【03-07】収納魔法の代用品
ギルドカードを作った僕たちは、そのままギルドの内にある部屋を取って一休みします。
ここのギルドは4階建てで、分厚い壁の丈夫な石造りの建物です。
4階は、各ギルド職員専用のフロアーで、一番奥がギルド長の部屋みたいです。行く気はありませんが。
で、2階と3階は宿屋のような部屋となっているとのこと。2階は、1人部屋が並んでおり、3階は、図書室と2~4人部屋となっている。
1階は、カウンターと食堂。買取カウンターと風呂・トイレ、あとは雑魚寝部屋が4つくらい。裏口を出ると、小さな庭を囲むように倉庫が並んでいます。
そして、その倉庫の一角には、地下へと降りる階段があります。地下にいくと、ギルドの敷地いっぱいの広い空間があります。この空間では、普段は冒険者たちの訓練として開放されており、有事の際はこの村に住んでいる非戦闘員たちの避難所として機能するらしい。
そんなギルドが経営している宿屋に部屋を借りた僕たち一行。
すでに夕暮れ時なので、僕たちは部屋の中に荷物を置いて(といっても盗賊さんのアジトから失敬してきたお宝を詰めた魔法の袋位しかありませんが)、食事とお風呂をいただきます。
一番の理由は、夕暮れ時でこれから宿を探すのもめんどいし、ここならまだ部屋が空いているとシャーシャさんから聞いていたし。
村の中には10件くらいの宿があり、トイレはともかく風呂はついていないので、村の中にある共同風呂に行くしかない。ギルド経営の宿は、風呂とトイレは共同だが建物の中にあるのだ。
そんな理由で、ギルドの宿の部屋が空いていたので即決したわけだ。
食事と風呂をいただいた後、まずはこれからの予定をざっくりと決めていきましょうか。
「これからの予定ですが・・・・・。
今日はもう遅いので、明日の朝食後に、まずは服屋さんと武器屋さんに行きましょう。その後は、この村にある『位置固定型転移門』に行って3人の魔力を登録しましょうか。」
「イズモちゃん?俺たちは徐空間魔法があるよね。言ってみれば、自前で転移魔法が使えて、一度でも行った場所ならば何処にでも自由に行く事が可能なんだよね?
なんで、『位置固定型転移門』に魔力登録をするの?」
アスカ君が、こんなことを質問してくる。なので僕は、自分が考えていることを素直に話ていく。
「まず前提条件として、時空間属性を持っている者が少ないという事。」
僕は、こう前置きしてから、時空間属性について説明を入れていく。
《時空間属性》
時間と空間に干渉する最上位属性。属性の習得率は5%となる希少属性。
時空を超えてやってくる転生者もしくは転移者が、稀に習得している属性。もしくはその子孫(子孫の場合は、5人に1人)が習得している。転移者においては、神との面会を果たした者は100%(任意で取得するため)習得している。
対象の時間を操作して老化や若年化を促進させる事が可能。空間に干渉することで、目的地へ瞬間的に移動したり、大質量の荷物を収納したりできる。攻撃に使用した場合は、空間事切断したりするため、どんな強固な防壁や結界も意味をなさない。
「・・・・こんな属性だけどね。
確率的には20人に1人、子孫も入れていけば10人に1人くらいは持っていそうな属性だけど、僕やトモエちゃんみたいに十全に使いこなせている人物はとても少ないと思っているんだ。
保有魔力や魔素マナから魔力属性へと変換する効率の問題があるから、”ただ時空間属性を持っているだけ”という人が多いにも事実。さらに言えば、この確率の数値は、この世界に存在している生命体すべてにおいての確率だからね。人間種だけで考えると、さらに少なくなると思う。
これを踏まえれば、時空間属性を十全に使いこなせれる僕たちは、権力者たちから見れば、『何を差し置いてでもほしい』人材という事になる。
てな事で、隠せれるのならば、なるべく隠しておきたいの。
そのための方策として、持っている事がすぐにばれそうな2つの能力『転移魔法』と『空間収納魔法』について、代用できるモノがあるので代用させてもらおうという話。
『転移魔法』については、この世界には、ゲームでおなじみの『位置固定型転移門』が、主要都市や集落にあるからね。普段は、ほかの人たちと同様に、ポータルを利用していけばいいと思う。そのためには、使用できるポータルの数を増やしていくしかない。
まあ、いざという時は、転移魔法を使うのも厭わないけどね。
もう1つの能力である『空間収納魔法』については、魔法の袋的なモノがこの世界に存在しているからね。盗賊さんたちのアジトに、これがあったのはもうけものだね。一体いくらするのかは知らないから、明日雑貨屋さんを覗いた時にでも確認しようか。その時、どんな種類があるのかもできれば確認したいね。
まあ、こんな片田舎じゃ、そもそも置いてあるかどうか怪しいけれどね。
それはともかく、盗賊さんの置き土産を視る限り、何の変哲のないモノが、突然魔法の袋になるわけだけど・・・・・。
僕については、この修道服の唯一の小物入れであるこの腰のポーチを、予備としてこの腕輪を『収納魔法の代用品』にするつもりだけど、2人は何を『収納魔法の代用品』にするつもり?」
そう言いながら僕は、壁にかけられている修道服と、左手首に填めている金属の腕輪を指し示す。
現在僕は、修道服を脱いで体操服とブルマ(ジャージ付)という格好をしている。もう外に出る予定はな痛め、寝るのに少し邪魔な修道服を脱いでいる状態だ。これは、アスカ君とトモエちゃんも同様である。
実は、盗賊さんの置き土産であるお宝たちは、一部を除いてすべてギルドに売ってしまっている。モノ的に、僕たちには必要ないモノばかりだったからだ。
現在、僕たちの手元にあるのは、リュックサック型の魔法の袋が人数分と、この世界のお金をアジトにあった分すべて。あとは、腕輪などの邪魔にならない装飾品が少しとなっている。僕が填めている腕輪も、そのうちの1つである。
武器については、鉄屑同然だったため、すべて売り払っている。
リュックサックについては、荷物らしきものを何1つもっていない僕たちには必要なモノ(実際の荷物はすべて収納魔法の中に入っているが)なので、人数分貰っておく事にしただけだ。
これまで売り払うと”いろいろと”怪しまれるしね!!
