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『悪役令嬢ですが、周囲が全員「狂人」しかいないので、婚約破棄イベントが世界崩壊の引き金になりました』  作者: 限界まで足掻いた人生
『不法投棄(アウトサイダー)編』

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第96話:銀色の心臓、あるいはローゼンバーグの遺言

巨神の胸の奥で、銀色の心臓が不協和音を奏でるたびに、地下室の壁にこびりついた古い魔術回路が、赤黒い光を放って脈動する。


「アレクセイ、あの巨神の表面を覆っている『執着のサビ』を剥ぎ取って。心臓への道を作らなければ、分別のしようがないわ」


「了解しました、エリザベート様! この頑固な歴史の汚れ、僕の黄金の情熱ポリッシュで、一気に昇華させて差し上げましょう!!」


アレクセイが黄金のオーラを巨大な刷毛のように広げ、巨神の足元から一気に駆け上がる。彼の背後に浮かぶ黄金の観音像は、今や数千の手で聖なる磨き粉を振りまき、巨神の体を構成する廃棄物から、数十年分の怨念を物理的な熱量で焼き払っていく。


深淵の受容:不完全な愛の欠片

剥き出しになった銀色の心臓へ向けて、私は自らの影を解き放つ。


見て。 私の影が、激しく抵抗する心臓を漆黒の帳で包み込み、その奥底に封印されていた始祖の記憶を強制的に読み解いていく。 これは、ただ過去を暴くための闇ではない。 一族が「完璧」という病に侵され、切り捨ててしまった人間らしい脆さを、私の闇で救済するための儀式だ。


私の銀髪は地下の闇を吸い込み、月光さえ届かない深淵の色へと染まっていく。瞳には、かつてこの心臓を造り出した魔術師が、完成の直前で「神には愛など不要だ」と叫び、これを床へ投げ捨てた冬の日の残像が映っていた。


「……愚かね。愛されることを望んだだけの機械を、ゴミとして処理するなんて」


私の放つ漆黒の波動が、銀色の心臓を優しく締め付ける。それは拒絶ではなく、肯定。神になれなかったその不完全さを、私はこの世界の誰よりも高く、最高の不純物として評価してあげる。


黄金の研磨:廃棄遺産の再定義

「エリザベート様、見てください! 僕が磨き上げるたびに、ガラクタたちが本来の役割を思い出していくようです!!」


アレクセイが歓喜の声を上げる。 彼がモップを振るうたびに、巨神の腕だった折れた聖剣は曇りなき誇りを取り戻し、足だった壊れた楽器は天上の旋律を奏で始める。


彼は、破壊すべき敵である巨神を、巨大なメンテナンス対象として扱い、その一つ一つのパーツを黄金の輝きで塗り替えていく。 絶望を消し去るのではない。絶望を鏡のように磨き上げ、そこに自分たちの姿を映し出す。 それは、英雄として悪を滅ぼすよりも、世界のシミを愛でることに神性を見出した、狂おしいまでの光落ちの極致だ。


「これです! この輝きこそが、学園の地下に眠るべきではない黄金の真実だぁぁ!!」


田中の消滅と、開かれる禁忌

「……ふん。ようやく、自分の手の汚れに気づいたようだな」


巨神の体が光の塵となって崩壊する中、半透明の田中老人が満足げに頷いた。彼の姿は、浄化された銀色の心臓から放たれる輝きに溶け、霧のように薄くなっていく。


「田中さん、どこへ行くの? まだ教えてもらっていないことがたくさんあるわ」


「……私は、この心臓の『本来の持ち主』を案内しに行く。……だが安心しろ。お前たちが手に入れたその心臓は、学園の最深部、真の管理室を開くための鍵だ。……そこには、お前たちの家系が最も恐れた、最大のゴミが眠っている」


老人が最後に箒を一振りすると、地下室の奥の壁が崩れ、そこには学園の設立当初から隠され続けてきた、不気味なほど清潔な黄金の保管庫の扉が姿を現した。


生存者バイアス 私が今、こうして始祖の遺産を手中に収めていられるのは、たまたま私が、この世界の「捨てられたもの」にしか、心からの敬意を払えなかったからだ。

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