【07‐04】大掃除という名の神事
『新年祝賀の祭祀』が開始される今日12月25日は、地球では世界最大の信徒数を誇るあの宗教の開祖の誕生日らしいが、この世界では全く関係のない話でもある。
その宗教は一応ではあるが、この世界にの存在はしている。
ただし、信徒数は、下から数えたほうが早いほど少ないみたいだが・・・・。本部となる神殿?教会?は、僕の設定上の故郷を乗っ取った、かのゲルマニウム帝国の帝都ローマミィアにあるという。
ちなみに、ゲルマニウム帝国の国教はこの宗教らしいが、信仰しているのは戦争により占領した地域以外の、もともと立国した地域のみとなっている。そのため、国民の大部分は最高神『アメンラウド』を筆頭とした神々を祀る世界最大の多神教『世界神教』を信仰していたりする。
最初の国を滅ぼした際、強制改宗させようと、宗教弾圧みたいなことも起こったらしいが、最初にそれを行った瞬間に国土中が(自然現象的に)荒れたそうだ。
そのため、2回目以降の他国制圧では、宗教弾圧は禁止されて今に至っている。
ここヴァンコックでは、この本神殿のある裏(ちょうど道を挟んで裏口の門の目の前)に小さな教会が建っている。木造で造られたその教会(すべての建造物を合計した敷地の広さ)は、僕の寝床である聖女神殿の敷地の半分もないほどだ。
その教会では、開祖の誕生日を祝う祭祀が開かれているらしいが、その祭祀に参加しているヴァンコック市民は、ほんの一握りとなっている。その一握りは、僕たちのような転生者や転移者(それも、かの宗教が盛況な地域からの)のみらしい。
というか、1年の長さも地球と違うのに、日にちだけ合わせても意味ないと思うのですが・・・・。
閑話休題。
毎朝行われる早朝の神事『御来迎えの神事』を、神殿内にいる神官全員(何かの用事で神殿を出かけている時以外は強制参加)が参加して行います。この神事は、1日の始まりを日の出とともに迎え、その日1日が安寧に暮らせますようにと祈願する神事のため、『新年祝賀の祭祀』の期間中も含め、日の出前後に毎日行う事が定められている神事です。
なお、1日を無事に過ごせた事を感謝する、日没前後に行われる神事『御来送りの神事』というものも毎日行われており、当然ながら神殿内にいる神官全員が参加する事になっています。
朝食などの身支度を整えてから『大祓いの儀』と呼ばれる大掃除専用の修道着に全員が着替えてそれぞれの担当課所へと散らばっていきます。掃除自体は『祓いの儀』と呼ばれる『御来迎えの神事』の後に行われる日課なんですが、今日は普段行わない場所まで徹底的に行われています。
この祭祀の際は、全員が同じ色・デザインの修道服を着用して行う決まりになっています。
この時に着る修道服は、普段農作業などの汚れ作業に着るための修道服であり、神官全員に年に1度支給される修道服となります。デザイン的には、僕たち修道女や修道士が普段着ているモノと同じで、基本となるワンピースの色が灰色になっています。
そして、12月27日に行われる『聖衣及び序列更改の神事』において、それぞれの職種に合わせて定められている修道服とともに、新しくこの作業用の修道服も貰う事になります。
午前中は、自分の部屋と、自室がある修道院(僕の場合は聖女神殿)の掃除となります。
僕が住んでいる聖女神殿は、僕の家族であるトモエちゃんとアスカ君。後、この神殿内に部屋がある宿御霊の神子と宿御霊の童子、その母親である聖母様。そして、聖女神殿で働いている神殿侍女や神殿執事たちが、この神殿の主である僕の指示で分担して行っていきます。
ちなみに、教皇様他神殿上層部のみなさんは、教皇殿と呼ばれる上層部が住む専用の建物があるため、そこの掃除を行っています。
そして午後からは、大聖堂や中庭、渡り廊下などの共用部分神殿周囲の掃除となります。
手作業による掃除ですが、手の届かない場所や危険が伴う場所も多いため、そういった場所は、清掃系の魔術が使える修道女などの魔術師系の神官が重宝されています。もちろん、なんでもござれの朴や、トモエちゃんは、あちらこちらに引っ張りだこです。
