【05-07】武闘大会『体術部門』決勝トーナメント第2回戦
翌日、魔術禁止部門の第2回戦が、朝早くから始める。観客席では、昨日に続き冒険者ギルド直性のトトカルチョが行われており、第1回戦の結果を踏まえて、白熱した場外バトルが繰り広げられている。
試合速報は、第1回戦に続き、僕のお仲間以外はダイジェストでどうぞ・・・・。
第1試合、シャルルVSラグフォード
縦横無尽に繰り出される剣捌きに、はじめはうまく合わせれなかったラグフォード選手。
しかし、時間が経つにつれて、徐々に己の間合いをとれるようになると攻守が逆転する。間合いの大きな武器は、その間合いの内側に入られると、途端に攻撃力がなくなるのが常らしい。帆ほどの達人でもない限り、この常識を覆す事は困難なんだろう。
結果、間合いを制したラグフォード選手の辛勝で幕を閉じた。
第2試合、メサイアVSマルス
重量武器VS軽量武器の勝負。試合前に行われたトトカルチョでは、レイピアを扱うマルス選手が優勢という結果らしい。
だが、蓋を開けてみれば、早々に相手の武器を破壊したメサイア選手の圧勝だった。どうも、マルス選手は、武器依存の戦闘方法だったらしく、武器がなくなった途端反撃をせずに逃げるばかりだった。
高が武器を手放した(破壊された)程度で、攻撃手段がなくなるとはお粗末な感じである。やはり、徒手空拳の格闘技は、前衛ならば1つや2つ嗜んでおかないといけないね。もちろん、遠距離主体の後衛陣もだけど。
第3試合、イザイヤVSジョンベロン
しかしまあ、イザイヤ選手の鞭捌きは、感嘆とするものがある。あの手首のスナップを多彩に利用して、鞭の軌道を縦横無尽にコントロールしている。その多彩な鞭捌きを捌ききれなかったジョンベロン選手は、度重なる(拷問じみた)鞭による攻撃を受け、体力を極限まで削られて敗北してしまった。
試合後の診察では、本当に拷問を受けた後のように鞭の跡が体中についていた。しっかりと治してあげましたよ、金貨1枚で。
第4試合、アスカVSミファスミス
今回俺は武器を1回戦まで使っていた棍棒から(戦棍)に変更している。対戦相手の壬生も同じようなものだが、1つだけ違うのは、棍棒の先についているのが、鎖でつながれたスイカサイズのとげ付きの鉄球という事だけだ。
鞭とは違い、とれなりの重量があるため鉄球自体の軌道は読みやすいものがある。仮に、棒の軌道を途中で変更したとしても、先に付いている鉄球に振り回されていまい、その結果体勢を崩す結果になってしまうだろう。それが解っているため、相手は予選・1回戦とも、途中で軌道を変えることなく振り回しているわけだが・・・・。
開始の合図とともに俺と相手のミファスミスさんは、相手との距離を保ちながら時計回りに舞台を回る。お互い打撃武器であり、一撃一撃が致死級の攻撃力を有している。そのため、お互い最初の一撃をどうするかを考えながら、徐々に間合いを狭めていく。
間合い的に見れば、今回戦棍を武器に選んでいる俺よりも、モーニングスターが武器であるミファスミスさんの要は広いし、身長差においても俺のほうが不利である。
そんな事を考えながらも、徐々に間合いが狭まっていき、・・・・ミファスミスさんが先に仕掛ける事になった。
ミファスミスさんは、モーニングスターを頭上で回転させて、遠心力を利用して威力を付けていく。対する俺は、戦棍をしっかりと握り、どんな攻撃にも対応できるように、袈裟懸けのように斜めに構える。
回転の勢いを殺さずにつかの先端を持ちながら鉄球を俺のほうへと向けるミファスミスさん。
鉄球は、俺の頭をめがけて左側から襲ってくる。俺は、その場でしゃがむ事で鉄球を交わし、そのままの姿勢でミファスミスさんに向けて駆け出す。
ミファスミスさんは、鉄球に振り回される感じで一回転するが、その実しっかりと制御しており・・・・。今度は、自身に向かって駆け出している俺の胴体を目標に鉄球の位置を調節する。
俺は、走りながらジャンプして迫りくる鉄球を交わすと、その勢いを下すことなく上段から戦棍を振り下ろす。ミファスミスさんは、モーニングスターの柄の部分で防ぐ。急な軌道変更をした鉄球が暴れるが、ミファスミスさんはそれを強引にねじ伏せ、攻撃へと軌道を変化させてくる。
その際、軌道が読み切れずに、俺は鉄球に何度かかすってしまった。
そんな攻防が激しく変化していく中、とうとう俺の攻撃がミファスミスさんが柄を持つ右手に当たる。
俺はこれを好機と思い、連続で戦棍を縦横無尽に振り回す。そして、邪魔な鉄球を排除すべく、柄と固定している部分をうまく破壊して、鉄球を場外へと放りだす事に成功する。
その後は、お互い棍棒同士の打ち合いになったが、すばしっこい俺に翻弄されたミファスミスさんが、捌ききれなくなり、とうとう膝をついてしまう。俺は攻撃の勢いそのままにミファスミスさんの首元に戦棍を寸止めして勝負をつけた。
さてと、イズモちゃんの所に、治療してもらいに行こうかな。
俺は、ついさっきまで死闘を繰り返していたミファスミスさんとともに、先ほどの死闘をお互いに総括しながら、運営横にある治療所へと歩いていく。
