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【06-05】先輩聖女姫はアノ人でした

年末年始に行われる『新年祝賀の祭祀』まで、あと10日ほどを残すのみとなる今日この頃。つまり、僕が正式に『アメンラウド大神殿ヴァンコック本神殿第9代世界神眷属聖女姫』に就任する日が近づいてきたわけだ。

この時期になると、『新年祝賀の祭祀』に参加するために、世界中から神殿関係者が押し寄せる頃になる。とはいっても、世界中に位置固定型転移門ポータルゲートがあるため、一度この街に来た神殿関係者の中で、いろいろと仕事を持っていて忙しい者は、そのまま自分が暮らす神殿のある街へとトンボ帰りをする事になる。

一度でも訪れれば、その後はいつでも来る事ができるからだ。実際、こうした状況のため、あえて宿を取らない事もあるわけだ。宿屋の数は限られているからね。もちろん、神殿関係者だけではなく、一般の庶民・・・・・特に商人や冒険者の人たちは、基本的に自分の本拠地を持っているため(僕たちジャポニクスの場合は、ここヴァンコックが本拠地となる)、数日から10日ほど前に一度目的地に訪れて、位置固定型転移門ポータルゲートを使用して目的地と本拠地を行き来している事が多い。

実際勇者様ご一行も、本拠地であるクランダル神皇王国王都セント・アトゥムニクスと、ヴァンコックやダンジョンなどがある町を行き来している。クランダル神皇王国には、立派なお屋敷があるみたいだからね。わざわざ宿屋暮らしをしなくても、位置固定型転移門ポータルゲートで行き来すれば、それだけで宿代が節約できるのだ。


閑話休題。


で、今日ヴァンコックにやってきた神殿関係者の中で、わざわざ僕に面会を求めてきたグループがあった。

今までの神殿関係者たちは、この街にやってくると、大神殿で礼拝を行ってからすぐにトンボ帰りをしていた。しかし、このグループだけは、わざわざ礼拝後に僕に面会を求めてきたのだ。

そして、誰が面会に来たのかを確認したのち、僕はメンバーを集めて応接室へと向かった。

応接室には、僕と同じ修道女の格好をした金髪の女の子が、従者である修道女と、仲睦まじめな男性とともにいました。


「お待たせして申し訳ありません。

このたび『アメンラウド大神殿ヴァンコック本神殿第9代世界神眷属聖女姫』を襲名する事になった修道女のイズモといいます。同じ聖女として、今後ともよろしくお願いします。

僕の従者は、今はまだ駆け出しですが退魔術師であり、この神殿の修道女でもあるのフタバ、僕の専属侍女をしている巫女姫のキャナル。そして、この神殿で魔術指導教官をしている修道賢者のトモエ、そして、僕の旦那様でもあるアスカ。アスカ君は、神殿騎士たちに交じって訓練もしているから、当然出家済みかな?こんな格好をしていますが、れっきとした男の娘です。後トモエは、僕と同様アスカの奥さんでもあります。」


僕は、女の子の体面に腰掛けると、開口一番にこう挨拶をした。今回は事前に、面会者の事を聞いていたので、このメンバーで面会する事になった。だってね、要旨はずいぶんと変わってしまったが、久しぶりに逢う親友なのだ。僕だけ再会しても意味はないだろうし、積もる話もたくさんあるだろう。

まあ、実際はここにいるメンバーのほかに3人いるのだが、その3人は神殿関係者ではないので、僕が暮らす聖女神殿と呼ばれるこの屋敷に入る事ができないのだ。そのため、この町に来て購入したあの家で今は暮らしている。アスカ君の奴隷である3人は、アスカ君の所有物なので今はこの屋敷で明度として働いている。

