【05-02】マイホーム(仮)と奴隷市
結局家は、購入ではなく、借りる事に落ち着いた。
この世界では、街中で家を購入する際は、その町で発行される市民権が必要との事。
位置固定型転移門が世界中の町や村に設置されたこの世界では、たとえ定住していたとしても世界中を飛び回る事は可能だ。ある程度のお金を持っている高ランク冒険者だと、宿代を払うくらいならば、何処かの町の市民権を取得して定住するという選択をする者が、圧倒的に多いのも事実である。
で、その肝心の市民権を取得する方法だが。
まずは、この町で産まれた者は、出生届が受理された時点で自動的に市民権が貰える仕組みになっている。ただし、市民権が発行されるのは、領主が住んでいる町の身のため、領主のいない村などでは、村に必ずある冒険者ギルドが市民権の発行権限を代理で持っている。
そのため、出生届が出されていない子供には、当然だが市民権を持っていないため、町を出る事もできない家なき子状態となる。
ただ、たいていの町や村では、人口把握や税金などの行政作業を円滑に進めるため、5年に1度市民権の所有の調査が行われている。この調査は、町にいるすべての者が対象となっており(根無し草である冒険者などに関しては、ギルド発行のギルドカードの提示でよい)、提示がない場合はたとえ乳飲み子でも(乳飲み子の場合は、両親ともども市民権を剥奪したうえで)、問答無用で門の外に叩き出されてしまう。
で、こうなってしまうと、5年間犯罪者として登録されてしまうため、町や村への入城が出来なくなってしまう。
異世界人は、こんな事にはならないよ。
たびたび異世界人が迷い込むこの世界では、入城の際のチェックで、種族の後ろに(異世界転生者)もしくは、(異世界転移者)とつくのでその場でそれなりの対応を受ける事が出来る。それなりに対応とは、1年間の仮の市民権と職業の斡旋、文字と言語の習得となっている。
僕たち3人は、こういった理由から、一応最初に訪れた町の仮の市民権は持っている。
では、冒険者や旅商人などが、市民権を獲得するにはどうしたらいいかというと。
定住しようとしている町に拠点を作り、1年間生活をする事らしい。
先の理由で、何処に拠点を作っても、世界中何処へでも行くことが出来るこの世界では、自分たちが暮らしやすい場所に拠点を造るのが定例となっている。まあ、大商人の子息たちになってくると、支店長として親元を離れて店を継いでいくことになる。ぶっちゃけ暖簾別けみたいな感じだね。だから、貴族でもない限りは、次男坊でも三男坊でもあまり関係なくなってくるのだ。
で、僕たちは、まだまだ世界の1割も観ていない。
というか、ツゥアイライド王国以外、他の国にまだ行っていないので、気ままな野良ネコ暮らしをこれからもしていくつもりである。そして、今回のように長期滞在して自分たちの好みの町を見つけていくつもりである。
閑話休題。
僕たちが、王都の一角に借りた家は、ちょっと高級な住宅街にある煉瓦造りの庭付きの3階建ての小さな家だ。
壁1枚隔てて隣家と接しているが、角地にあるためちょっとお高めでもある。長屋みたいな感じの家だが、土地がない王都ではこれでも上等な部類に入っている。
周辺の治安はよく、中央市場とは徒歩5分と至近距離にあるため、日常生活を送るのもベストな位置関係にある。さらにうれしいのは、井戸と風呂トイレが敷地地内にあるという事だ。これが家賃が安くなると、風呂なしの共同トイレ、井戸まで徒歩5分以上とかいう物件も存在している。
内装は、1階に北向きの玄関。風呂トイレ、10m四方ほどのLDKと、5m四方ほどの石畳が敷かれた土間。LDKを出ると、南向きに10m四方ほどの庭となっている。隣の家との間隔も広く(どうも庭同士が板塀を隔てて連なっているみたいだ)、3階建ての建物が連なっている割には日当たり抜群である。板塀の高さも5m程るため、プライバシーも完璧だ。