もう1つの理由として、背中に何かを背負っていれば、背中を護る防具代わりにもなるしね。
両手は開けておきたいという理由もあったな。両手が塞がっていると、いろいろと危険な場面もあるしね。
「・・・・そうね。
セーラー服についているポケットでもいいけど、私もイズモちゃんのような小さなポシェットがほしいから、明日雑貨屋さんで適当に見繕うつもり。そしてそれを、『収納魔法の代用品』にするつもりだよ。サブには、イズモちゃん同様腕輪にしておこうかな。」
これは、トモエちゃんの答え。
セーラー服には、少ないながらもポケットがついている。何処にもポケットがない修道服に比べれば雲泥の差だが、ほとんど何も入らないのでポシェットがほしいのだろう。
「俺の普段着はメイド服だから、たくさんポケットがあるからな。その時々に合わせて、適当なポケットを『収納魔法の代用品』にするつもりだ。サブについては2人と同様に腕輪にしておくつもりだ。」
これは、アスカ君の答え。
実は、ポケットの数だけ言えば、一番多いメイド服。さらに、実用的なので、わざわざ収納小物を買う必要はないのがアスカ君。もっとも、前衛職なアスカ君は、ざまな小物は(武器として代用できそうなモノはともかく)極力避けたいらしい。
翌日。
朝食をいただいた後、僕たちは早速買い物に出かける。
まず向かったのは、ギルドの正面に建つ武器屋さん。ここには防具類も売っているが、ぶっちゃけ今僕たちが着こんでいる服は、そこらに置いてある全身鎧よりも防御力が上だったりする。なので、わざわざ動きがこれ以上に阻害されるモノを着る事はない。
「ここでは、アスカ君が使う武器だけでいいよね。どんなモノにする?」
3人でワイワイやりながら、武器を物色していく。
「そうだね。俺の体型が幼女様だから、ありえないモノがいいよね。たとえば、・・・・・、あれとか?」
そう言いながら店の壁に展示されているモノを指さすアスカ君。
「確かに、幼女にあれなんかはテンプレだね。あとは、普通の武器もついでに買っておきなさい。」
「そうだね。あれだと取り回しが難しそうだからね。普通の剣も購入しておくよ。」
僕の言葉に同意しつつアスカ君は、店員さんになにやら言伝をして武器の購入を進めていく。その間、僕とトモエちゃんも、何か使えそうな武器がないか物色をする。2人ともあまり筋力がないので、重量のある武器は使用できない。
で、僕とトモエちゃんが選んだのは、投げナイフ100本と、ショートソードだ。ちなみに、アスカ君の武器は、投げナイフにショートソード、巨大重量物の鈍器が4種類だ。棍棒、戦棍、戦鎚、戦斧の巨大バージョンである。もちろん、普通の大きさ(普通といっても、アスカ君の身長は軽く超えているが)の鈍器4種類も購入しているみたいである。
武器屋で買い物を終えた僕たちは、その足で魔道具屋さんに入っていく。
まずは、どんな魔道具があるのかの物色をする。
基本的に魔道具は高価なモノが多いため、店頭に陳列してあるのはサンプル品となっている。つまり、本物に似せたニセモノなのだ。
まず真っ先に見に行ったモノは魔法の袋の類だ。
魔法の袋が売っているコーナーには、いろいろな大きさの魔法の袋が載っているカタログが置かれていた。その傍らには注文票が置いてある事から、どうも魔法の袋に関しては取り寄せでの販売らしい。カタログには、袋の大きさ(形状)・性能(容量・時間停止の有無・重量の軽減率等)・値段が書かれている。基本的には、袋の大きさ(形状)が小さいほど高価になり、大きくなるほど安くなるみたいだ。そこに性能を加味して、同じ大きさのモノでも値段が上下する仕組みになっているらしい。
一番高価な魔法の袋は、『金属腕輪型/容量無制限(時間停止・重量軽減100%)/収納物の一覧表示機能付/所有者設定付/在庫なし/注文生産なし/入荷未定/予約注文なし/価格金貨1,000枚以上』というのがあった。つまり、僕たち3人が、収納魔法の代用品にする予定の腕輪だ。これを見た瞬間、メインではなくサブにしておいて正解だなと、つくづく感じたものだ。
で、僕たちが狙っていたポシェット型は、だいたい金貨50~100枚程度で売られていた。リュックサック型は、少しかさばるという事で、金貨10~50枚程度で売られていた。
ほかの魔道具もウインドウショッピングしながら確認していき、雑貨屋さんに向かう僕たち。基本的に魔道具は高価なモノなため、ウインドウショッピングをしている人たちが、店にいた客の9割くらいいた。
雑貨屋さんでは、生活雑貨を中心にいろいろと細かいモノを買い揃えていく。もちろん、収納魔法の代用品にするポシェットも購入しておく。自前の空間魔法があるため、高価な魔道具を購入しなくてもいいのだ。
最後に向かったのは、この村にある位置固定型転移門だ。




