【07‐05】新米神官になる日
今日は年末12月27日です。
年末年始に執り行われる神事『新年祝賀の祭祀』の一環である『出家誓願の神事』。この神事を経て私は、神官系初期職である『僧侶』から治癒魔術師への登竜門となる『修道女』へとジョブチェンジを果たします。
おはようございます。はじめまして。
私の名前は、アリスといいます。ヴァンコック本神経営の孤児院で暮らしているしがない孤児です。
5歳の時に、諸々の事情(どんな事情かは知りません)で両親と死別し孤児院にお世話になってから早10年。
孤児院に入る際、転職神殿で魔力属性を調べた際、光・風・水の3属性を持っていることが判明。10歳になった時に、神官様をお話をして自らの道で神官の道を選びます。しかしながら成人する15歳になるまでは、特別な事情がない限り正式に神官になる事は出来ないので、私はジョブのみ僧侶に変えて修行をしていました。
そして15歳を迎えた今年。
2か月ほど前に、技能神『アマトテフトト』様のご神託により、職業ツリー?(難しい事は解りません)が変更になって、2つに分かれていた神官係の基本職が1つに統合。その結果私の職業も、『魔法使い』から、『僧侶』へと変更されました。ちなみに、『魔法使い』という職業も、魔術師系統の基本職として存在しています。
閑話休題。
「・・・・・はじめに、我ら天聖及び、五聖の『聖衣及び序列更改の神事』を執り行う。」
教皇様が、『出家誓願の神事』用の祝詞を唱えられた後、私たち新人が行う『出家誓願の神事』の前に、序列第1位の『天聖』であらせられる聖女姫イズモ様と、序列第2位の『五聖』の10人が、初めに主神アメンラウド様の御前で『聖衣及び序列更改の神事』を行います。
教皇様(旧神殿序列でも第1位の教皇だったため、そのまま繰り上がっています)であるギルガイヤ様が、主神アメンラウド様の御前に跪くと、自らが序列第1位の教皇の位に就いた事を報告し、改めて『5か条の御請願』を行います。
ちなみに5か条の御請願とは、主神アメンラウド様の御前で誓う事を言い、すべての神官が、一番初めに神から受ける洗礼となります。その後、1人ずつ祭壇の前に出て、教皇様がそれぞれに対して専用の祝詞を唱えられた後、聖衣(修道服)を手渡していきます。これをしないと、この先の神事の(いろいろな意味での)進行の妨げになるらしいです。
「我は、序列第1位、『天聖・アメンラウド大神殿ヴァンコック本神殿第1229代教皇・ギルガイヤ=アメン=セントアメル』という。当神殿を預かる身にて、神の化身たる聖女姫を助け、護る者なり。
我、神の御前にてこの職に叙する。なれば化身たる聖女姫が叙するまで、神の名代として君臨する。
誓いの証として、改めて主神アメンラウド様に『従欲』・『従順』・『従教』・『従護』・『慈愛』からなる五か条の御請願をここに誓う。」
教皇様がこう唱えると、主神アメンラウド様の神像から一筋の光が教皇様に降り注ぎます。光が収まった後、いよいよ天聖と五聖の『聖衣及び序列更改の神事』が始まります。
「ではまず初めに、主神アメンラウド様をはじめとした神々の寵愛姫であり、神々の化身である聖女姫の称を得たシスターイズモ。前に出よ。」
「はい。」
現在は、一介の修道女としての典礼用修道服に身を包んでいるイズモ様。
教皇様の前で両膝を床に付き、両腕を胸の前でクロスした立膝の状態(この姿勢の事を、『洗礼の祈願姿勢』という)で、教皇様(主神アメンラウド様)に向かって頭を下げます。この『洗礼の祈願姿勢』は、毎日行われる神事で、神の御前で祈る際にも行う神官たちの基本姿勢でもあります。
教皇様は、跪くイズモ様の頭に右手を置くと、聖句と祝詞を唱えます。
「汝を序列第1位、『天聖・アメンラウド大神殿ヴァンコック本神殿第9代世界神眷属聖女姫』に任ずる。
その証として、聖女姫専用の典礼用の聖衣及び、普段着となる修道服。新たに作られた専用の典礼用と普段用の神具を下賜する。