玄関を入ると、石畳が敷かれた土間となっており、土間の一角に井戸が設置されている。井戸の近くには、水回りが集約されているため、家事動線はとても短くなっている。トイレは、洋式便座で簡易水洗式(流す水は井戸から汲んでタンクに溜めている方式)となっており、下水ももちろん完備しているため清潔である。
2階は、廊下を挟んで4つずつ部屋が並んでおり、3階は、大きな部屋が1つと、ウォークインクローゼットが1つ、残りは屋上となっている。
どうせ毎晩アスカ君の襲撃に遭うので、2階の部屋はたぶん使用しないだろう。奴隷を購入したとしてもだ。
生活用品を購入後、早速今日から入居を開始する。
お風呂とトイレは、井戸から水を汲んでから沸かすという事だが、そんな面倒くさいことはしないのが僕たちだ。魔法が使えないアスカ君については、トイレに関していえば本来の使い方をしなければいけないが、僕とトモエちゃんは、魔法で片づけてしまう。
ツゥアイライド王国王都ヴァンコックで暮らし始めて3日後、今日は月に似3回ある奴隷市が開かれる日だ。奴隷市がある場所は、奴隷商館が立ち並んでいる中心にある一際大きな建物となる。
奴隷市に参加するには、次のような決まりごとがある。
1つ。
中に入るには、冷やかし防止を含んだ入場料として1人金貨1枚が必要。
1つ。
必ず競りに1回以上参加をする事(競り落とさなくてもよい)。
1つ。
競りに参加しなかった場合は、罰金として金貨10枚を支払う。
1つ。
購入した奴隷は、その場で奴隷契約を行う事。
入り口で金貨1枚ずつ支払い、1枚ずつ入札札と出品奴隷一覧表を受け取る。この入札札は魔道具になっており、各競りの参加状況や金額などを記録するものだ。そして、帰る時に出口で回収され、競りに参加したかどうかを確認されるわけだ。
ちなみに、入札札の通し番号は、僕が102番、アスカ君が103番、トモエちゃんが104番だ。この番号は1番から順に増えていくので、少なくとm100人以上が今回の奴隷市に参加している事になる。
「ところで、どんな奴隷を選ぶんだ?」
アスカ君が基本的?な事を聞いてきた。僕とトモエちゃんは、事前に打ち合わせていたことを順にアスカ君に説明していく。
「まずは、家事の事は考えなくてもいいよ。料理は僕にかなう者はいないと思うし、それ以外は魔法を使った方が速くてきれいにできるからね。」
「アスカ君の夜伽の相手だからね。当然女の子の奴隷にしないといけないよ!!アスカ君が、そっちの趣味も持っているのなら別だけど。仮にアスカ君がそっちの趣味を持っていても、私たちはアスカ君を愛していくから構わないといえば構わないで度ね。」
「そうそう。そっちの場合は、アスカ君は、どっちになるんだろうね?男の娘だから入れられる方かな?」
「いやいや。俺にはそっちの趣味はないからね!!それとも何?トモエちゃんとイズモちゃんは、まさか腐女子とか、貴腐人とか呼ばれている人種なの?」
「どうだろうね~~~~、トモエちゃん?」
「ん~~~~。どうなんだろう?イズモちゃん?」
「えっ?」
少し、アスカ君の事をイジメすぎたので、話を元に戻す。
「アスカ君弄りはこのくらいにしておいて、後は前衛側の攻撃スキル持ちかな?後衛職は僕とトモエちゃんだけでも過剰戦力だからね。これ以上増えると、アスカ君の出番がなくなるよ?」
「でも俺、鑑定スキルは持っていないぞ。」
「いや、この前渡したから持っているはずだよ。ほら、『世界図書館ワールドライブラリー(LV1)』と『鑑定視(LV1)』。まだレベルは低いけど、持っているスキルくらいなら視れると思うよ。
心配なら周囲の人で実験してみたら?」
僕のこの発言を受けて、アスカ君と何故かトモエちゃんも、周囲の人物を相手に鑑定をする。
「ではこれより、奴隷市を始めたいと思います。」
そんな事をしている内に、奴隷市の開始時刻となったようだ。
閑話休題。
「アスカ君。・・・・・・ロリコン属性も持っていたんだね。」
そんな事を言い放つトモエちゃん。確かにアスカ君に連れられている奴隷ちゃんは、全員10~15歳前後の見た目の3人だ。
1人目は、エルフ族の女の子で、見た年齢は10歳くらいのコレットちゃん100歳。職業は精霊術師。