その後は、掃除した場所から、新年用の飾りつけを行っていきます。この飾りつけを、『迎飾設置の神事』と呼称し、『大祓いの儀』と同時進行で進められていきます。
また、神殿で行われる『大祓いの神事』に倣い、多くの家庭や王城などでは、(いつから始まったのかは知りませんが)25日に大掃除をする習慣になっています。この日に大掃除をしないのは、件の開祖様の誕生日を祝っているあの宗教だけです。
そして何故かこの日に限り、大掃除をする際の服装が、僕たち神殿の神官たち同様に修道服(基本となるワンピースの色は乳白色になりますが)になるみたいです。一般大衆が着ている修道服は、『厄祓の神事』において、神々からの賜り物として神殿に参拝した者全員に下賜(実際は、浄銭を捧げた者に対する神殿からの粗品だが、便宜上神からの贈り物と言われている)される修道服となります。
そして、この大掃除が終了するまで1年間、(身分の貴賤に関係なく)神殿に参拝するための制服になります。つまり、神殿に参拝する際は、身分の貴賤を問わず神から下賜された修道服になるわけです。これは、『神の前では、下界の身分は関係なし』という諺に則っているみたいです。僕たち神官の修道服が、職種(序列)によって違うのは、それぞれの職種ごとに割り振られている仕事が違うためなのですが・・・・。
今日の『大祓いの儀』に限り、王侯貴族関係なしに大掃除をする習慣になっています。
その理由は、『大掃除を行う事によってその身についた穢れも同時に祓い落とす』という言い伝えがあるからで、穢れを落とす意味でも神殿から下賜された修道服を着用するみたいです。そのため、この『大祓いの儀』に参加しないと、穢れを落とさずに新年を迎える結果になるため、よほどの事情がない限り強制参加らしいですよ。
特に、上の身分になるほど、そういった慣習には敏感なんだとか。
『大祓いの神事』と同時進行で行われるのが、『迎飾設置の神事』と呼ばれる神事です。
いわゆる、新年の飾りつけですね。
基本的に生花や供物となる食べ物関連は毎日取り換えます。そのため、この神事で設置されるものは、普段設置されている各種神器を、『新年祝賀の祭祀』用のものに取り換える作業をしていきます。
同時進行で行うのは、神器の類は普段設置されている場所から一度取り外すからですね。そして再び設置する際に、専用の神器に取り換えていくわけです。
いちいち、この2つの神事を別の日に分けて行う理由も、これと言ってありませんし、あえて言うならば二度手間になってしまうからですね。
夕方、大掃除である『大祓いの儀』と、新年の飾りつけである『迎飾設置の神事』が終了した事を神に報告し、毎日行われる『御来送りの神事』を終えた後、『修練作務納めの神事』というのを続けて執り行います。
この神事は、我ら神官すべての修行の一環でもある各種奉仕作務を、今年度は滞りなく終了した事を神に報告する神事となります。
僕の場合は、併設されている治療院で行う治療活動がこの奉仕作務にあたります。しかし、治療院に関しては、神事で手が離せない修道女や上役以外の者が交代で、新年祝賀の祭祀の期間中も半日のみ(普段は『祓いの儀』の終了後から『御来送りの神事』が始まる時間まで)とはいえ毎日開いているわけですが。
明日からは、奉仕作務として指定されている業務は、『修練作務始め神事』まで緊急時を除いてすべて休業となり、神殿は年末年始の各神事の開催に専念していきます。
これで今日1日に行われる、『新年祝賀の祭祀』関連の神事はすべて終了しました。しかし、神事は執り行われる事はないのですが、29日に行われる『厄祓の神事』において、聖火にくべられる修道着などを奉納するため、夜通し大聖堂は解放されています。
そのため、今夜行われる『奉年修技』という名の神官たちの忘年会は、聖女神殿の大広間で行われる事になっています。
この忘年会も、『新年祝賀の祭祀』関連神事の一環のため、服装自体は儀式用の修道服となりますが、実態はただのどんちゃん騒ぎをして1年間の苦行?を洗い流そうという趣旨です。
会場が聖女神殿内なのは、こういった大人数が一堂に集まれる大きな空間が、表側にある大聖堂のほかには、裏側にある聖女神殿内のこの大広間しかないためです。




