夏まっしぐら。
かるーい短編です。読んだ後疲れない位に意味が詰まってないです。
「あっちー」
世間一般では夏と呼ばれるこの時期。うだる様な暑さが僕に張り付き、元気とかやる気とかを奪っていく。折角の夏休みなんだから、クーラーの効いてる部屋でノンビリするだけじゃ寂しいし、散歩でもしようかなって思ったが、天気予報じゃ毎日のように最高気温を更新し続けている中を歩くのはきつかった。
家を出るまでは、友人とキャッチボールでもしようかと思って、グローブを持って家を出たが、暑さのあまり玄関にグローブを投げ込み、取りあえずコンビニその後はまた考えようと。暑い夏をどうにか家の外の涼しい場所で過ごそうと模索してる僕はきっとダメの部類だなって思う。夏限定ダメ男。通称ナメ男。と言っても別に夏は嫌いじゃないけど。
「うぃーん、いらっしゃいませー。おー久しぶりですね」
コンビニに入ると涼しい風が僕を迎えてくれた。ついでに自動ドアが開く時、ご丁寧にドアが開く音をやる気なく発している友人も。
「うっす。お勤めご苦労さん。ここ半月元気だったか?」
「いやぁ暑いってホントに何もかもが面倒になりますよね。ホント、なんど夏風邪を引いたことにしてバイトをサボろうかと思ってた事か解りませんよ。」
そう言って友達は暇そうに手をプラプラとした。やる気ねーなこいつ。まぁ自給安いらしいからいっか。
「今日の予定は?」
「後15分したらバイト上がりで、その後は家でのんびりする予定が入ってます」
「のんびりするのはキャンセルで。遊び行こうぜ。」
友人は「いいですね」と爽やかに微笑み、裏に向かって「テンチョー。暇だから上がっちゃいまーす!」と宣言した後に、着替えてくるから立ち読みでもしててくれと言って消えて行った。立ち読みを進める店員もどうかと思うが、コイツを採用した店長が一番の問題だろう。多分。ていうか暇だから上がるって斬新だなおい。
立ち読みをしててくれと言った割に、友人の登場は速かった。
「いきましょうよ」
「おう」
取りあえずコンビニを出た。あっつい。
「何処に僕をデートに誘ってくれたんですか?期待しちゃうなあ」
「え、なんも決めてないぞ。デートって言うな」
「はあ?なんも決めて無いくせによく僕をバイト早上がりさせましたね。なに考えてるんですかあんた。デートですよ」
「いや、お前が勝手に早上がりしたんだろう。デートなの?」
そうでしたと笑って、おそらく店の冷蔵庫からパクって来たであろうジュースを俺に渡してきた。
「僕のおごりですぜ」
「もうお前ホントダメだな。いただきます。というかパクッたの大丈夫なのか?」
「こないだバレました、店長が笑ってましたよ。ガハハって。でも今回のは店長が、僕とあなたにってくれました」
店長すげーいい人だな。こんどお礼を言おう。
「て言うかお前の奢りじゃないじゃん」
「何処行きますか?あなたが何もなく夏の外に出るわきゃ無いっすよね」
きいてねぇし。良いけど別に。
「タバちゃんとキャッチボールしようと思って家を出た。で、現在」
「その割には手ぶらですね」
「外暑いから。玄関にグローブ置いてきた」
「あはは、あなたらしい。そんでタバちゃんは?」
「どうせあいつも家に引きこもってるだろうからお迎えに行こうかと。でももういいや」
地味に遠いし。
「そんな事より高校生御用達のファミレスドリンクバーで暇つぶしでもしましょうか」
特にやる事も無かったし、俺たちはファミレスに向かうことにした。移動中にジュースが温くなってしまった。せっかく貰ったのに勿体ないな。
「クソっ! 温くてまずくなりやがったぜ。」
コイツ店長に一回謝れよ。
「いやー、青春ですね。うら若き高校生がドリンクバーで友情を確かめ合う。なんて青春だ。」
398円のドリンクバーで確かめ合える友情ってどうなんだろうな。まぁお高い友情なんて興味ないけど。
「しかしうら若きのうらってなんすかね」
「しらね。麗しいとかじゃね」
お互い普通のコーラで決めていた。高校生特有のドリンクバーで色々混ぜまくった末にクソまずい物が出来て、まずい癖になぜかテンションが上がってしまう現象を起こすには、二人では寂しすぎたし。
「でも大概の高校生なんて麗しく無いじゃないですか。だから違いますよそれ」
「お前主観で言葉は作られてないんだぞー。じゃあなに?」
「単純に裏表の裏じゃないすか?裏若いみたいな。」
案外ベッタベタのが好みだなこいつ。
「じゃあ表若いは?」
「見た目は小学生、中身は老人。おお、日本語の嫌らしさ全開ですね。」
コイツの理論だと裏若いは、健康体の老人って事なのか?あ、でも今の俺の生活って健康体の老人みたいな生活かも。
「……言い得て妙だ」
でしょーと微笑む友人。こいつ本当に何も考えてないんだなぁ…。少しうらやましい。将来の俺の子供がここまで全力な子供になったら楽しいんだろうな。ムカつくだろうけど。
「つっても子供産んでくれる相手いねーよなぁ…」
頭を抱えてしまう。中学の頃は『高校生になったら女の子とアバンギャルドなアバンチュールだひゃっはー!』って思っていたのだが、実際そんなことは無い。今思えば、我ながらアホな中学生だったと思う。でも皆も少しくらいは期待してたと思う。
「すごい話の飛び方しましたね。僕はついていけません!」
わーいと馬鹿にしたように両手を上げる友人。…こいつに馬鹿にされるとスゲー腹立つ。ていうか力抜ける。
「ほら、やっぱ彼女ほしいじゃん。外は暑いのに涼しい部屋で熱い夏を過ごす妄想しちゃうじゃん。期待しちゃうじゃん」
「もう部屋でセックスする事しか考えてない時点で終わってますよ。オワコンって言うんでしたっけ?オワコンっすよ」
「いや、浴衣で青姦とかもちゃんと考えてる」
「結局セックスかよ。最低じゃないっすか」
まぁ男子高校生なんて所詮こんなもんだと思うけど。
「やっぱするならちゃんと手順というかその…あ、愛されてると思い込まされたいじゃないですか」
こういう言い方ができるこいつは
「あなたが良いんでしたら僕……いいですよ……」
「いやお前男だし」
無駄に行間を開けるんじゃない。無駄な行間を俺に読ませるなよ。
「ほら、一回も僕が男子高校生とは言ってなかったから、それも良いかなって」
よかねぇよ。て言うかお前は良いのかそんなんで性別変わっちゃって
「なんだろうな、お前のセックスとかレイプとか言っちゃうのに無駄にロマンティストな感じ」
「ギャップ萌えでしょ」
確かにギャップは武器になるってファッション雑誌にも載ってたな。あれってホントに当たるのかな?って言うかレイプからのロマンティストって良いギャップなの?