本人曰く、エルフ族で言えばまだ成人すらしていないという。ちなみに、エルフ族の成人年齢は150歳だとか。そのため、この年齢でもアスカ君の夜のお供はまだできないらしい。
持っている戦闘スキルは、精霊魔法・光魔法・風魔法・水魔法の4つだ。後は、こまごました生活スキルが10個ほど。そして、『精霊王の巫女』という面白そうな称号を持っている。魔法の修業はまだ始めたばかりでどれも『LV1』だが、鍛えていけば、大きく化けそうな女の子である。
奴隷になった経緯は、住んでいた町が戦火で燃やされて町の住民毎奴隷落ちになったとか。そこで買われた奴隷商人に連れられてこの町にやってきたんだそうだ。
2人目は、ダークエルフの女の子で、23歳とアスカ君よりも年上であるアズールさん。職業は魔法剣闘士。
もちろん、アスカ君の夜の相手の筆頭奴隷でもある。昨日の夜は、僕とトモエちゃんの後にやったらしく、常時リードしていたと今朝一番に聞いた。
この世界のダークエルフは、どうも闇の力が強い異世界から来た種族との間に生まれた種族(どんな種族化は文献にも載っていない事なので不明)で、寿命は純人族の2~5倍くらいしかない。種族としての特徴は、身体能力に優れ魔力も多いため、脳筋でありながらそれなりに魔法も扱えるという万能種族となっている。そのため、特異的なスキル構成はしていないが、うまく鍛えていけば、大きく飛躍する可能性を秘めている。
奴隷になった経緯は、もともと冒険者をしており、その過程で大きな借金を作ってしまったため。冒険者だったころの装備は、その借金返済のためにすべて売り払ってしまっている。
3人目は、エルフ族と妖狐族(それも9本の尻尾が生えたいる)のハーフの女の子で、150歳のシャルルちゃん。職業は精霊呪術師というちょっと変わった複合職だ。精霊呪術師という後衛職だが、双剣使いでもある。そのため、僕たちのパーティ内では、中衛を務める事になっている。
成人してすでに100年近く経っているらしいが、見た目年齢は10歳くらいのロリッ娘である。もちろん、アスカ君の夜の奉仕者でもある。
エルフ族では種族的に使う事が出来ない、闇属性と火属性の魔法も使う事が出来るため、奴隷の中では一番チートじみている女の子でもある。そこら辺をうまく鍛えていけば、下手をすると僕とトモエちゃんみたいな、魔法脳筋型チートにできそうである。
奴隷になった経緯は、何かの投資詐欺に引っかかって有り金全部を巻き上げられたから。頭が少し弱そうなので、そこら辺も鍛えていかないといけないかもしれない。
「アスカ君。生き物を買う時は、死ぬまで面倒を見ようね。アスカ君のお金で。途中で飽きたからと、捨ててくる事はしてはだめだからね!!」
「お、おう!!それは解っているさ。死ぬまで面倒を見るつもりだ。しかしな~~~。確実に、俺より長生きする子もいるんだが、その場合はどうするつもりだ?イズモちゃん?」
「この世界では、魔力を多く持っている人ほど、寿命も長くなる傾向があるのだよ。その理屈で考えると、僕とトモエちゃんの寿命は、エルフ族並みに長生きするんだよね。それも、老化具合も自由自在ときている。
そして、アスカ君は、そもそも人間ですらない事理解している?しいて言うならばホムンクルスといったほうがいいかな。ちなみにアスカ君の寿命は、制作者である僕に準拠しているからね。
そう言った理由で、僕たち3人につては、そこのエルフちゃんが死ぬまでは生きていられると思うよ?」
「その話、初耳なんだけど・・・・。」
「俺も初めて聞いた。」
「そう?言ってなかったのはごめんね。聞かれなかったし、聞かれなければ答える気もなかったから。それに、どうせすぐに気づく事だしね。」
「確かに、このまま暮らして行けば、いずれかは気づくかもしれなかったけど。」
僕の言葉に、複雑な心境になる2人。しかし、『まあ、1人じゃないからいいか』と、完全に開き直る。
その後は、借りた家に戻る前に、奴隷ちゃんたちの服を選びに、服屋さんに突撃していくのだった。




