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『悪役令嬢ですが、周囲が全員「狂人」しかいないので、婚約破棄イベントが世界崩壊の引き金になりました』  作者: 限界まで足掻いた人生
『不法投棄(アウトサイダー)編』

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第90話:世界の倒産、あるいは田中さんの再就職

空に浮かんでいた請求書が、突如として真っ黒な「破産宣告書」へと塗り替えられた。


大天の最終宣告。採算が合わないこの世界は、これより管財人の手によって解体される。地平線の彼方から、巨大なシュレッダーのような音を立てて、現実が細切れの紙屑となり、虚無へと吸い込まれていく。山も、川も、人々の明日さえも、ただの「不良資産」として整理されていくのだ。


「……終わりですね。大天の管財人が来れば、存在そのものがシュレッダーにかけられる。……私たちにはもう、立ち退く場所すら残っていません」


サリエルが、もはや数字さえ映らなくなったファイルを手放し、絶望に項垂れる。


漆黒の債権:絶望の譲渡

私は、足元から消えゆく現実を、自らの影で強引に**「回収」**していく。


見て。 私の影が、解体されゆく世界の破片を一つ残らず飲み込み、私の胎内へと匿っていく。 これは、光から逃げるための闇ではない。 世界という名の会社が倒産するなら、その全ての負債を私が買い取り、**「夜という名の新会社」**を設立するための、究極の闇落ちだ。


私の銀髪は宇宙の無を凝縮した漆黒のドレスとなり、背後には倒産した世界の全責任をその細い肩で背負う深淵の守護聖母が降臨する。 瞳には、神々が「無価値」と断じたガラクタの山に、永遠の価値を刻み込む絶対的な闇が宿っていた。


「……勝手に解体しないで。この世界の不渡り(キズ)は、すべて私が私の愛で補填してあげるわ」


私の放つ漆黒のエネルギーが、世界のシュレッダーを内側から腐食させ、解体されゆく風景を「影の記録」として現実に繋ぎ止める。


黄金の研磨:破産の磨き上げ

「エリザベート! この倒産の危機、最高のビジネスチャンスじゃないか! 僕の黄金の奉仕で、このガラクタの世界を世界一輝く優良企業に変えてみせるよ!!」


アレクセイが、黄金のオーラを全身から放ち、解体されゆく世界の境界線で雑巾を振り回す。 彼の背後に浮かぶ黄金の観音像は、今や数千の手で**「黄金のペンキ」と「研磨剤」**を掲げ、バラバラになった現実の断片を、凄まじい速度で一つに繋ぎ合わせ、磨き上げていく。


彼は、自らの光を**「存在の接着剤」に変え、価値を失った風景を、物理的な熱量として再構築していく。 捨てられることを拒み、破産さえも「黄金の再出発」**へと転じる。 それは、安定した成功を享受するよりも、崩壊の淵で無償の修復を続けることに至高の価値を見出した、狂おしいまでの光落ちの極致だ。


「見てくれ! 僕が磨くたびに、倒産したはずの世界が黄金の輝きを放って再起動していくぞぉぉ!!」


生存者の雇用

私は、事務所のソファでようやく目を覚ました田中老人の背中を見据える。


生存者バイアス 私が今、こうして倒産した世界の瓦礫の上で立ち続けていられるのは、たまたま私が、**「無価値」**の中にこそ神を殺す力が宿っていると確信してしまったからだ。


田中老人は大きく欠伸をすると、手近にあった竹箒を手に取り、空を舞う「破産宣告書」を無造作に一掃きした。


「……やれやれ。有給中に、会社が潰れるとはな。……仕方ない。お嬢さん。今日からここは、私の個人事務所だ。お前たちを、一から雇い直してやる」


老人の放った最後の一掃きが、世界の解体を停止させ、大天の管財人たちを「不法侵入者」として虚空へと掃き出した。

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