑定眼を鍛えていけば、すべて表示されるようになるのでしょうか?
実証実験あるのみですね。
ストレージの中身の確認も済んだところで、今日はもう寝ましょうかね。
おやすみなさい・・・・・・。