それにしてもこの生体人形、見れば見るほど生身と変わらない。現に、あの鉄球が掠った場所からは、赤い血を流れているし、打撲の跡も生々しい。当然肌を切り裂けば、生身の人間同様赤い肉が見える。
それこそ、クローン技術で創ったといわれても、納得してしまうほどの出来だ。
イズモちゃん曰く、体液関連は、すべて俺の魔力から精製されているらしい。そのため、俺は膨大な魔力があっても、この生体人形を維持していくためにそのほとんどを使ってしまい、攻撃魔術を使用する事は出来ないのだが・・・・。
第5試合、ヨサクVSナガト
俄仕込みの剣術であるナガト君は、相手の間合いを殺しながらも奮闘し、手数を多くする事により相手の攻撃を防いでいた。『攻撃は最大の防御である』の如く、修練不足を自身の持つ最高速でもって剣を振るう事でカバーしていたが、はやり相手のほうが10歩以上も上手だった。
戦斧を楯のように扱ってナガト君の攻撃をしのいでいる。そして、ナガト君のスタミナが切れて、攻撃が途切れた瞬間を狙い、彼の戦斧が火を噴き、ナガト君を場外へと突き飛ばした。
ナガト君は頑張ったんだけど、やはり体力も剣技も俄仕込みでは敵わない相手だったんだね。今後の課題を見つける事が出来た試合なので、良しとしておこうかな。
第6試合、コウスケ=アークネスト=クランダルVSモントリオ
さて、われらが勇者様のご登場である。
第1回戦は瞬殺していたが、今回は結構苦戦を強いられている。さすがにまだ、古傷による変な癖が抜けきっていないため、少々バランスが崩れてしまっている。そのため、数回に1回は、(戦棍で殴られてしまっているわけだ。
これでは、魔王軍が支配する大陸に渡っても、すぐに殺されてしまうよ。
それでもなんとか、3回戦に駒を進める事は出来たんだけどね。
その後、僕のもとに治療に訪れた勇者様。
ちなみに、今大会に出場した選手のほとんどが、僕に治療を頼んできている。頼んでいないのは、金貨1枚を払えない貧乏人どもだ。実際冒険者の中には、どんなにランクが高くても、『宵越しの銭は持たない』という江戸っ子気質の人種が結構な数存在している。
そのため貧乏神とは、お友達を超えて親戚だと豪語する者さえいる。それは豪語していいのだろうかとは思わなくもないが、そこらへんは本人の自由だから無視している。
さて、治療を終えた勇者様だが、なぜか知らないがそのまま治療室に居座っており、僕を勇者様パーティにお誘いしていたりする。僕は、言質を取られないように言葉を選んで適当にあしらっているのだが、とってもウザったい事この上ない。
『魔王を倒すには、君の力だ必要だ!』とか、『君に出会うために、俺はこの国に来た!』とか、『俺のパーティには、治療師はいない。君のような優秀な治療師は、大歓迎だ』とか。
あなたは、どこの吟遊詩人ですか?それとも、恋愛評論家ですか?
正直言って、魔王だ勇者だなんて単語には、僕は靡くどころか興味もありません。
あっ!サツマ君とフタバちゃんの試合が、終わってしまったではないか。
2人の様子から察して、どうもサツマ君が勝利を収めたようだけど。この馬鹿勇者のせいで、観戦できなかったではないか。ほんとにもう・・・・。しっかりと試合を観戦するために、わざわざ新しく治療魔法まで開発して挑んでいたのに!!
今回僕が使っていたけがや感染症などを診察する【スキャン】という魔術と、その診察結果の内容をすべて治療する【全能完治治癒】という魔術は、このために開発していたのだ。ついでに視覚効果も狙って、魔法陣によるエフェクトも追加しておいたのだが・・・・。
勇者君は知らないかもしれないけど、治療室は運営の隣だけあって、試合を観戦するのにはベストな場所なんだよ。それを、そんなくだらないことを話すために、わざとなのかどうなのかは知らないけれど、試合会場が見えない位置取りでこの馬鹿勇者は話している。
何度も何度も、耳に胼胝ができるほどお断りの返事をしているのに・・・・・・。
ああ、イライラとストレスが溜まっていく。
アスカ君の尻尾で癒されたい。あの触り心地は最高なんだよね。
そんなこんなでこの勇者様は、運営から追い出されるまでしつこく勧誘をしていた。会場から不通に出ると、入り口で待ち伏せされるかもしれないので、僕は転移でサクッと家まで戻ったのだった。
余談だが・・・・。
勇者様は、どうも明け方近くまで、(大会運営の)関係者専用の出入り口で僕を待っていたらしく、寝不足が祟って第3試合で敗北するという、あまりに情けない結果を残した。
おいおい、町の外で野営するわけじゃないんだからさ。しっかりとベッドの上で寝て、疲れを取っておかないと。風の噂では、パーティメンバーに、1日説教を食らっていたそうな。
ちなみに準決勝の対戦相手はこうなっております。
第1試合・・・・メサイアVSアスカ
第2試合・・・・ヨサクVSサツマ
寝不足だか何だか知らないけど、勇者が決勝まで残らないでどうするんでしょうかね?『寝不足だったから負けた』なんて言い訳は、正直言って聞きたくないですよ。実際、説教の時にそんな事を、真顔で宣言していたらしいが・・・・。




