【05-03】武闘大会『体術部門』予選
王都ヴァンコックに到着してはや1か月。
今日は、『ツゥアイライド王国建国記念 第100回武闘大会』が行われる日でもあります。
結局、回復魔法が使用できる人材は、僕以外見つからなかったので、大会中の選手の回復はすべて僕が行う事になってしまいました。怪我を負った場合、僕に治療してもらう時は、怪我の大小に関わらず金貨1枚の費用が発生(僕のパーティメンバーに対しては不要)する事になった。
これは、僕自身に対する治療の不公平をなくすための処置である。
つまり、金貨1枚払いたくなければ、自己責任で怪我を治す事になる。これは、僕とギルドで取り決めた事であり、国からの許可も得ている決定事項でもある。その代わり、治癒担当としての報酬は貰わない事になっているのだが・・・・。
また会場での説明時に、全出場選手に告知してあり、いざ治療する段階になって何らかの文句が言えないようにしてあったりする。
それでも、文句を言うものが出てきた場合、その者に対しては、一切の治療行為を行わないことも確認している。
もちろん、運営委員会の公認であり、決定事項となっている。
まずは、『魔術禁止部門』の予選からスタートします。
出場するのは、アスカ君と、奴隷のアズール、シャルルの3人だ。最初は僕とトモエちゃんは、年上である3人の奴隷に対して『さん』付けで読んでいたが、『奴隷に対して敬称付けはおかしい』と3人から言われ、現在は呼び捨てで呼んでいたりする。3人のご主人様であるアスカ君は、初めから呼び捨てだったが。
魔術禁止部門は、参加者が一番多い事でも知られている。それは、戦闘に即した魔術が使用できる者が、圧倒的に少ないためだ。ファンタジーな世界でありながら、肉弾戦で闘う事が圧倒的に多い。
そのため、魔術師の獲得は、国家も含めての争奪戦となっていたりする。
それはいいとして、『魔術禁止部門』の参加者は約600人。
本選出場枠の32人を決める予選では、16のブロックに別けたバトルロワイヤル方式で行われ、生き残った2人が本選に出場できる。
予選でのルールは次の3つ。
・リング以外の場所に、足の裏がついた時点で失格
・魔術、魔導具、武器の使用は禁止
・相手を殺したら失格
サクサクと予選は進み、現在が第8ブロックの予選が始まろうとしている。
ここには、アスカ君が出場する事になっている。ちなみに、アスカ君たち3人は、偶然なのかうまくばらけており、予選でぶつかる事はない。
第1ブロックだったアズールは、その卓越した剣捌きでうまく立ち回っていたが、残り5人となったとことで2対1となってしまい、二人の攻撃を捌ききれずに惜しくも敗退してしまった。
体力や戦闘時の感などを取り戻すための訓練は、1カ月ほど欠かさず行っていたのだが、体力面での不安がある状態での出場である。最後の5人に残ったのは行幸といえるだろう。
ちなみにこの大会には、首輪を填めた奴隷も多数参加しているため、奴隷だからと言って同行される事はない。また、そんな事をしている者は、真っ先に袋叩きにあっており開始数分でリタイアとなっている。
もちろん、大会中は、身分を盾にしての脅迫等は、発覚した時点で失格となるルールがある。また、大会の前後においても、身分を盾にしての脅迫等を行った場合は、身分の貴賤に問わず国王の名のもとに、厳罰が課せられる事になっている。主に貴族のボンボンに多いが、この規則に抵触して、毎年数家がお家取り潰しや降爵の処分にあっているらしい。
さて、第8試合のアスカ君は、いつものメイド服で出場している。
下着には、力をセーブできる例の体操服とブルマを標準仕様で着用済み。メイド服といっても、いつも着ている、そこらの金属製の鎧以上の防御力を誇っているモノではなく、紙装甲のただの布で作られた既製品である。
そして、アスカ君をはじめ、僕とトモエちゃんは、9割の力を体操服を着用する事で封印(封印できる最高値)し、この大会に出場している。全力で闘った場合、一番魔法以外の戦闘力のない僕ですら、腹パン一発で相手を殺してしまう可能性があるからね。
実際、オーク程度までならば、腹パン一発で殺す事が可能である。アスカ君は、全力で闘えば、Aランク程度の魔物くらいは腹パン数発で倒せるだろうと思っている。
始めの合図とともに、アスカ君は、けっこうな速さでリングを一周する。奴隷を含めたパーティ内で、一番魔法に関する適用がないアスカ君の素の力である。実際は魔術も使用できるのだが、とある理由で、魔力のほとんどを持っていかれているため、使用不能となっているだけだが。
さらに言えば、腹パン一発で倒しているみたいだが、腹パンを決めているのが腕ではなく、お尻から生えている尻尾なのだ。
一陣の風が吹き荒れた後、リングに残っていたのは、アスカ君を含めて4人だけだった。残りの3人は、アスカ君が行った戦法に対応できた実力派という事だ。
