【02-01】僕の普段着は修道服(女性用)
柔らかい草の匂いと、激しく音を立てる水の音色に誘われて目を覚ます僕。
視界の半分は背の低い草が見え、残りの半分はごつごつとした岩の壁が見えている。少し薄暗く、ジメジメとしている中で僕は目覚めた。
「そういえば僕、転生したんだっけか?今いる場所は何処かは知らないけれどね。」
ここは何処?という疑問を抱く前に思い出す僕。
さてと。
いつまでも寝っ転がっていても仕方がないので、現状の把握に努めるとしますか。
僕は立ち上がって、周りを確認する。
大体5m四方ほどある洞窟の中。その地面には草が生えている。草は枯草ではないが、水分がほとんどないので寝るのには好都合だ。
直径約2、長さ100mほどの通路?の先には、光に包まれた場所がある。あそこがこの洞窟の出入り口かな?
とりあえず、外に出てみようと思い、僕は通路を歩いていく。
洞窟から這い出て見ると、5m四方ほどの舞台のような場所に出る。
晴れ渡っている空。
その先には、断崖絶壁の岩の壁が数百m下まで続いており、舞台の左右は対岸まで200m以上はある巨大な滝が奈落の底に向かって流れ落ちている。
奈落の底は、巨大な滝壺になっており、数百m先にある川に流れ出ている。川はそのまま、巨大な森の中を蛇行しながらどこまでも川筋を作り上げていた。
振り返ってみると、そこには断崖絶壁が聳え、左右に見える滝が、遥か上空から流れ落ちているのが見て取れる。
どうも今僕がいる場所は、巨大な滝を別ける岩山の中腹に空いた洞窟らしい。水の確保が容易なのはうれしいが、食い扶持のほうが少し心配である。
そして、こんな環境化にも拘らず、洞窟の中はそんなに湿度が高くなかったのは不思議である。
「一体此処は、どこなんだろう?」
そんな疑問が沸いた時、視界の面々に半透明の黒い板?が出現し文字が書かれていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
【現在地】ナイアゲルの滝にある岩山
【所属地】????
【解説】????
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
いったい何処にあるのか、ここはどんな場所なのかは一切不明だが、とりあえず『ナイアゲルの滝にある岩山』という場所にいるらしいことだけは解った。
これは・・・・・。
あれだね。
選択した固有能力『魔眼』が早速拡張派生したんだろうね。名称しか表示されていないのは、まだまだレベルやら経験値やらが不足しているからかな?
まあ、いいや。
使い続けていれば、そのうちすべての項目が表示されていくだろうから。
次に行ってみよう!!
まずは、現在時刻・・・・と思っていたら、今度は視界の片隅に、この『ナイアゲルの滝』周辺の地図、正確に言えば、僕が視認していた範囲の地図とともに、地図の右上あたりに暦が映し出されていた。
『グレコニア歴1,033年6月10日14:45.55』と。
今度は、固有能力『脳内地図作成』が、いい仕事をしてくれたみたいです。
地図が描き出している範囲は、僕がこの崖の上から視えている範囲だけだ。結構な高さにある崖らしく、遠くまで見渡せている。地図も、そのようになっており、崖に近いほど詳細に、遠くになるほど、絵地図のように不明瞭になっていく。
続いて、今の僕自身の現状を確認してみようか。
鏡は・・・・・。
”ドスンッ!!”
背後から突如、何か大きなものが地面に落ちる音がして、慌てて振り返るとそこには巨大な三面鏡が鎮座していた。
1つの鏡が横約1m、縦約2mという三面鏡である。現代日本でも見た事のないほどの大きさである。
本当に、何処から出てきたのだろうか?
そして、なぜ、ここにあるのだろうか?
そんな事を考えていたら、あの黒い板が再び目の前に現れる。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
【アイテム名】◯◯の◯を映す三面鏡
【道具カテゴリー】第10級魔道具
【売買金額(平均)】????/????