そのうえで、これより先神の名を冠した家名を与え、『イズモ=アメン=セントセレシア』と名乗る事を許す。」
「ありがたく賜りたく存じます。
これより私シスターイズモは、『天聖・アメンラウド大神殿ヴァンコック本神殿第9代世界神眷属聖女姫・イズモ=アメン=セントセレシア』として、主神アメンラウド様を崇め立てる事をここに誓います。
誓いの証として、改めて主神アメンラウド様に『従欲』・『従順』・『従教』・『従護』・『慈愛』からなる五か条の御請願をここに誓います。」
イズモ様が改めて五か条の御請願を唱えると、主神アメンラウド様の神像からというか、ここにあるすべての神像からイズモ様に向けて、一筋の光がそれぞれ降り注ぎます。その幻想的な光景が収まった後、教皇様から、神々の祝福が与えられた聖女姫専用の典礼用の聖衣及び、普段着となる修道服。新たに作られた専用の典礼用と普段用の神具を下賜されたイズモ様。
「聖女姫イズモよ。改めて誓った請願を糧に、日々精進せよ。」
「ありがたきお言葉。しかと胸に刻ませていただきます。」
「では、聖女姫イズモ=アメン=セントセレシアよ。聖衣を改めるため、いったん退室を許す。」
特殊な事情を抱えているイズモ様は、すでに『出家誓願の神事』をお受けになられていますが、改めて主神アメンラウド様に請願を誓われました。
その後、聖衣と神具を賜ったイズモ様は、いったん大聖堂から出ていかれました。
ちなみに、神官の名乗る家名も、今回の序列制度更改のきっかけとなったご神託により、神々から序列第1位の『天聖』3人と、序列第2位の『五聖』の10人の家名を与えられています。
この上位13人以外には、神々から賜った家名はなく、世間に名乗る際は、職業名+名前となります。
イズモ様が、修道女としての典礼用修道服から、聖女姫用の典礼用聖衣に着替えられている間、『五聖』に叙せられる10人の『聖衣及び序列更改の神事』が執り行われていきます。
ちなみに、イズモ様と教皇様と同じ天聖である『宿御霊の神子』となられるエシリス様(実は私の大親友です)は、専用の神事があるため、この場での『聖衣及び序列更改の神事』は行っていません。ただし、正式に神官身分を持っていないため、他の宿御霊の童子とともに、今日『出家誓願の神事』を受けられるため私の前の列にいます。
閑話休題。
真新しい聖衣に着替えた聖女姫イズモ様が、お付きの修道女とともに大聖堂に入場してきました。そして、主神の神像の前で、教皇様と何やら結構長い聖句を唱えあった後、今まで教皇様が立っていた場所に移動しました。教皇様は、神事の進行補助として、イズモ様の隣に立たれています。
この長い聖句を唱えあっている間に、新しい聖衣に着替えられた五聖の皆さんが順に大聖堂に入ってきました。
いよいよ、私たち新人のための『出家誓願の神事』が始まります。
祭壇の前には、真新しい聖衣に着替えた聖女姫イズモ様をはじめとした12人の神殿上層部の皆さん。
その中でもやはり一際光り輝くのは、聖女姫イズモ様です。ここヴァンコック本神殿の顔として、この先暮らしていくイズモ様は、隣に並ぶ教皇様よりも心なしか豪華な典礼用の聖衣に身を包んでいます。
そして、その透き通った声音で、イズモ様が、教皇様に代わって神事を仕切っていきます。
大聖堂に厳かに響きわたる、イズモ様のその透き通った声音は、その声音を聞くだけで、清浄な空間が出来上がり、穢れを薙ぎ祓っていくような感じがします。実際、その声音一つで、声が届く範囲の穢れを薙ぎ祓ってたと、あとでイズモ様本人から聞く事が出来ました。
さすが神々の寵愛を受けた、歴代でも一番神々に近いと噂されている聖女姫様です。声音一つで、穢れを薙ぎ祓っていくとは恐れ入ります。
「・・・・・・ではここで、我聖女姫に続き、新人神官全員で五か条の御請願を唱える事により、此度神官として出家する者たち個人個人で唱える事を省略する。」