そして、お互い睨み合ってから、2組に別れて戦闘が始まる。
アスカ君の相手は、倍ほどの体格のある筋肉達磨の男性である。
男が手に持っている武器は、巨大なハンマーと斧が柄頭についた複合武器さらに、穂先部分は槍みたいに刃物が取り付けられており、どちらかといえば、槍に戦斧と戦槌を取り付けている感じである。
対してアスカ君は、予選開始時から持っていた鋼鉄製の棍棒(直径3㎝、長さ2m)だ。実際この棍棒で、出場選手を場外にたたき出していた。
アスカ君は、その筋肉達磨の攻撃を受け流しながら攻撃を加えていく。お互いの攻守が、激しく逆転していく中、いつしか二人の攻防を中心に、竜巻のようなものが発生する。そのうち、もう一方の先頭を巻き込んでしまった竜巻は、二人を空高く放り投げてリングアウトさせてしまった。
その結果、アスカ君と、筋肉達磨事メサイア選手が、第8ブロックの勝者として決勝進出となった。
二人とも、不完全燃焼気味な顔つきをしていたが、ルールはルールだ。決勝での再戦を誓って、その場はお開きとなった。
第12ブロックに登場したシャルルは、双剣を使って相手を翻弄し、組み合わせも手伝って見事決勝に進出する事ができた。
何とか日暮れまでに予選全試合は終了し、明日の午前中に決勝トーナメントが開催される形となる。
予選後、決勝戦にコマを進めた32人は、籤引きを行い対戦相手を決定する。籤引きの方法は、16本の紐を使用したもので、中心部分を隠した状態で紐の端を選ぶ方式だ。
その結果、次のように決定した。
第1試合・・・・シャルルVSチャールズ=エルグラド
第2試合・・・・ラグフォードVSルビナス
第3試合・・・・メサイアVSイヨ
第4試合・・・・ココットVSマルス
第5試合・・・・ワトソンVSイザイヤ
第6試合・・・・ジョンベロンVSナルミ=シンジョウ
第7試合・・・・アスカVSアマゾネス
第8試合・・・・ミファスミスVSクフェリス=ミランス=メッサイア
第9試合・・・・ヨサクVSチェン=レオン
第10試合・・・グーグリVSナガト
第11試合・・・コウスケ=アークネスト=クランダルVSザック
第12試合・・・モントリオVSパリジャン
第13試合・・・シカゴーニVSファンダオ
第14試合・・・サプリエルVSガーナッツ
第15試合・・・サツマVSウェルスリ
第16試合・・・フタバVSナンシー=レオパレス
知らない名前が多いが、どこかで聞いたような名前もちらほらといる。ちなみに、第3試合のイヨちゃん(元の名前は対馬伊予)と、第10試合のナガト君(元の名前は丹波長門)、第15試合のサツマ君(元の名前は(ヤマシロサツマ))と、第16試合のフタバちゃん(元の名前は大隅双葉)は、半月ほど前にこの国の海に面した港町(王都から片道約4日の距離)に遊びに行った際に、町の入り口で見つけた元クラスメイトの4人だ。
ちなみに王都では、僕たちが借りている家に居候をしていたりする。4人ともこの世界の通貨を持っていないし、どうせしばらくの間行動を共にするので、空いている部屋を貸しているのだ。
この世界には僕やトモエちゃんのような転生ではなく、元の世界そのままの体で転移してきたらしい。転移してきたためか、現段階では魔法的な方向にはチートがなく、肉弾戦方向にチートがかかっているアスカ君のような脳筋タイプである。
ただし、僕が行った鑑定では、イヨちゃんとフタバちゃんには、戦略魔法が扱えるだけの魔力を保有している事は解っている。そのため、この大会が終了した後は、しばらくの間僕たちと行動を共にして魔法を習う事になっている。
付け焼刃的に戦闘訓練を行い、見事決勝進出を果たしたので、やっぱり異世界人は現地人に比べて戦闘能力が突出しているらしい。
あと、どうも勇者君もこの大会に出場しているらしい。
第11試合のコウスケ=アークネスト=クランダル選手だ。
どうもどこかの貴族か王族と結婚して、この名前になったみたいだ。昔の家名が1つも入っていないので、養子として結婚したらしい。
何故いるのかは知らないが、イヨちゃんたち4人を見た際は、少し驚きの顔をしていた。しかし、僕とアスカ君、トモエちゃんを見ても、4人のように驚いたりはしていなかったみたいだ。
実際、一番地球のころの容姿に近いトモエちゃんですら、当時の面影は少し残っているくらいで、ほとんどこの世界にいる人と同じ顔だから、気づかないのかもしれない。僕に至っては、性別も含めて完全に容姿が違うしね。アスカ君は、僕が創った体を使っているので全くの別人だしね。
明日に向けて、何か体力の付く食事でも作らないとね。
僕とトモエちゃんに至っては、夜の襲撃に耐える体力がないといけないし・・・・。奴隷が3人増えたとはいえ、毎日3回戦は行っている。
どこにそんな体力があるのかな?アスカ君には。二人で、真剣に悩んでいる今日この頃です。