【所有者】イズモ
【解説】????
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
先程よりも、少しだけ表示する内容が増えたみたいだ。目の前の三面鏡は、なにやら少し怖そうなアイテム名を持つ”第10級魔道具”らしい。何級まであるのか知らないが、どうせ一番上の等級だと推察する。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
【名称】 道具カテゴリー
【解説】
魔道具には、その用途と使用魔力量に応じて、第1級~第10級まで存在する。等級が上がるほど、高価になっていき希少価値が上がっていく。
なお、第6級より上は????と呼ばれ、??????。
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やはり一番上の等級らしいが、説明文が途中でなくなっていた。どうも、まだまだ全文表示させるには何かが足りないらしい。
まあ、いいか。
魔道具としては使い方を知らないが、ただの鏡としてならば普通に使用する事ができるのだから。
とりあえず鏡の前に立った僕は、初めて転生後の自分を凝視した。
鏡の前には、修道服を着た小柄で可憐な少女が映し出されていた。とても美しく、絶世の美少女といっても過言ではない容姿をしている。
なんで、修道服なんかを着ているのかは知らないが、とってもにあっている。
これはあれか?
職業『流浪の聖女姫』の影響かな?
まあ、いい。
三面鏡には、身長150㎝程の小柄な女の子が、真っ黒な修道服を身に纏って立っている。
修道服のベールの端っこ(背中の中ほどまである)から、お尻の先あたりまで長い銀髪が伸びている。
とても細く、サラサラの髪質だ。太陽の光を反射して、きらきらと光り輝いている。見ているだけでも、ひきつけられるような魔性の髪質をしている。
白磁の陶器のような真っ白肌で小柄な顔には、蒼色(右眼)と朱色(左眼)のオッドアイが、自己主張激しく鏡越しにこちらを見ている。
オッドアイになっているのは、魔眼を持っている影響だろうか?
鼻筋は細く、小さく赤い唇をした少女だ。細い指先が、修道服の袖口から伸びている。
修道服のタイプは、(ウィンプルと呼ばれているらしい)首元から顔の輪郭をすべて覆う真っ白な頭巾タイプではなく、詰襟のついた真っ白なセーラー襟のような形状をした、丈の短い白色のマントみたいなものをしている。
純白の頭巾ではなく、・・・・・胸当てとでも呼称しておこうか。
胸当ての形状はこうなっている。
前身ごろは、胸全体を覆う丸みの帯びたデザインで、首の中ほどまで覆う詰襟装備になっている。
後ろ身ごろは、まるきりセーラー襟みたいなデザインだ。だいたい肩甲骨の下までの長さがある大き目のセーラー襟だ。
前身ごろの真ん中にファスナーがあり、脱着の際はファスナーで分離するみたいだ。ファスナー部分は、どういうわけか、まったくその存在がないかのように見えにくくなっている。
それにしても・・・・・。
この世界には、ファスナーがすでにあったんだ。
過去にこの世界にやってきた転生者や転移者の中に、服飾関係の仕事をしていた人でもいたのかな?