ちなみに、アスカ君とトモエちゃんも、先日僕と同様に出家をして、見事聖職者の仲間入りをした。アスカ君が神殿騎士で、トモエちゃんは修道賢者という職業に就いている。ぶっちゃけ神殿内の序列では、アスカ君(神殿騎士)→フタバちゃん(退魔術師)→トモエちゃん(修道賢者)→僕(聖女姫だが普段は修道女)の順になる。

ちなみに二人が出家した理由は、僕と同様勇者様御一行によるストーカー行為である。

本当にうざいですね、あの面々。


まあ、それはいいとして。


「これはこれは、私は、シンガーハット王国にある『アメンラウド大神殿総本山第19代世界神眷属聖女姫』を任されているイズミです。で、こちらは、私の専属護衛騎士である聖騎士のファンブルク様、私の旦那様でもあります。そして、専属侍女をしている修道女のマリアとイザベラ、リカです。

此度は、『アメンラウド大神殿ヴァンコック本神殿第9代世界神眷属聖女姫』のご就任、総本山を代表して祝福に参りました。」


こうやって、出だしの挨拶を交わす僕たち面々。久しぶりの再会でも、立場上、堅苦しい挨拶だけは行わないと周囲に示しがつかない。立場といえば、僕のほうが下になるのかな?

イズミちゃんは、総本山の聖女姫なのだから、地方の本部の聖女姫の僕よりも、神殿内での立場としては上のはずである。


しばらく堅苦しい言葉を交わしながら、いろいろな話をしていく僕たち。それは、僕たちのほかにも、新聞記者(第3者)がこの部屋の中にいたからに他ならない。こういった組織のトップ同士の会談では、最初の数十分間は、新聞などの話題提供の一環で第3者を招き入れておくものだ。ただし、それまでの記事の内容が、ゴシップが多いところはこの場にはいないが。

なお、僕たちに関する質疑応答も、この時間内で行っている。

特に僕に関しては、聖女姫として公に世間に晒すようになってから、初めてこういった場を設けているわけだ。大衆向けのゴシップ記事満載なところと、お付き合いしたくはないというのが神殿側の意向であり、そういったところは、たとえ要請がったとしても事前に排除される仕組みが整っている。

もちろん、完全排除は不可能なため、いろいろと書かれる事はあるが、あまり深く突っ込んで名誉棄損やプライバシーを踏みにじむと、もれなくブタ箱行き(奴隷落ち)(それも関係者全員)となる。

あまりプライバシーン配慮が欠けると、もれなくブタ箱行きという世知辛い世界なのだ。

ゴシップ業界というのは。

そのため、大衆娯楽としてゴシップは受け入れられており、僕のような有名人も、大衆娯楽を提供するには吝かではない。もちろん、自分だけならともかく、他者も巻き込むような内容は、提供者でもあまり話す事はないのだが・・・・。

勇者様御一行のストーキング行為については、僕がなぜ出家したのかを話す過程で必要なため、包み隠さず暴露しておいた。『勇者様御一行』という件は、少し暈してはいるがね。

ストーキングは、この世界でも犯罪行為なのだ。間諜たちによる秘密裏に行われるストーキングは対象外だが、堂々と行ってはいけないのだよ。


閑話休題。


一般大衆への話題提供時間が終了すると、記者たちには退席してもらって、プライベートな内容の会話へと移行していく。


「久しぶりだね、イズミちゃん。今の僕の年齢は15歳だから、15年ぶりかな?」

「私は17歳だから、17年ぶりだね。

イズモ君?イズモちゃん?今の容姿なら、イズモちゃんでいいのかな?