「男同士は下ネタで仲良くなるって僕のお父さんからの教えでした」
「すげー父親だな」
でも当たってるかも。こいつともそうだったし。
「下ネタなんて女の子も言うじゃないですか。クッソつまんないのを」
「そうなの?」
「僕ん所の彼女が良く言いますもん」
彼女からの下ネタってスゲー幸せな言葉だなおい。青春の香りがするぜファックだぜ。
「やっぱ女の子も言うもんなの?」
こいつは人当たりの良さか知らないけど彼女持ちなのだ。最近付き合い始めたらしい。幸せなこって…けっ。
「言いますよ。情事の話なんかもの凄い詳しく。そりゃあもう彼氏の喘ぎかたとか服の脱がし方とか、有った事を何の面白みもなくブチ撒いて楽しい話とか思ってます。」
「えぐいな」
男同士だと面白オブラートに包んで話したりするけど。女の子の下ネタってそうなんだ。
「下ネタのネタの部分に男女間の隔たりがある感じですね。というか女の子って話すことめっちゃ詰まんないじゃないですか。彼女と話してると良く思います。愛がなけりゃやってられねぇぜ! ってな具合で」
「もうお前ほんとこんちくしょー」
なんでこんな奴に彼女いるんだろ…。悔しいです!
「女子のために笑いのレベルを一個下げると、あなたは面白い人認定されますよ。多分。女の子は話し方が上手いだけですから」
「……ミキちゃんは面白いもん」
ミキちゃん。俺の思い人で彼氏募集中らしい。後優しくて可愛くておもしろい。すっげー良い。すっげー惚れてる。
「あの子は優しく話しますからね。面白い話を笑ってあげなきゃって無意識にさせますし。あれは良い女だ…」
やっぱこいつから見てもいい女なんだ。ミキちゃんさすが。
「良い女じゃ無い子なんていないですよ。女の子は神秘です。主導権なんて絶対女の子に握られちゃいますし。付き合うとわかりますけど、男は劣等種だと思い知らされますよ」
「結局どっちよ…」
「僕は女の子が大好きです」
……あっそ。恵まれた奴は言う事が違いますね。神からのギフト頂いてますもんね。
「まぁ落ち込まないで下さいよ。」
そう言って携帯をとりだして、メールを見してくれた。
「あなたを元気づけるにゃこれがピッタリ」
「……マジ?」
そこにはこいつの彼女からのメールが映し出されていて、内容は概ね『ミキちゃんが俺の事良いよね』って言ってたみたいな。
「まじ?」
「まじです」
「ひゃっはーー!!」
やっべ。まじかよ! 来たぜアバンギャルド!来たぜアバンチュール!
「僕の彼女が結構頑張ってくれましたよ。キューピットって面白そうみたいな事言って」
「超感謝!! 俺のためにじゃない所とかもどうでも良いくらい感謝感激っす!!」
え、なに、こいつらカップル。もの凄い綺麗な天使に思えてきた!!
「そんな訳で…」
そういってこいつはレシートをヒラヒラさせる。
「ここは俺の奢りだ! 任しときな!」
安い安い、そんな物で良いなら後2回位なら全然いいんだぜ。なんなら高校生特有のドリンクバーで色々混ぜまくった末にクソまずい物が出来て、まずい癖になぜかテンションが上がってしまう現象を俺一人で起こしても良かった。
そんなこんなで喜んでいたら、彼女から呼び出しが掛ったらしく、急いで行かなくちゃいけないとのこと。ほんとヨロシク言っといてくれ。
会計をすまして、ドアのガラス越しに見たクソかったるかった夏が清々しい素晴らしい夏になった話。
「といってもあなたはミキちゃんのアド知らないから夏終わりまで会えませんけどね」
清々しい素晴らしい夏が早く過ぎ去ってくれって話。
前回ははがないの短編SSを書かせて頂いたのですが、短編にならなかったので短編を書きました。
読んで頂きありがとうございました。