【05-09】武闘大会『魔術部門』決勝トーナメント
結果、決勝に駒を進めた人・・・つまり、一瞬で命を刈り取る事ができた人は、100人中30人。そのうち騎士団所属は20人で、3人を残して全員棄権したため、残りの14人で決勝戦を戦う事になった。
騎士団の面々が大量に棄権したのは、人を殺す覚悟ができているかどうかの違いだ。今ここに残っているのは、覚悟がまだできていない者たちだ。
まあ、それはいいとして。
今回のトーナメントは、都合上二人がシード権を獲得する。例のごとく、対戦相手は籤引きで決まるため、誰がシードをとるのかは運しだいだが・・・・。
籤引きは、前回と同様に紐の端っこを選ぶ方式をとっている。その結果、対戦順はこうなりました。
第1試合・・・・オウガニック=ヴェル=アスモニトVSシャムニモ
第2試合・・・・マルコスVSアスナリース
第3試合・・・・アリスVSニクソン
第4試合・・・・ニャケVSソニア=ポケス=ニードリア
第5試合・・・・メイリンVSサワリース
第6試合・・・・キャルル=ケイ=クラウドVSイナバ=アークネスト=クランダル
シード①・・・・イズモ(第1試合の勝者と対戦)
シード②・・・・トモエ(第6試合の勝者と対戦)
僕とトモエちゃんは、籤運がいいらしく、見事シード権を獲得してしまった。そして順当にいけば、トモエちゃんの対戦相手は、勇者パーティの魔法使いである元クラスメイトのあの子だ。
試合展開は、大きく分けて2通りになった。
1つ目は、体内にある全魔力を一気に放出しての一発勝負。実際は、一発で決まる事はほとんどなく、たいていは10発前後の撃ちあいになる。そして、正面での魔術同士のぶつかりになる、ある意味正面切ったガチンコバトルみたいになる。
もう一方は、戦略・知略を駆使し、強弱の異なる魔術を効率よく使用したガチンコバトルだ。こちらの試合展開は、正面から撃ち出す魔術魔術を囮に、本命は両サイドとか、視覚からの挟撃とか、とにかく弾幕を張り巡らしながら相手を狙い撃ちする感じだ。
そのため、視覚効果としての派手さは、一発勝負よりも大きく、見ごたえが半端なくある。
どちらにしても、一発でもか擦れば致死級の威力のある魔術を使用しているわけで、試合後のリングは、魔術禁止部門以上に荒野と化す事が多い。なんせ、リングを構成している石材を素材に、魔術の弾丸を創る者が多いためだ。それは偏に、一から魔術で弾丸を創ると、魔力の消費量が格段に上がるためだ。素材があるならそれを使ったほうが、魔力消費を劇的に減らせるのだ。
午後から始まった魔術部門の決勝は、そんな感じの試合展開で、試合時間よりもリングの修復時間のほうが多くかかる展開で進んでいく。ただし、試合時間は非常に短く、一番短い試合で約5分、一番長い試合でも、約30分ほどで終了する展開となる。
翌日、第2回戦が朝から始まる。
まず第1試合、イズモVSシャムニモ。
氷と水系統の魔術が得意らしいシャムニモさんは、開始の合図とともにリングを水浸しにするかのように水系統の魔術を放ってくる。時折氷系統も放ってくるので、水浸しになったリングが、アイスリンクのように凍ってくる。
しかし、シャムニモさんは、そんなこと気にもしないのか、さらに魔術を放ち、いつしかリング全体に、厚さ10㎝程の氷に覆われてくる。それも、シャムニモさんの魔術が決まるたびに、その氷の大地は厚さを増していく。
僕は、シャムニモさんの攻撃を、防御魔術で防ぎながら水に変えてリングに垂れ流すと、その後氷に変えて大地を形成していく。時折、転移魔法を使ってシャムニモさんに反撃をするのも忘れない。もちろん使用しているのは、シャムニモさんが作り出した水球や氷塊などだ。
まあ、氷の大地を作るのと反撃用で、使用する量が圧倒的に足りないので、自らの魔力で風と氷と、炎の矢や槍を創り、転移陣を中継させてシャムニモさんの全周囲から攻撃もしているのだけど。なので、僕の背後から発射された矢や槍が、突如僕の目の前にある魔法陣で消え、シャムニモさんの周囲に展開された魔法陣から出現するという、ある意味厄介な攻撃を繰り返しているわけだが。
でも・・・・・、不思議だとは思わないのだろうか?