イズモちゃんは、生前とはずいぶんと美人になったようだけど。」

「イズミちゃんこそ、すっごい美人だね。旦那さんのファンブルクさんを、よくゲットできたね。」


挨拶もそこそこに、旦那さんの事を聞いてみれば、こんなノロケ話が返ってくる。


「その事?ファンブルク様は、もともと私の国の第3王子だったんだけど、3年前に私を見初めた際に出家して聖騎士になったんだ。

その頃、私はもう聖女姫だったからね。王族と聖職者の結婚自体は、一応認められてはいるのだけね。序列では最下位の修道女だけど、実質神殿トップである私と、王位継承権は国王に子供がいるから下がったけど、王族という立場のファンブルク様が結婚するといろいろとまずいのよ。


まず前提条件として、私は出家するまでは、シンガーハット王国という国の公爵家の第2令嬢という立場だったの。

そして私の家族は、一番上の兄様は宰相を務めていて、義理の弟である国王様を政治面で支えている。世間ではもっぱら、その的確な政治手腕を揶揄って『腹黒宰相様』と呼ばれているわね。

2番目の兄様は近衛騎士に所属していて、今は下っ端だけど将来は結構上の役職に就く事がすでに決定済みなのよ。

まあ、団長や副団長のような、騎士団の運営に直接参加するような役職にはつかないみたいだけどね。その理由は、1つの家系に国の重要職を独占するのはいろいろとまずいという事。


そして姉様は、今年国王様が代替わりしたから王妃様になったの。前王様が崩御したからではなく、単に身体的な衰えを感じて、若い世代に政権を移したというのが表向きの理由で、実際は悠々自適な隠居生活をエンジョイしたかっただけだって、姉様・・・・、今は王妃様が愚痴っていたかな?

ちなみに戴冠式は、私が取り仕切りました。

また、政権を委譲した際に父様も兄様に宰相職を譲って、今は前王様とともに諸国漫遊の旅をしているわ。

ちなみに、前王様夫妻と私の両親は、イズモく・・・・いや、ちがったね。イズモちゃんの聖女叙任式には、シンガーハット王国の国王名代として参加される予定ね。

あと、双子の弟と妹がいるけど、この二人はまだ、基礎教育の最中だから今は置いておくね。


そして私は、この世界の最大宗教の実質的トップである『アメンラウド大神殿総本山第19代世界神眷属聖女姫』。

宗教が政治に口出しすると、いろいろと混乱するでしょ?それは、地球の歴史でも、この世界の歴史でも、既に実証されている出来事だから。

私の旦那様であるファンブルク様は、第3王子という立場で、政治的には一線を引いていたけど腐っても王族。そんな2人が結婚すれば、宗教側の勢力が拡大する恐れがある。私はそんな事するつもりはなくても、周囲の人間がどう出るかはわからない。欲が出てくるのが、人間というい生き物だからね。

それを潰すために、どうしても私と結婚したかった旦那様は、わざわざ出家をしてくれたのよ。そして必死に努力して聖騎士の位に上り詰めて、今年の春に私と結婚した。そして今は、私の旦那様であり、聖騎士団の副隊長であり、私の専属護衛騎士となっている。

ところでイズモちゃんは、なんで男の娘から女の子になったの?」


ノロケ話をした後イズミちゃんは、ついでとばかりに僕の事を聞いてきた。


「僕のこの体は、転生する際に神様たちがノリと勢いで創った体なんだ。しかし、僕がこの世界に来た際に乗り移った女の子も、今の僕とよく似た容姿をしていたみたいだね。そうでないと、転生後にいろいろと齟齬が出てくるからね。

そして、この女の子・・・・名前を『イズモネーゼ=トゥルフ=オストラス』といって、今はもうないオストラス王国の第2王女の立場だったんだ。

まだ赤子の時に、隣国ゲルマニウム帝国から宣戦布告を受け、祖国が戦渦に巻き込まれた際、専属侍女とともに王城を脱出。辺境にある小さな教会で、『シスターイズモ』として育ったんだ。

5歳の時、史上最年少の修道女となったあと、5年後に修道女から聖女に、さらに5年後に世界神より神託が下りて、イズモは『聖女姫』へとジョブチェンジしたみたい。

この辺りは多分、僕の職業が転生段階で『聖女姫』だったことが影響しているんだと思う。」


そんな会話を楽しみながら、僕たちの近況報告会は続いていく。

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