「一同起立!その場で両膝をつき、『洗礼の祈願姿勢』となれ。聖女姫イズモ様のお言葉に続き、五か条の御請願を斉唱する。」
神事の進行役となった教皇様が、こう話されます。私たちをはじめ、今回出家誓願の神事を行う全員がその場に立ち上がり、洗礼の祈願姿勢をとります。
「自らの意思に則り、神々の御前で現世を離れ出家する我ら。」
『自らの意思に則り、神々の御前で現世を離れ出家する我ら。』
「神々の眷属たる神官になるに先立ち神々が初めに定めた教義に則り、ここに五か条の御請願を聖句として皆で斉唱する。」
『神々の眷属たる神官になるに先立ち、神々が初めに定めた教義に則り、ここに五か条の御請願を聖句として皆で斉唱する。』
一節ごとに区切られていく五か条の御請願専用の聖句を、洗礼の祈願姿勢をとった聖女姫イズモ様のお言葉に続き、斉唱する私たち新人神官一同。
聖句を唱えた後、いよいよ御請願を唱える事になる。イズモ様もそうだが、聖句を含めたこの五か条の御請願は、完全に暗唱する事が神官の務めとなっている。そのためこの場には、当然カンペなどといった類のものは存在しない。
「1つ。我ら人間種が持つ五大欲求(食欲・性欲・睡眠欲・物欲・出世欲)は、生物として持つ普遍的権利であり、永続的に従う義務である。これを縛り抑制する行為は自然摂理に反する行為。」
『1つ。我ら人間種が持つ五大欲求(食欲・性欲・睡眠欲・物欲・出世欲)は、生物として持つ普遍的権利であり、永続的に従う義務である。これを縛り抑制する行為は自然摂理に反する行為。』
「よって、欲望のままにこれらの行動を行うのは問題はあるが、自らを律してこれらを行う事は、積極的に行い世界に還元し、現世の発展に寄与する事こそ、我ら神官の喜びとする。故に、必要最低限の五大欲求を満たしていく事をここに誓う。」
『よって、欲望のままにこれらの行動を行うのは問題はあるが、自らを律してこれらを行う事は、積極的に行い世界に還元し、現世の発展に寄与する事こそ、我ら神官の喜びとする。故に、必要最低限の五大欲求を満たしていく事をここに誓う。』
「その行動でもって神の信徒として、日々の暮らしを護る『従欲の御請願』をここに誓う。」
『その行動でもって神の信徒として、日々の暮らしを護る『従欲の御請願』をここに誓う。』
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「その行動でもって神の信徒として、慈しみ神の信愛を伝え導く『慈愛の御請願』をここに誓う。」
『その行動でもって神の信徒として、慈しみ神の信愛を伝え導く『慈愛の御請願』をここに誓う。』
五か条の御請願を全員で唱えると、主神アメンラウド様の神像から私たちに向けて、一筋の光がそれぞれ各個人に降り注ぎます。光がが収まった後、祭壇に立ち並ぶ天聖と五聖の前に、名前を順に呼ばれた私たちが並んで、神の祝福を受けた(それぞれの職種に合わせた)真新しい修道服と、神具であるロザリオが手渡されていきます。
修道服を下賜された後は、すぐさま更衣室に赴いて今まで来ていた服から新しい修道服に着替えます。その後再び大聖堂に集合すると、今まで来ていた服を祭壇に納めます。この納められた服は、12月29日に行われる『厄祓の神事』において、厄災を祓い清め、封じてきた聖衣(修道服)とともに聖火にくべられる事になります。
引き続いて『宿御霊の神子襲名式』が行われました。
私の大親友であるエシリスちゃんが、イズモ様と教皇様と同じ天聖である『宿御霊の神子』となられる重要な神事です。
これが終了すれば、エリシスちゃん・・・・いや、エリシス様は、一年間限定とはいえ、身分上では雲の上の人になります。
これにて、私たち新人神官が主役となる『出家誓願の神事』が終了しました。
今日の私たちの予定は、夕方に発表される弟子入り先の先輩神官のもとに赴いて、侍従のような事をしながら日々の修業に励んでいきます。




