【03-05】集落を目指ざして特訓だ!!
「じゃあ、今後の予定を話すね。」
勇者君たちの話で盛り上がった後、脱線しまくった話を元に戻した僕。
「どうぞ。イズモ君。」
トモエちゃんたちは、背筋を伸ばして僕の話を聞く態勢になる。少し緊張しているのか、動きが固く感じる。
「そこまで硬くならなくてもいいよ。
話というのは、これから先に行動方針?みたいなものだからね。
まず初めに、転移魔法で最寄りの村近くまで飛んでいってもいいんだけど、ここはレベリングのために歩いて向かおうと思っている。」
「歩いて?一番近い集落までどのくらいあるの?」
トモエちゃんが、なにやらげんなりしながら聞いてくる。体力バカのアスカ君は置いておいて、僕とトモエちゃんは、あまり体力がない事が共通項でもある。
「まじめに歩いていかなくても、別にいいよ。これは訓練を兼ねているからね。
体力バカのアスカ君はともかく、僕とトモエちゃんは、魔法で地面すれすれを飛んでいけばいいんだよ。この広場まで来るときも、そうしていたでしょ?」
「そうだったね。魔法を使えばどうにでもなるね!!」
「そういう事。ちなみに、今僕たちがいる場所から一番近い集落は、あの南に聳える山脈へ向かって進む事約100㎞先にある『ホレストン村』という集落だね。山脈を大きく迂回しているルートと、突っ切るルートが存在しているからね。どちらを通るにしても、だいたい5~10日くらいはみておいたほうがいいかな?」
僕は、南側の木々の間から見えている山並みを指さす。
「あの山脈の向こう側に集落はあるんだ。てことは、この街道は、その集落まで続いているのかい?」
「実際は、その先にある大きな町が起点だけどね。
とりあえずは、どちらを通るかはまだ未定だけど、街道を行きながら魔物と闘ってもらおうと思っているわけ。」
「それでいいよ。頑張って鍛えないとね。
ところで、私たちの身分証はどうするの?イズモちゃんは持っているけど、私たちは持っていないよね。」
トモエちゃんが、今後の生活上絶対必要となるだろうモノについて聞いてくる。
「職業刻印板については、転職神殿に行かないと作れないから今は置いておこう。最初の村にあるとは限らないからね。
で、職業刻印板に代わる身分証なんだけど。これについては、冒険者ギルドがあれば、すぐに発行できると思うよ。冒険者ギルド自体は、すべての集落に存在しているらしいからね。」
「じゃあ、私たちのこの世界での主な収入源は、冒険者ギルドでの報酬という事になるのかな?」
「しばらくは、そうなるね。
あと、お金についてどうする?
一応僕は、この世界の金をたくさん持っているから、2人に少しくらいならあげても問題ないけど。
あげたお金は、別に返さなくてもいいよ。」
何をするにも、必ず必要になってくるお金。
そのお金を稼ぐ手段を一応作ったが、今はまだ無一文なトモエちゃんとアスカ君。そういった現状から、僕は2人にこう提案する。
その答えにトモエちゃんは、こう答えた。
「・・・・そうだね。
一応は冒険者として魔物や薬草?などを狩って生活する予定だけど、やっぱり現地通貨は必要だからね。アスカ君、ここはイズモちゃんに甘えてしまおう。」
「応、そうだな。現地通貨は必要だ。イズモちゃん、お願いできるか?」
僕は、満面の笑みでO.k.を出し、賤貨・小銅貨・銅貨・小銀貨・銀貨・金貨をそれぞれ3枚ずつ手渡した。ちなみに、それぞれの硬貨の価値もついでに教えておく。
3枚ずつなのは、僕にも細かいお金が必要だろうと踏んでいるからだ。
3人とも、道中に採集していく予定の素材たちを売れば、それなりのお金になると思っているが。
約100㎞先にある『ホレストン村』までの道中は、絶対に売り物となる薬草採取をしながら街道を歩いていく。2人には、僕が鑑定した結果を伝えながら同じモノを採集してもらう。あまり街道からは離れていないが、それでも長い道中なので結構な量を採取する事ができる。3人ともほぼ無人量にモノを持ち運ぶ事ができるので、量を気にせず採集していくことが可能だ。
もちろん、道中に出逢った魔物は、僕たちの特訓の糧として殲滅していく。
実は、魔物の殲滅作業では、3人ともに危惧していた事が現実に起こってしまった。
危惧していた事。
それは、過剰なほどの殲滅力で、素材ところか、魔物を跡形もなく消し去っていってしまった事だ。
アスカ君の場合は、パンチや蹴りなどでで、魔物を肉片に変えてしまう。
それはもう凄まじく、ゴブリン程度ならばワンパン1発で肉片すら残らない。上位種になってくれば、さすがにそうはいかないが、それでも、素材採取をしようとする気にはなれないほどに、バラバラになってしまう。
僕やトモエちゃんはもっと最悪である。
魔法1発で蒸発させてしまうのだから。それも、周りを含めて・・・・。
「・・・・これはいけないね。今前はどうでもよかったけれど、これから先素材採取の事を考えると、もっと手加減を覚えないとね。あと、そろそろ食料が尽きかけているから、そっち方面でも手加減しないといけない。」