『なんで氷の層が厚くなってきているのか?』と。
よくよく見れば氷の層とともに、リングの端っこが全周囲で盛り上がってきている事に。何も壁が存在していないのに、まっすぐにせりあがってきている『氷の大地』の異常さに。
これは、僕が地属性の魔術で作り上げているわけだが、シャムニモさんは気にせずに魔術をぶっ放している。それも、氷ではなくガラス質の石材でだ。
2人とも、開始線からほとんど動いていないため、リングの端っこの事なんかは見ることができない。さらに言えば、時間とともにせりあがる氷の大地で、崖下の様子はさらに見る事ができないわけだが・・・・。
ガラスで周囲を固められた氷の大地が、5mほどまでせり上がったころ、この大地を創り上げたシャムニモさんの魔力が枯渇する。
僕は、氷の大地を一気に溶かし巨大なプールを作った。ちょっと強く温めすぎたのか、プールの水は湯気の立ち上ったお風呂と化している。
当然氷の大地のど真ん中に陣取っていたシャムニモさんと僕は、足場を失いそのままお風呂へとダイブするのだが、僕は台地が消失した瞬間に浮遊の魔術を使用しため、お風呂へとダイブするのはシャムニモさんのみだ。
シャムニモさんは、水上へと上がる体力も底をついているのか、お湯の中でもがき溺れている。数秒待っても上がってこなかったので、僕はお湯と必要なくなったガラスの壁を、無作為転移でどこかに跳ばし、シャムニモさんを助ける。
転移先は指定していないので、どこに跳んで行ったのかは、僕の与り知らぬところだ。人里にでも出現したのなら少しばかり問題になるだろうが、秘境や魔境など人里以外に出現したのなら、まあ問題にはならないだろう。
それに、2時間バカで周囲にあるガラスの壁がなくなるようにしてあるので、出現した周囲が水浸しになるだけだ。
ゲホゲホと咽かえるシャムニモさんは、すでに戦意を消失しており、その結果あっけなく降参を宣言して、僕は3回戦へと駒を進める事ができた。
僕は、パーティ内では回復と支援特化なんだけど、純粋な火力特化を打ち負かしてしまった。
それも・・・・・、魔力のごり押しをしていないのにもかかわらずだ。
余談だが・・・・・。
この時どこかに跳ばしたガラスとお湯は、遠く離れた大地にある魔王が暮らす城内に転移したらしい。
それも、何か重要案件を会議するために集まった部屋に転移し、たまたま部屋にいた者たちを溺死させたらしい。
そして、僕の悪戯なのか無意識なのか知らないが、出現した巨大水槽は、1分後に氷となって、溺死しなかった者ごと今度は凍死させたらしいのだ。その後、氷が中に凍らせた者ごと砕け散ったらしい。
その中に、魔王がいたのかどうかは知らないが・・・・。
その後、勇者様ご一行が、魔王と対戦しているので、この珍事にには巻き込まれていないのだが・・・・
これは、魔王討伐から数年後に発表されたとある自叙伝を読んで知った事だ。
僕の与り知らぬ場所で起こった珍事により、魔族の軍勢は、上層部のほとんどを消失させる結果になり、図らずして勇者様ご一行を手助けしてしまったのだ。
勇者様を手助けするつもりは、僕の中には砂粒くらいの大きさも存在していないのにね。
世の中とは、思い通りにはならないものである。
ちなみに、この珍事を題材にした舞台が、大ヒットした事は言うまでもない。
第2試合、アスナリースVSアリスの試合と、第3試合、ソニア=ポケス=ニードリアVSメイリンの試合は、ただの魔法の撃ち合いだったので割愛する。
第4試合、イナバ=アークネスト=クランダルVSトモエ
勇者様ご一行の魔法使いと、我らがパーティ『ジャポニクス』の火力担当トモエちゃんの試合である。
どちらも元同級生で、転生者。
開始の合図とともに、小手調べとばかりにトモエちゃんは、無詠唱で水系統の魔術で弾幕を張る。対するイナバ(別にこの世界では、知り合いでも何でもないし、対戦相手でもないので呼び捨てだ)は、いちいち詠唱をしないと魔術が撃てないらしく、張られた弾幕を対処できないため結構な数被弾している。
そのため、詠唱もしっかりとできていないようで、放つ事に成功できた魔術でも、あまり威力がないのがほとんどである。
対してトモエちゃんは、無詠唱でありながらもその威力が落ちることもない。また、トモエちゃんは、『低燃費で高威力』を探求しているため、今回はなった弾幕(弾幕としてはなった魔法は約300発)で使用された魔力は、通常の魔術師が、弾幕1発分(同じような魔法)の魔術を放った際の使用魔力の100倍程度しか使っていない。
すごい低燃費の弾幕魔術である。それも、1つの属性ではなく、基本4属性が混ざっているのだ。
当然、トモエちゃんが勝ち進む事になり、そのまま順当に勝ち進んで決勝戦は、僕とトモエちゃんになった。
身内同士で戦う事になった決勝戦。
そういえば、魔術禁止部門の決勝も、身内であるサツマ君とアスカ君だった。2つの部門で優勝と準優勝を僕のパーティが掻っ攫っていった事になる。
こういった理由で、別にどちらが優勝しても構わないのだが、本気でトモエちゃんとガチンコ勝負をした事がなかったので、この大会の場を借りて行おうという話になった。実際に2人が本気で戦ってしまうと、この会場程度は、吹っ飛んでしまいかねないので、あくまで本気っぽく見せた5割程度の力で戦う事になる。
それでも、開始とともに始まった弾幕合戦で、すでにリングはボロボロである。観客席には、流れ弾が飛んでこないように結界が張られている。しかし、その結界には、流れ弾の影響で全体に罅が入っており、いつ壊れてもおかしくない状態になっている。
弾幕合戦が始まって10分後、とうとう結界が壊れてしまい、これ以上は観客に怪我人が出かねないため、審判の判断でいったん試合が止まってしまう。
その後、運営の判断で、『同じパーティメンバーであること』という理由で、これ以上試合を行っても無意味(どちらが優勝しても、優勝と準優勝の賞金・商品は総取りとなるため)という判断で、『優勝2人』という結果に落ち着いた。
後の大会日程は、複合部門(個人戦・パーティ戦)が残っているが、これ以上大会を荒らすのは本意ではないので、僕のパーティメンバーは全員棄権する事になった。実際、出場していたら、確実に個人戦は上位を独占する勢いだし、パーティ戦は確実に優勝をしてしまう。
そのため、ほかの出場者たちに華をあげるため、仕方なく棄権したわけだ。
ちなみに、それぞれの部門の優勝は・・・・。
複合部門(個人戦)
ポパイヤという名前の冒険者(僕はこの人物を全く知らない)
複合部門(パーティ戦)
勇者パーティ
となっている。勇者様たちは、何とかメンツを保つことができたみたいだ。
よかったね。