普及するまでどのくらいの時間がかかったのかは知らないが、それまでの服はきっと脱着に時間がかかっていたのだろう。
そうそう。
今僕が来ている修道服は、世界新やほかの神々が僕にくれた服らしい。ほかにもいろいろと僕に用意してくれていると、転生前にアメンラウドさん話していたのを覚えている。
今着ている修道服以外は、もらった服はどこにも存在しませんが・・・・。
その事は今はどうでもいいが、神様たちが作った服なんだから、きっととんでもない付加効果があると推察している。
この世界に存在しているモノで作られている。そのため、この修道服にファスナーがあるという事は、この世界の服には、多かれ少なかれファスナー付きの服やズボンがあるという事だ。
閑話休題。
頭の上から顔を覆っているベールは、漆黒の布を上側に、純白の布を下側に重ねているタイプだ。
長さは背中の中ほどまであり、後ろ髪を包み込むように長い銀髪を覆っている。
実際、上側の黒い布は、マントのように肩口から先を覆って、地面と平行になる感じのデザインとなっている。このままでも短いマントとして活用できそうである。
下側のある白い布は、肩甲骨あたりまでの長さしかなく、長い銀髪が乱れないように、輪っかになっている端っこの部分に入れられている。
ベール自体は、帽子のようなデザインになっている。実際、ツバのない真っ白な帽子に、ベール状の白色と黒色の長い布をつけている感じになっている。
そのため、脱着は容易になっている、なんかちょっと不思議なデザインのベールだ。
本体?となる修道服は、漆黒の長袖タイプのワンピースだ。
ワンピースは、地球の修道服のようなゆったりとしたデザインではなく、体型にフィットするような感じのデザインとなっている。ワンピースの背中には、腰あたりまであるファスナーが取り付けられている。体型イフィットしたデザインのため、脱着が容易になっている感じだ。
裾の長さは膝丈から10㎝程度長くなっている。
動きやすさを重視しているのかな?
長いスカートは、動きにくいからね。
そんなデザインのワンピースなため、僕の体型がある程度服の上からでも推測可能となっている。
Cカップ位のボリュームかな?
なかなか大きなお胸様である。出るところは出ており、締まるところは締まっている理想的なボディラインをしている。
首元には、アメンラウドさんを祀っている神殿のエンブレムらしきモノが、細いチェーンで繋がったものを首から下げている。材質は何かの金属みたいだが、金色に光っている割にはとても軽い材質みたいだ。
ワンピースの裾から覗く足は、黒色のニーハイに黒のローファーという全身真っ黒スタイルだ。
そして、腰の右部分には、ベルトに通されて固定してある小さなポシェットが1つある。このポシェットが、修道服の時の唯一の小物入れとなるわけだが、見た感じあまりモノは入らないみたいだ。
だって、大きさは、文庫本サイズくらいしかないんだから。縦・横・厚みも、文庫本の大きさしかない。
ん~~~~~・・・・・。
このポシェットを、ストレージの出入り口にすればいいのかな。
まあ、実際ここから出し入れするのは、今のところ通貨か身分証くらいしかないとは思うけどね。町に行ったら、一度道具屋さんを覘いて、あの魔道具がある事を確認しないといけないね。あれがあれば、このポシェットを、ストレージの隠れ蓑にできるんだけどね。
なかった時は、その時にでも考えよう。
これで普段着となる修道服の確認はすべて終了した。
この修道服なんだが、僕の職業である聖女姫も、その前職である聖女・修道女を含めて、普段着として着用するように義務付けられている。それは、神殿の外で活動している冒険者としての修道女も同じらしい。
なぜ、義務付けられているのかは知らないが、決まりは決まりなので僕もそれに倣うとしよう。
しかし、神殿の外や町を囲む壁の外、安全が保障されていない場所では、危険回避を優先してベールの着用は努力義務となっていたりする。ベール以外の服装は、就寝時以外着用義務があるが。
その代わりと言っては何だが、幅広の白色のカチューシャを填める事になっている。
なぜ、こんな事を知っているかというと、固有能力『世界の理』が教えてくれたからだ。
僕は、頭に被っているベールをそっととってみる。ベールをとった銀髪には、幅広の白色のカチューシャが填められている。神様からもらった服には、どんな物があるのかはまだ分からないが、僕の職業的に普段着はこの修道服になりそうだ。だって、義務付けられているみたいだしね。
現在長く美しい銀髪はストレートに流しているが、移動時に鬱陶しい場合は、適当に縛るかなんかしようと思う。神殿以外では別に着けなくてもいいそうだし、その時の気分で変えよう。
そんな事を思いながら、ふと時計を確認してみる。
周囲の景色と含めると、ちょっとやばげな時間帯である。