3人とも手加減を覚えないと、冒険者としてやっていけないと思う。殲滅重視ならば別にいいがね。
それと、食糧問題は切実である。神様から貰った食料品は、調味料以外は使えば量が減っていくのだ。調味料や香辛料は、使っても量は減らないのでありがたいが、ほかのモノは違うのだ。まだまだ、人里までの道中は長いので、現地調達をしていかないと、遅かれ早かれ野垂れ死にコースに突入するかもしれないのだ。
「・・・・・そうだよね。手加減を覚えないと”バキッ"・・・・俺の方は特に切実な問題になるな。」
アスカ君は、手近にあった木の幹を握りながらそう答える。本人は軽く握ったつもりが、細い幹ならば簡単にへし折ってしまうほど、怪力を身につけてしまっている。これでは、街中での生活に、支障が出まくりである。
こうして始まった手加減の訓練。
道中の魔物たちは、手加減の練習相手にはちょうどいい。なんせ、街道沿いに出没する魔物たちは、僕たちよりもはるかに弱いのだ。
街道から離れれば、それなりの強さになっていくみたいだが、今はまだその段階ではない。
手加減の結果、僕たちは何とか手加減して倒せれるようになっていた。スライム(弱バージョン)程度あらば、アスカ君の尻尾だけで倒す事ができる。ゴブリンならば、デコピン1発である。
ちなみにこの世界のスライムは、最弱種でもあり最強種でもある。それは、スライムの核となった物質によって、その強さが左右されてるからだ。
そこらへんに落ちている小石から、何かの骨の欠片まで、核となる物質は千差万別。スライムの形状自体は皆同じなのだが、その核に応じて強さも能力も変わってくる。そのため、退治してみないと解らないのが難点でもある。
いったい、こんな生態?であるスライムは、冒険者ギルドでの討伐ランクはどのくらいなんだろうね?
そんな感じで、街道を突き進む事数日。
僕たちの目の前には、街道を塞ぐ形で丸太を組んだだけの楼門が聳えている。門の両端からは、村を囲むように土塁と水濠が造られており、土塁の上部には丸太を突き立てたような感じの塀が造られていた。
僕たちは、水濠に渡されている橋を渡り門の前まで進んでいく。
「ようこそホレストン村へ。身分証の提示と、通行税として銀貨1枚をお願いします。」
門番の男の指示に従い、3人が銀貨1枚(僕だけは、身分証である職業刻印板とともに)を取り出しながら、代表で僕がこう答える。
「この2人は、道中で僕が保護しまして。保護した時には、手荷物をすべて盗賊に取られてしまったらしく。目的は知りませんが、その際身分証の類はすべて盗賊が処分したらしくて、アジトの中を探しても見つかりませんでした。
盗賊については、僕たちがすでに殲滅済みです。その際アジトにあったお宝は、盗賊団が所持していた魔法の袋に入れて3人で運んでいます。首を入れていた袋は、使いたくないので差し上げます。」
僕は、背に背負っている魔法の袋から、道中に本当に襲撃をかまして殲滅した盗賊団の首をすべて地面に転がす。その際ついでに、首を入れていた魔法の袋を門番に渡した。
盗賊団がため込んでいたお宝については、所有権がどうなっているのかは知らないが、生首を入れた袋は僕のモノだといわれても使いたくないのが本音である。
魔法の袋は、たくさん盗賊団のアジトにあったので、すべてを使って盗賊団のアジト内を一掃してきている。魔法の袋の容量は、いつ当たり見た目の10~20倍程度だった。
案外少ないとみるべきか、多いとみるべきか。
中に入れたモノは、時間が止まっているらしく、盗賊さんたちの首は、まだ殺した直後のように瑞々しい?
のだ。ちなみに重量については、1割以下に軽減されているようで、多少の重さはあるがあまり重く感じていない。
その中の1つに、殲滅した盗賊団の首だけを入れてきていたのだ。
ちなみに全員の背中には、リュックタイプの魔法の袋が背負われている。中には、盗賊団のアジトにあったお宝が仕舞われている。
アイテムボックス持ち(僕はストレージだが)である3人だが、(時空間魔法使い自体が少ないため)無用なトラブルを避ける目的で、それぞれ小物入れから銀貨を出している。
僕は、ポケット1つない修道服に唯一ある腰にぶら下げた小物入れから。トモエちゃんとアスカ君は、その殲滅した盗賊団のアジトで見つけ、腰にぶら下げた比較的きれいな小物入れから取り出している。
「盗賊団に捕まっていたのか。それは災難だったな。身分証については、冒険者になれば貰えるから、それを使ってっくれればいい。職業刻印板については、この村には転職神殿がないから発行できない。この村の先にある『ペイロード』という町にいけば転職神殿があるから、そこで発行してもらえ。
さて、盗賊たちだが、たぶん懸賞金がかけられているはずだから、冒険者ギルドでついでに受け取ってくれ。俺も一緒についていく。おい、ジョン!!少し門番を代わってくれ。」
「分かりやした。サムスンの兄貴。」
「では、俺についてきてくれ。」
サムスンと呼ばれた門番は、地面に転がした首を再び袋の中に入れて、僕たちを先導してくれた。




